企業人政治フォーラム速報 No.33

1998年 3月31日発行

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柳沢伯夫自民党行政改革推進本部事務局長/
今後の行政改革の課題について

去る3月18日の政経懇談会で、柳沢伯夫自民党行政改革推進本部事務局長は、今後の行政改革の課題などについて語った。

[柳沢議員]
■金融検査と監督は分離すべき
住専問題を契機に大蔵省を中心とする金融行政システムの改革が行われ、金融監督庁も設置されることになった。しかし、私は検査と監督の間には緊張関係が必要で、むしろ検査と監督は分離すべきだと主張した。金融行政については、監督上の配慮で検査結果そのものも歪められてしまうことがあり、そういうことが問題の隠蔽だとか先送りにつながってきた。これは日本銀行の考査についても同じことが言える。
今後、金融検査については、その重要性はますます高まるのだから、金融監督庁が持つ検査部門と日銀の考査部門を一緒にし、さらに公認会計士等の外部の力も入れて、一つの客観的な組織としてエージェンシー化すべきだ。

■不良債権処理は短期決戦に出るべき
金融ビッグバンを控えての不良債権処理については、従来からソフトランディングを試みてきたが、それが成功しなかったから現在のように不良債権処理が先延ばしにされてきた。今回も、公的資金の一律投入というソフトランディングをはかっており、本来、金融ビッグバンを前にした最後の行政指導として、どことどこの銀行を合併させるというような金融界の再編あるいは体質強化のシナリオを持って、短期決戦に出るべきだ。
また、借主の救済については、ボーダーラインの債権が切り捨てられたりしないよう政府系金融機関などで手当てをすべきだ。

■構造改革政策を景気対策に
歴史上、細川内閣が初めて、規制緩和を景気対策として打ち出した。しかし、バブル崩壊後は、公共事業等の需要追加政策が中心となり、数次にわたり、60兆円から65兆円が投入され、金利政策も低金利政策をとったにもかかわらず、思ったような効果は上がってこなかった。需要追加政策ではどうも効果が上がらない体質になっているのではないかということで、行政改革をはじめとする構造改革政策が出てきた。
しかし、最近の経済対策の議論は構造改革などどこかへ吹っ飛んでしまい、もっぱら需要追加政策ばかりに議論がいっている。需要追加政策が多額の資金を投入しても、それほど効果が上がらないということはさんざん経験しているのであり、構造改革そのものが景気対策となるようにするとともに、それを国民にアピールできるよう我々の方でもプレゼンテーションしていかなくてはならない。

■中央省庁再編基本法案
中央省庁再編の基本法案には、第1に、内閣機能の強化ということを書いた。これは歴代の総理の中でも考え方に差があるところで、かつては内閣機能の強化など必要がないと言っていた総理もいた。橋本総理になり、取り巻く状況が変わってきたということもあって、内閣機能の強化となった。しかし、私は、総理大臣があまりルーティーン業務を持つのはどうかと思う。総理大臣はその時々に国が直面する最大の課題に取り組むべきだ。
第2に、本省の組織については、一昨年6月の橋本行革ビジョンの中で、初めて政策立案機能と実施機能の分離ということを書き、今回、基本法にそれを盛り込んだ。政策の立案と実施を分けるというのは、政策の方針を決めるのは政治家で、それを実施するのが役人ということだ。英国のサッチャー元首相は、政治が決めたことを実施するのはサービスであり、公的機関でなくても、民間でもできるのではないかということまで言った。そこから出てきたのがエージェンシーという発想であり、政策の立案は内局、実施のうち権力的なものは外局、管理・サービス的なものはエージェンシーにしようということになった。
第3に、内局については、今は課による所管主義になっており、どんな事象でもどこかの課で所管するようになっている。この所管主義の弊害で、必要な法律ができなかったり、逆に必要もない法律ができたりという事態がおこっている。今回はこの所管主義はやめるということを書いた。局の下の課はなくし、必要な課題ごとにプロジェクトチームをつくって対応することにした。この点は、マスコミには理解されず報道されていないが、我々はそうしたシステムの改革を目指している。
また、地方分権については、地方分権推進委員会でやっているが、いろいろないきさつでまったく形式的な権限論だけのものになってしまった。本来は、財源論がなければ意味がない。この点を基本法では少しふれていて、何とか補助金はやめるということを書いてある。
基本法の今通常国会での審議日程は非常に厳しい。これがうまくいかないと非常に苦しいことになる。個々の点は閣議決定でもいいのだが、基本法には「中央省庁等改革推進本部」という機関の設置がうたってあり、この設置法がないと霞が関の官庁に対して誠に権威のないものになってしまう。

■自民党の公約に何が書けるかが重要
現在、霞が関では、行政改革にしても地方分権にしても、既にできることはすべてやった、これ以上何ができるのかと言われている。今後、何を突破口に霞が関に戦いを挑んでいくかというと参議院選挙の自民党の公約だ。その意味で、公約に何が書けるかが今後の行政改革、規制緩和、地方分権などにとって非常に重要となってくる。

[質疑応答]
経団連側意見:
財政構造改革や金融ビッグバンなど、いろいろな施策のプラスの面が出るべきところが、時間的なズレやアジアの経済危機などの問題が重なって、すべて悪い方へ出てきたように思う。こうなると、橋本内閣としても、危機管理的対応をとっていただく必要があるのではないか。

柳沢議員:
経済情勢と財政構造改革の中で矛盾が生じているのではないかという指摘はその通りだ。本来、財政構造改革法に米国のような弾力条項を入れておくべきだった。
今後どうすればいいかといえば、私はいずれ取り上げる構造改革を前倒しでやるのが一番いいと思う。具体的には、所得税も法人税も減税すべきだ。今、消費が下がっているのは消費性向が下がっているからであり、これはマインドの問題である。構造改革が消費性向を向上させたり、企業の投資意欲を高めるような効果を持つように、我々はプレゼンテーションをして、構造改革が経済対策として機能するようにもっていきたい。


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