企業人政治フォーラム速報 No.43

1998年 9月29日発行

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今後の政治のあり方について
/武部勤自民党副幹事長
(9月3日政経懇談会)

[武部議員]

■参院選の敗因と反省
先の参議院議員選挙で自民党は大敗し、これから6年間は単独政権が事実上不可能な状況で、我々は厳しい国会運営を迫られる。
参院選の敗因はいくつか考えられるが、1つには、魅力的な候補者が擁立できなかった選挙区があり、また、候補者の調整ができず、複数区において複数人の擁立となったという側面があった。さらに、かつては、参議院議員も自分で後援会を組織していたが、衆議院に小選挙区制が導入されてから、党主導の党営選挙という流れになってきて、今では参議院議員はまったく自分の後援会組織を持っていない。これは大きな問題だ。
自民党は、かつては、日本の心、日本的良さを持つ政党として一貫したものを持っていたが、今はそれも薄れてしまい、恒久減税に関する橋本前総理の発言にも見られるように、政策にも一貫したものがなくなってしまった。
自民党では、反省・前進会議を設置して、全国各ブロックの意見を聞いている。北海道で、「子育てに追われ、年寄りを抱え、会社もいつどうなるかわからない」という意見を聞いたが、これは一番良く国民の気持ちを表していると思う。このような将来に対する不安感が増大する中で、昨年の9兆円の国民負担増などでストレスがたまり、それが爆発して、今まで黙っていた人も投票に行き、自民党への批判票を投じたのではないか。我々は、反省・前進会議を作って、不満をそらし、単なるガス抜きをするだけでは駄目で、今度は余程思い切ったことをやらなければならない。

■近未来研究会
このような思いから、我々は自民党のマグマになるべきだと考え、山崎前政調会長を中心とする近未来研究会を旗揚げした。自民党内の主導権争いだという人もいるが、各派閥で同じような動きがおこっており、これは一言で言うと、世代交代である。また、参院選の反省に立って、自民党が一貫した理念や政策を持った党だという原点に立ち返るための行動だ。
しかし、自民党が今後も三分の一政党(自民党支持は国民全体の三分の一程度)であることは変わりがないだろう。現在、国民の物の考え方は多様であり、1党で過半数を得て、強力な政治をやっていくということが本当に民意を反映していくのかという問題もある。従って、今後も連立政権を目指せば良いのではないか。現実問題としても、6年間は参議院で過半数を得るのは難しいわけだから、連立を指向していくしかない。

■日本再生ビジョン
私なりの日本再生のビジョンというものを述べると、今、日本がやらなければならないのはスクラップ・アンド・ビルドだと思う。これは、金融も、経済も、社会システム全体にも当てはまることだ。
その際に、日本のこれからの方向づけの1つは、グローバリゼーションだ。税制を含めて、国家システムをグローバルスタンダードにあわせて再構築していかなければならない。
もう1つは、分権化だ。小さな政府を指向し、官から民へ、中央から地方へ分権を進めるべきだ。最近は、NPOやNGOといった動きと連動して町内会活動も活発になってきているが、我々が目指さなければならないのは、自立した個人だ。

■中心市街地再活性化対策
私は、昨年、中心市街地再活性化対策を提案し、それに取り組んできた。たまたま、衆院の運輸委員会の理事をやっているときに、阪神大震災の復興状況を見に行ったが、大変な勢いで復興需要が町を活気付け、しかも、元通りではなく、まったくきれいな町並みに神戸は変わっていた。これがヒントになり、私は中心市街地再活性化を思いついた。一度商店街を壊して、大胆な区画整理事業をやることにより、21世紀に向けて、情報と時間と距離が一体化した、新しいライフスタイルを実現したい。1つの町の中で、生活もし、仕事もし、遊ぶことができるのが理想である。
この中心市街地再活性化対策は先の国会で法律ができたが、まだまだ不備なところがあり、これからも一生懸命取り組んでいきたい。

参議院の今後の運営について
/青木幹雄参議院自民党幹事長
(9月18日政経懇談会)

[青木議員]

■参院選の反省
先般の参議院議員選挙で自民党は大敗し、過半数を大きく割り込んだ。法案は参議院を通らなければ一本も成立しないわけで、参議院の運営は今後大変難しい。
参院選の結果は、私たちも投票日の出口調査が終わるまで、予想もできなかった。選挙が終わってからは、まずは選挙の反省から始めなければならないということで、党内に特別委員会(反省・前進会議)を設け、全国の県連を回り、いろいろな意見を聞いている。それらの意見を真剣に取り上げ、3年後、6年後を目指して、一所懸命取り組んでいる。しかし、一番の敗因は、経済政策に大きな誤りがあったことであり、これを私共も反省し、それを踏まえて、今後の政局に対応していかなければならない。
今回の選挙は、複数区には複数候補者をたてて何とか過半数を取りたいという思いで、1年以上前から真剣に取り組んできた(複数候補者を立てなければ最初から過半数は望めない)。そのため、経済政策の失敗から大敗はしたが、候補者はみんな期待どおりの得票を得ており、その意味で落選した人もみんなやることはやったという気持ちである。
投票時間の延長や不在者投票の要件緩和により投票率が上がったことが敗因だと言う人もいるが、それは間違いだ。投票率が上がった分をこちらに吸収できなかったことが敗因だ。私共は、3年後も6年後も勇敢に挑戦していこうと決意している。

■参議院における法案処理
総理大臣の指名と条約、予算の3つが衆議院が参議院に優先するのはご存知の通りだ。しかし、通常1回の国会で約100本以上の法律が成立するが、そのうちの3割以上は予算関連の法律である。従って、予算は通っても、それを使うための予算関連の法律が通らないと予算は正常な使い方ができないわけで、そういう意味では、衆議院が優先するのは、総理大臣の指名と条約だけだと考えてもらった方がいい。そうした意味からも、参議院の運営は非常に大切である。
次に一番問題な法案の処理に関してだが、これは大きく3つの方法がある。1つは、衆議院段階で100%荷崩れしないように調整することだ。現在の金融問題はまさにこの方法をとっており、そのために衆議院で苦労している。2つ目は、衆議院で成立した法案を参議院で修正するという方法で、これは、今までもやってきた。例えば、臓器移植法案やNPO法案、サッカーくじ法案などは参議院で重要な修正を行った。そして、3つ目は、本当に残念なことであるが、衆議院で通過した法案が参議院では否決されるというものだ。自民党は過半数に足りないので、こういうことが今後3年間ないしは6年間のうちには、たびたび起こると思う。このような時は、私共がテレビなどに出て、自民党が出した法案の内容、それに対して参議院で否決された理由などをきちんと国民に説明していく必要がある。当初は、自民党は参議院で数が足りないから仕方がないという反応だろうが、どの法案も国民や各業界に関係するもので、数を頼って野党がただ反対するだけというのであれば、それはよくないという雰囲気が国民の間にも出てくるのではないか。

■参議院と経団連が連携して議員立法を
最後に参議院と経団連の関係についてだが、現在、政財界にはいろいろな会があるが、やはり、参議院と経団連が正面から話し合う機会を作っていく必要がある。
衆議院が小選挙区制になってから、衆議院議員は非常に分散していろいろな分野のことを考えなければならなくなった。それに対し、参議院は選挙区が広いし、比例区も抱えているので、非常に優秀な若手の専門家の議員がたくさんいる。
参議院では議員立法を非常に重視しているが、議員立法は、今年考えて来年できるというものではない。3年後、4年後を見通して、必要な法律を考えていかなければならない。そのためには、自民党だけで考えていても駄目で、経済界の方の意見も聞きながらやっていきたい。幸い、参議院は6年間解散がないので、腰を据えてじっくりと取り組むことができる。


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