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企業人政治フォーラム速報 No.50

PDFファイル版はこちら 1999年 1月20日発行

当面の重要課題と今後の政局
/額賀福志郎衆議院議員
(1月12日政経懇談会)

[額賀議員]

■日本の国家像

1月19日に通常国会が始まるが、総理の所信表明演説の中で、今後の日本の国家像をどう考えるか、ということに言及した方がよいのではないか、と官邸に申し上げている。
今年はちょうど1999年で、50年、100年単位で国家を捉えていくのに良い機会である。また、今は、バブル崩壊以後の経済不況が克服できずにいることや、北朝鮮情勢を中心とする北東アジアの不安定さもあり、明治維新以来の国家のあり方を考えてみる必要があると思う。
明治維新以来、日本は欧米を理想・目標とし、官民一体となって、血みどろの努力をしてきた。そして、途中、戦争という残念な経験はあったが、結果として、欧米より貧富の差の少ない理想的な近代工業化社会を作りあげることができた。このことはもっと誇っていいと思う。しかし、今は、政治も経済も社会もあらゆる面で混乱を極めている。果たして、今後の国家像というものをどのように考えればよいのか。
国家のイメージや国家の目標を作れ、という意見をよく聞くが、これからの時代はむしろ逆ではないか。従来、国家が「経済大国を目指せ」、「高度成長を目指せ」といって、官民一体となって、その目標に向けてやってきた。しかし、これからは、国家が目標を示すのではなく、むしろ、今まであまり日が当たらなかった個人(企業も含む)が自由に個性を発揮し、創意工夫できる社会、つまり、完全な個人主義を発展させることによって、個人が輝くような時代をつくるべきではないか。そういう社会では、国民は、国家に依存するのをやめ、個人の自立的な発想と創意工夫で、サクセスストーリーをつくり、その結果、国家が伝統と文化の薫り高い、力強いものになっていく、というような社会を目指すべきだ。
このような考え方にたって、国家の役割を考えると、それは次の3つだ。
1つ目は、個人や企業が自由な発想で、創意工夫が発揮できる環境を整えることだ。そのためには、規制緩和を進め、市場原理に基づく競争ができるようにすることが大事だ。2つ目は、経済的弱者に対して、いざというときは大丈夫だというような社会的セーフティーネットを整備することだ。そして、3つ目が安全保障の確立だ。

■自自連立政権

現在の喫緊の課題は、日本経済の再生である。しかし、そのためのさまざまな政策を展開していくにあたっては、政権基盤の安定が欠かせない。
昨年の金融再生関連法案の審議や、私が防衛庁長官を務めていたときの参議院における問責決議案の可決などの経緯があり、参議院で過半数に達していない弱みを痛感した。そうした経緯から、自由党との連立の話が急速に進んだ。
自自連立により実現が期待されることの1つには、政府委員制度の廃止や副大臣制度の導入があげられる。副大臣制度については、私が官房副長官だったときに、基本的な考え方をまとめた経緯があるが、これらの実現により、議会制民主主義の権威を明確化するとともに、従来の官僚主導から脱皮し、政治主導の意思決定を行っていくことを目指すことになる。さらに、自自連立により、政策展開にメリハリがついていくことが期待される。そして、かねてからの小渕内閣の公約である経済再生や安全保障問題に、万全を期して、取り組んでいくことになる。
しかし、自自連立を樹立しても、参議院では過半数に達しない。私共は、他の政党とも、今までの経緯を踏まえ、誠心誠意話し合いをしていかなければならない。国民が何を望んでおり、そのためには何をやらなければいけないか、ということに基づいて、話し合いを展開していく必要がある。

■経済再生

小渕内閣の最大の課題は経済再生だ。私は、1997年9月に内閣官房副長官になったが、その11月には、山一証券や北海道拓殖銀行が破綻し、金融危機が表面化した。一方、97年12月には、財政構造改革法が成立しており、当時は非常に混乱した状況であった。財革法は、橋本内閣の発足当初から準備してきたことであり、方向としては正しいが、その実施のタイミングは、政治家がよくよく考えてやらなければいけないことだ、とつくづく思った。
昨年は、相次いで、緊急経済対策や特別減税などを行ったが、結果として、経済はデフレ状況に突っ込んでいった。昨年末、第3次補正予算を成立させるとともに、99年度予算は思い切った予算を組んだが、民間の来年度の経済予測はほとんどがマイナスだ。
今は、瀕死の重症であった経済に痛み止めの注射をうって、何とかしのいでいるような状況であり、痛みが和らいでいる間に、いろいろと構造改革を展開して、本格的な景気回復の軌道に乗せていくことが大事だ。しかし、国民に説明するのが難しい。景気回復のための需要喚起を行うとともに、一方で、経済構造改革もやるということになれば、これは景気にとっては若干水を差すことにもなる。したがって、そこは、政策の優先順位をつけて、うまく国民に説明しなければならない。また、最近は、世代間の負担の不公平ということもあり、若い人たちは、財政の大幅な出動に警戒の目を向けている。景気が回復すれば、財政の改革もやる、ということを視野に入れて、明確なメッセージを送っておく必要がある。
このような基本的な考え方に基づいて、当面は財政出動による需要喚起を行うことが重要であるが、第3次補正予算と99年度予算の他に、追加的政策が必要だろう、というのが一般的見方だ。これを踏まえながら、準備はしておく必要がある。しかし、財政出動だけでは限界があるのであり、バブル時代に生じた設備過剰による需給ギャップをどう解消するかが問題だ。今年前半は、需要サイドだけではなく、供給サイドにたった検討もしていく必要がある。
いずれにしても、土地や株が動かないと景気の本格的な回復は期待できない。株については、市場ルールに則って、企業の株式持合を解消する、ということを考えた場合、日本は個人株主の割合が非常に少ないことが問題だ。今後、個人株主を増やすにはどうしたらよいのか。例えば、個人が株を購入したときには、相続税を免除するというようなことも検討していく必要があると思う。
今後とも、日本経済をどうするかが第一の問題であり、私も微力ながら、全力を尽くしたい。


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