企業人政治フォーラム速報 No.22

1997年9月10日発行

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日本再構築宣言について/
野田毅新進党政策審議会長−政経懇談会

9月3日の政経懇談会で、新進党の野田毅政策審議会長は、同党が党の基本理念と中長期的な基本政策を集大成した「日本再構築宣言」について説明した。

■新進党をなぜつくったのか。
新進党を結党して3年に満たないが、未だ日本の政治を引っ張っていくことができない状況を不甲斐なく思うと同時に、反省している。
昨今、保保か反自民かが政界の対抗軸であるかのような報道が氾濫しているが、そもそも新進党を作った最大の目的は、自民党の補完のためでも、自民党に反対するためでもない。保守・革新に代わる冷戦構造崩壊後の対立軸は、改革派か守旧派かということだった。そして、この日本を何とか再構築しなくてはいけないという改革派が結集して作ったのが新進党であった。

■今「日本再構築宣言」をまとめた理由
昨年の総選挙後、橋本総理が自ら改革の旗手として6大改革を打ち出し、国民の目から見ると対立軸がますますわからなくなった。橋本総理は改革に全力をあげているようだが、世論調査によると、国民は日本が必ずしも良い方向に向かっているとは思っておらず、むしろ悪い方向に向かっているとの答えの方が多い。
そこで、日本をどうやって再構築するかという問題意識から、単なる数合わせではなく、政策が結集軸になっていくような政治の構図を作り出していくために、遅ればせながら、今回、「日本再構築宣言」という形で基本政策をまとめた。

■再構築の必要性
日本の再構築の必要性は大別すると、次の3つになる。1点目は、明治以後の日本の政治、経済、社会におけるキャッチアップシステムが制度疲労を起こしているということ、2点目は、冷戦構造の崩壊により安全保障や市場経済などにおける国際ルールの重要性が高まり、いかに日本をそれにあわせていくかということ、3点目は、超少子高齢化社会における経済政策あるいは社会保障政策をどうするかということである。

■新しい社会のキーワードはフリー、フェア、オープン
我々が目指す新しい社会をキーワードでいうとフリー、フェア、オープンということで、日本的発想でいうなら、正々堂々、公明正大ということだ。

■介入の度合いが政府の大小の基準
政府は民間領域への介入を最小限に、また、中央政府は地方政府への関与を最小限にすべきだ。よく大きな政府か、小さな政府かが問題になるが、大きいか小さいかの基準は、財政の規模や公務員の数ではなく、むしろ介入度合いの大小にすべきだ。そういう意味で、現在、橋本総理が進めている行革は順序が逆だ。省庁の看板の数を減らすことが目的ではなく、本来、仕事減らし、権限減らし、人減らしという順序でなくてはならない。権限が減れば、今の陳情政治はなくなるし、いわゆる癒着もなくなる。

■財政構造改革
政府の財政構造改革における公共事業削減のやり方はナンセンスだ。今のやり方は、事業の先延ばしにより予算規模を削っているに過ぎず、少しも構造改革に踏み込んでいない。公共事業の改革は、入札方法を改善(指名入札制や最低入札価格制を廃止し、競争入札を導入)することと現在国で行っている5ヶ年計画を地方自らが作成すること、個別の補助金を廃止し、包括的な交付金にすることなどだ。これにより、民間並みのコストを実現でき、官官接待をなくすこともできる。

■経済構造改革
経済構造改革は、高齢化社会との関係が大事な視点だ。民間経済が活力を失ったら、社会保障はおろか、雇用も経済も立ち行かない。民間活力を中長期的に維持していくためには、直接負担率(直接税と社会保険料)の軽減がポイントとなる。直接負担を軽減するための財源は消費税に求めるべきで、消費税は基礎年金や高齢者医療などの高齢化に伴う費用のための特定財源としてよい。その場合、高齢化のピークとなる2025年で消費税は10〜12%となる。

■地方分権
地方分権は、市町村の合併を促進し、200から300の基礎自治体として強化し、そこにいろいろな権限を移行していく。そして、ゆくゆくは現在の国、都道府県、市町村という3層構造を国、基礎自治体の2層構造にするのが管理システムとして効率的だ。

■政治改革
政治改革は、選挙制度改革で終わったわけではない。比例代表制度が衆参両議院で導入されていることや、政党助成法により政党に税金が交付されることを考えると、政党間を渡り歩くことなど政党の位置付けについてドイツのような政党法をつくり、明確にする必要がある。

■自民党には是々非々で対応
(経団連側出席者からの「今後の政局において、自民党には是々非々で対応し、政策の実現を図るのか、それとも野党の立場に徹するのか」との質問に対し、)日本再構築宣言の内容に沿う政策であれば、自民党にも賛成していく。このような基準なしにやると、自民党に擦り寄ったとか、逆に何でも反対だとかいわれる。我々はこう考えるというものをあらかじめ明らかにしておくことが重要であり、それに沿うものに賛成するのは当然だ。


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