企業人政治フォーラム速報 No.25

1997年11月21日発行

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山中貞則衆議院議員講演会

11月5日、自民党顧問、同党税制調査会最高顧問などを務める山中貞則衆議院議員が「私の政治信条とこれからの政治のあり方」と題して、講演を行った。

■行政に大胆なメスを
今の行政改革の議論で、省庁の数は減らすが、大臣の数を減らさないというのはおかしな話だ。省庁を減らすなら、大臣も減らすべきだし、公務員の首切りはしないなどと耳触りのいいことを言っているが、公務員も思い切って減らすべきだ。例えば、全国どこへ行っても、食糧庁の食糧事務所があるが、もう米の国家統制は止め、食糧庁は廃止すべきだ。このように、行政に大胆なメスを入れなければ駄目だ。

■「自社さ」連立政権では、保守党の政治の善し悪しが判断できない悪しが判断できない
橋本さんと小沢さんは対照の極にある典型的な人たちだが、彼らが顔も見たくないという間柄だと国民は極めて不幸だ。こういうことを言うと世間は保保派だとレッテルを張るが、社民党と政権を一緒に組んでいるのがよくて、それを批判するのは保保派だというような馬鹿な分け方はない。本来、資本主義政党である自民党と社会主義経済を基本とする社民党が政権を一緒に組んだら、一体どういう政治ができるのか、誰も予想がつかない。社民党(社会党)は、村山首相のときに自衛隊は認めたが、日米安保条約はまだ公式には認めていない。ただ、驚いたことに、社民党は今年、独禁法の第9条(持株会社禁止)の削除に賛成した。
このようにやってくると、「自社さ」という異質なものが何とかやっていけるように見える。しかし、このようなやり方では、国民は、今の保守党の政治が良いのか悪いのか判断ができない。

■自分の信念で行動を
私は選挙で有権者に媚びたり、妥協したりしない。選挙に落ちたら元も子もないというのもわかるが、日本をどうするのかということが大切であり、それで当選できれば、自分の信念で、まっしぐらに行動できる。選挙でいろいろお願いして、しがらみにとらわれると、人間の粒が小さくなる。特に、小選挙区制になって、政治家の器量が小さくなっている。

■経団連の今年の税制改正の要望は合理的
経団連の税制要望は、去年の例に懲りてか、今年は、経団連自ら引当金などの見直しも溯上にのせてもいいから、法人税を下げて欲しいとのことで、去年に比べると極めて合理的だ。
国税3税は、明治以来、ずっと法人、所得、酒税の3つだが、今の酒税の国税におけるウエートはわずかなものだ。諸外国では、酒税に代わる柱は付加価値税だ。生産と所得と消費の3つの税がうまくバランスをとっていないとその国の税は長い目でみてうまくいかない。

■税制は政党も政治も変える可能性がある
私はただ一人、税による落選を経験した(党税制調査会長として消費税導入実現後の1990年総選挙で28票差で落選)が、税は政党も政治も変える恐れがある。英国でサッチャーが政権を投げ出さざるをえなかったのも、人頭税をやろうとしたからだ。みんな自分がいくら負担させられるかということから議論が始まるから、それを国民に負担してくださいと言えるだけの政治の実態が伴わないと、思わぬ反撃を受けて政変も起こるし、国そのものも危うくなる。そこをよく考えてやらないといけない。

■連立政権は解消して、責任の所在がはっきりする政治をする政治を
今の政治は責任をとらなくていい政治だ。こんな政治は早くやめて、社民党と縁を切るべきだ。連立を解消すれば、政権は不安定になるが、加勢してくれるところと個別に協議しながら自民党単独でやればいい。そうすると、衆議院は通るが、参議院でひっかかる。重大問題でひっかかったら、解散すればいい。解散してこの閉塞状態を国民の声で打破してほしい。そのくらい思い切ってやらないと、だらだらやっていたのでは政治に対してみんな懐疑心を持つ。
社民党が連立離脱をちらつかせると、自社さのグループはがたつくが、それは、国民の声ではなく、自分たちの利害だけで離合集散をしているからだ。せめて、税法ぐらいは、資本主義政党である自民党が責任を持って決め、責任の所在のはっきりする政治をやらなければならない。

■補正予算では、景気対策を考慮
(フロア−発言:景気の面で、何か先行き明るくなることを政治の面でも考える必要があるのではないか)

現在の歳入状態から見ると、政策減税の余地はまったくない。
今後、補正予算を組まなければならないが、その時には、公債を減じていく目標は目標として、さしあたり、今の景気に対して何をやったらいいかということを今議論して詰めている。財政構造改革法案と背反するのではないかといわれるかもしれないが、政治も経済も生き物であり、この点に関しては、心してその方向に沿う形で新しい政策を打ち出していく。

■税は3本柱(法人、所得、消費)の確立を
(フロア−発言:今、国民全体が非常に暗くなっている。それは、今進めている改革を乗り越えたときの将来の日本の姿が示されていないからだ。そこで、将来の日本の税制のあるべき姿と財政赤字に関する考え方をききたい)

将来像が見えないというのはその通りだ。
第1点目の将来の日本の税制について、消費税を上げるのはみんな恐くてできないが、今の5%を当分いじれないというのは間違いだ。もっと媚びない政治をするべきで、そのためには、1度か2度は政権を去る覚悟でやらなければならない。日本の税制は、法人税、所得税、消費税の3本柱を欧州や米国のようにきちんと立てなければならない。それには、消費税を上げ、法人税、所得税は上限を引き下げるべきだ。この3本柱をきちんとたてたとき初めて、財政的にも国際国家になったということができる。
第2点目の財政再建における赤字国債については、財政法の原点から議論しなくてはならない。財政法第4条には、建設工事の原資は国債を出してもいいとなっている。赤字国債については、何も決められていないので、特例法を作って、国会の承認のもとにやっている。これはいわゆる便宜手段であり、やめた方がいい。正当に起債していいものは起債し、そうでない人件費や消耗品費などは削る努力をすべきだ。私は、公務員の人員整理もすべきだと思う。それにより、日本の財政も政治も浮上してくるだろう。こんなことを言うと、一体、おまえはいつまでやるつもりなのかと言われそうだから、是非、私のやっているうちに目鼻をつけたいと思っている。


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