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企業人政治フォーラム速報 No.51

PDFファイル版はこちら 1999年 2月 4日発行

政局講演会「自自連立政権の行方と今後の政局」
−福岡政行白鴎大学教授

[福岡教授]

■自自連立政権の実現は小渕イニシアティブ

昨年の11月のある段階から、野中官房長官が、あれほど嫌っていた小沢党首に「ひれ伏してでも」と言って、自由党との連立を模索しはじめた。竹下元総理も、小沢さんとは組みたくないという気持ちを少しはもっているようだが、「小渕総理は竹下政権の時の官房長官だから、これはバックアップしなければいけない」と言って、かなりはっきりと自由党との連立を意識して動きはじめた。
しかし、これは元をたどると、昨年8月のお盆開けに、小渕総理が野中官房長官に、「私は民主党との連携はできない。自由党との連携を進めてほしい」と言ったのが始まりのようだ。そして、自自の連立が、総保守結集につながると考えたのも実は小渕総理が先であろう。
野中さんと小沢さんは、今では表向きは握手しているが、心の底からはお互いを信用していない。野中さんの本音は、小沢さん抜きで自由党を自民党に戻すことではないか。自自連立で、衆議院は与党が304人になった。一方、参議院では、自由党を足しても116人で、過半数に10人足りない。参議院の会が10人いるが、このうち6人は自民党系だ。だから、自民党から出ていった人たちの中から、あと5〜6人を自民党に戻せば過半数になる。野中さんは、既にこのような次の段階を考えているのだろう。そうでなければ、参議院の運営は今後も非常に厳しくなる。

■自自連立は新保守合同の第一歩

このような経過で、自自連立はできあがったが、問題は、この後、これがどうなっていくかということだ。マスコミではいろいろ言われているが、私は、これは基本的に新保守合同につながっていくと思う。早ければ今年9月の自民党総裁選までに、遅くとも、選挙協力を経て、次の総選挙までには、1つの政党になり、新自由民主党が誕生するのではないか。
小沢さんは、最近、全力で小渕総理を支える、と言い続けているが、なぜ、小沢さんがそこまで入れ込むのか、ということが問題だ。
1つは、民主党の菅代表は、小沢さんに担がれる人ではないということを見抜くとともに、自由党が既に限界に来ている、という認識があったからだろう。
しかし、これだけでは一面的な見方で、他にも理由がある。それは、自分が新進党時代から主張してきた政策の正しさがだんだん実証されてきている、という思いだ。新進党は、96年の総選挙の当時、18兆円の減税を主張したが、今回、小渕さんがやった減税は9兆数千億円にのぼる。また、当時、新進党は、消費税率の3%への引き下げを主張していた。今回、消費税率の引き下げは実現しなかったが、総理官邸では、一時期、真剣に引き下げを検討したようだ。この消費税率も、今後の経済状況によっては、突如4月1日から、3%に引き下げるという可能性も残っている。
小沢さんは、自分が与党に戻っても、しばらくは謹慎しなければならない、と言っているが、その後には、必ず自分の出番が来るだろう、と思っている。99年度予算通過後には、本格的な内閣改造が行なわれるだろうが、その時は、小沢さんは、主要閣僚、副総理格で入閣することになるだろう。
そして、最後は、日本の防衛危機の問題だ。小沢さんは、この問題には相当自信を持っている。
新聞ではいろいろ言われているが、小沢さんは、政策的な正しさが立証され、日本のために汗をかければそれでいい、と達観している部分がある。私は、このような人は強いと思う。

■自民党総裁選の行方

今年9月の自民党総裁選は、経済的に大変なことがなければ、ほぼ間違いなく小渕さんが再選されるだろう。
ポスト小渕の3人(加藤前幹事長、森幹事長、梶山元官房長官)については、加藤さんが本命であることに変りはない。以前、野中、加藤の密約説(小渕さんが2年総理をやり、その後は加藤さんがやるというもの)というのがあったが、これはまだ生きていると思う。しかし、最近の自自連立をめぐり、野中さんと加藤さんの間はやや疎遠になっている。
また、森さんの清和会も、亀井さんとともに25〜30人が出ていってしまい、また最近、町村信孝さんらの若手も伸びてきている。そういう意味で、森さんも非常に厳しいと思う。
小渕さんも強くはないけれども、今は対立候補も弱い、という状況だ。ただ、もし経済的な理由で、小渕内閣が倒れれば、次は梶山さんしかないだろう。
小渕さんについて一点補足すると、小渕さんは非常に聞く耳を持ったリーダーである。前の総理はブレーキを踏んでいたが、小渕総理は少なくともアクセルを踏んでいる。これでうまくギアを上げていければ、意外とうまくいく可能性もある。

■朝鮮半島情勢−有事体制の整備を

昨年、北朝鮮からテポドンが飛んできたが、これで、日本国民の防衛意識はガラリと変わった。かつては、有事研究をしているだけでも批判をしていた朝日新聞が、昨年の暮、能登半島に武装集団が上陸したという想定のもと、自衛隊出動のシュミレーションを、両面見開きで特集した。このような中で、北朝鮮の工作員と思われる水死体が、日本海に、今年に入って、既に5遺体上がっている。
こういう中で、有事体制さえも決まっていないというのが、日本の状況であり、この点について、小沢さんは仕掛けてきている。日本は、有事体制を整備し、周辺有事法というようなものを作らなければならない。この辺をこの国会できちんと議論すべきだ。
この問題が政局のポイントになると、保守連立は新党結成までいき、民主党はこれに対応できないとガタガタになる。菅直人さんや鳩山由紀夫さんらは、ある程度、腹をくくっているが、旧社会党系の人たちがまだそこまで踏み切れない。そこがなかなか難しい問題だ。

■野党の行方

今後、政党は、10年くらいの間に、大政党の自民党、中政党の民主党、それから組織政党の公明党と共産党の4つに収斂されていくと思う。
公明党は、商品券問題等もあり、今後、与党への協力を続けていくと思う。公明党は、選挙では民主党、国会では自民党といういわゆる二股でいって、最終的には、自公か自自公という形になっていくと思う。
共産党は、今後2〜3年かからないうちに、赤がピンクになり、そして白に近くなっていくだろう。消費税率引き下げ、食料品非課税、防衛費の削減というような、2点か3点の政策合意で、菅直人さんか鳩山由紀夫さんクラスに、平然と協力するようになると思う。その時、共産党と民主党が選挙協力という段階までいき、もし、自民党が旧態依然とした古い族議員的な発想のままでいくと、今の小選挙区制ではガラリと政権が代わる可能性もある。

■今年の解散総選挙はほとんどない

最後に今年の解散総選挙についてだが、4月の統一地方選後は、県会議員、市議会議員たちは動かない。だから、自民党には不利であり、しかも、現在、自民党と自由党をあわせれば、衆議院は304議席あるので、今年の解散総選挙はほぼないだろう。したがって、総選挙は、来年の任期満了、あるいは2000年度予算が成立してから、と考えていいと思う。
経済の問題は、素人だが、軽自動車や発泡酒が売れたり、100円ショップが繁盛したりしている。今後、ますます弱っていく産業と隆盛を誇る産業とに分かれていくと思うが、今は、これからどうなるかを聞くよりも、今後どうするかを考える時期だと思う。
最近、小渕さんの支持率が上がっているのは、自自連立が原因ではなく、地域振興券のおかげだ。地域振興券の評判は悪いが、もらえる人にとっては単純にうれしいものだ。マスコミも駄目な部分だけを言うのではなく、良い部分をもっと言っていくべきだ。

(1月20日 経団連会館にて講演)

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