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企業人政治フォーラム速報 No.52

PDFファイル版はこちら 1999年 2月18日発行

新参議院議員との意見交換会・交流会

去る2月2日、昨年の参議院選で、新たに参議院議員に当選した自民党の議員(昨年、フォーラムで実施したアンケート調査回答者を対象)を招いて、各人から21世紀に実現したい最重要政策を聞くとともに、出席者との間で意見交換を行った。以下はその概要である。

[出席議員](敬称略)

岩城光英(福島県、48歳)、加納時男(比例代表、64歳)、
亀井郁夫(広島県、65歳)、木村仁(熊本県、64歳)、
久野恒一(茨城県、62歳)、中川義雄(北海道、60歳)、
仲道俊哉(大分県、69歳)、山内俊夫(香川県、52歳)、
山下善彦(静岡県、52歳)

[意見交換会]

■21世紀に実現したい最重要政策

○岩城光英−行政能力と市民の政治意識の向上
一番大事なことは、地方の行政マンの政策決定能力の向上と市民の政治意識の向上だ。例えば、地方議会の定数は、地方自治法で決められているが、自分たちの町の議員の定数などは自分たちで考え、決めるようにすれば、市民の意識は変わっていくのではないか。

○加納時男−循環型経済社会の構築
21世紀にやってみたい政策は、循環型経済社会の構築だ。従来の生産力拡張第一の技術パラダイムから、循環型の技術パラダイムに転換することが大事だ。
循環型社会の実現のためには、市民と企業と政治のパートナーシップが必要だ。環境によいものは少し高くても使うといった市民の意識と環境技術の担い手である企業の努力、それから、それらを支援する法制や税制を整備するのが政治の役割だ。

○亀井郁夫−教育
21世紀の課題は何かと言われたら、迷わず教育をあげたい。戦後50年、日本は経済的には繁栄したが、日本人が従来持っていた大切なものをなくしてしまった。それは、日本人の魂であり、心だ。最近の学校の荒廃や少年による刑事事件の多発などは、やはり日本人が誇りを失い、責任を感じない人間が育ってきているのが原因だと思う。子供たちの教育をどうするか、これを学校も家庭も社会も一緒になって考えていくような仕組みを作っていかなければならない。

○木村仁−地方都市の再編成、再整備
私が21世紀の課題として考えていることは、地方都市の再編成、再整備ということだ。
その基本になることは、1つは、地方都市における鉄道、バス等の公共交通機関の整備である。地方都市では、鉄道が採算に乗るということはないので、基盤部分は公的資金で建設し、その後、民営化に持っていくべきだ。
もう1つは、土地利用計画の抜本的見直しである。熊本の例でいうと、熊本市を中心とする都市計画区域は4万2千haあるのに対し、そのうち市街化区域は1万1千haに過ぎない。そして、最近の7年間をかけて市街化区域に編入されるのは、わずか50haである。これでは、地方都市は発展しない。

○久野恒一−福祉政策
私は長年、医師としてがんばってきたが、少子高齢化社会を迎え、これを何とかするには政治に出るしかないと思い、県議会に立候補した。そして、県議を1期半務めた後、参議院議員に立候補した。
国民は豊かだが、将来が不安だから、お金を使わない。少子高齢化を何とかし、将来に安心感を持てる社会にするため、福祉政策に重点的に取り組みたい。

○中川義雄−心の教育
21世紀に向かって一番大事な問題は、教育、特に心の教育だと思う。日本の教育レベルは、世界的にも最高レベルだが、それは物質的豊かさを求める教育になっている。日本は、物質的には恵まれているが、国民の7〜8割は現在あるいは将来に不満、不安を抱いている。一方、アジアの餓死者がでるような貧しい国では、逆に7〜8割の人が現状の生活に満足している。この原因は、主に、日本の教育が物質的豊かさのみを求め、心の教育がないからだ。

○仲道俊哉−少子化対策
私は、前職は教師であり、教育問題にも一所懸命取り組みたいが、何といっても21世紀に向けた最重要課題は、少子化問題だと思う。
合計特殊出生率は、平成9年には1.39まで下がっている。現在の人口を維持するのに必要な出生率は2.08だそうだ。少子化によって、教育、特に、家庭教育の問題、労働人口の減少問題、女性の労働進出の問題など、さまざまな問題が発生する。少子化問題はさまざまな問題の根源だ。

○山内俊夫−教育
私は、大学卒業後、郷里の香川に戻り、広告代理店に勤務するとともに、青年会議所の活動を行ってきた。その時、一番感じたのはやはり教育の大切さだ。特に、ここ20年くらいの教育の荒廃が、経済や社会に反映されてきたと思う。戦後教育の中で、“赤信号みんなで渡れば恐くない”的な責任感のない、他人任せの教育がはびこってきたと言えるのではないか。教育はすべてに通じるものであり、教育を原点として21世紀の社会システムを構築していかなければならない。

○山下善彦−中小企業対策
私は、静岡県議時代、中小企業を考える議員の会を発足し、会長として活動してきた。
私は、21世紀の最重要課題として、この中小企業政策に絞ってがんばっていきたい。そこで、3ヵ月ほど前に、同志を募り、新産業を育成していくために、新産業技術研究会をつくり、勉強を始めた。中小企業のみならず、いろいろな分野で新しい事業をおこそうという人たちの意見を聞きながら、それを幅広く反映していきたい。

■質疑応答

各議員の発言に対し、出席者より、以下のような活発な質問が寄せられた。

  1. 「教育荒廃の原因は何だと思うか」
  2. 「教育の国際化について、どう考えるか」
  3. 「中小企業の振興策に関連して、新規投資を促進させる規制緩和や資金集めの手段について聞きたい」
  4. 「循環型経済社会をつくるにあたって、東洋には自然との共生、西洋には自然の克服という哲学があると思う。また、環境技術において、アメリカは急速な進歩を遂げているが、21世紀の日本の役割をどう考えるか」

これらに対し、各議員からは、以下のような回答があった。

  1. 「教育の荒廃は、一言で言えば、戦後の教育が日本の伝統を全面的に否定し、責任よりも権利を主張するという形で行なわれたことが大きい」(亀井議員)
  2. 「教育の国際化には、国際的に通用する教育をどうするかという側面と、もう1つは、人を育てるという意味で、日本以外の国から、どう学んだらいいか、という2つの側面があると思う。
    前者の国際社会に通用する人間をどう育てるかという意味でいえば、やはり、日本人としての誇りを身につけることが非常に大事だと思う。」(中川議員)
  3. 「新規投資に必要な資金と実際の国や自治体の支援を見ているとそのギャップは大きい。新産業技術研究会では、資金はないが知恵はあるというような人たちを手助けしていきたいという理念を持っている。」(山下議員)
  4. 「東洋と西洋では哲学の違いがあるかもしれないが、あるところは自然を生かし、あるところは自然を克服するという東洋と西洋を融合した日本ならではの第三の道があるのではないか。
    日米の技術格差については、新しい芽も出てきた。アメリカで多く特許をとった会社のベストテンのうちの7社は日本の会社だ。技術開発こそ日本が生きる道であり、今の趨勢でいけば、日本も負けたものではない。」(加納議員)

連立政権の運営と当面の課題
/二階俊博自由党国会対策委員長
(2月3日政経懇談会)

[二階議員]

■自自連立の経緯と政策協議

参議院については、今後8年間は自民党は過半数を制することはできない。そういう状況の中で、昨年の夏以降、政治は本当に行き詰まっていた。政権与党がこういう状況では、政策にスピードとパワーがでない。現在のような経済不況に対しても、タイムリーな手が打てない。
私たちは自自連立の要求の中で、こうした問題を真正面から切り崩していかなければならないと考えた。国民がこんなことはできないだろうと思うようなことを成し遂げれば、国民の政治への関心は高まるし、応援団も増えるであろう。そこで、今回は相当思い切ったことをやった。政治の年数でいえば、20年くらいかけてやることを一気にやった。それくらいの価値があるものと私は考えている。
まず、政治を国民の手に取り戻すために、政治・行政改革についての申し入れを行った。それは、政府委員制度の廃止、公務員数の削減、国会議員の削減、大臣の削減だ。
政府委員制度の廃止については、相当大きな抵抗があった。しかし、政府委員は、選挙の洗礼も受けていないし、責任も取らない、また、すぐ人事異動で人が代ってしまう。こういうことが、国民の政治に対する信任を低下させている原因の一つではないか。大臣は細かい点まで答えられないので、政府委員は必要だという意見がよくあるが、大臣に対して質問するのだから、大所高所からの質問でなければ、質問者の見識が問われる。本来、安全保障をどうするか、国際貢献をどうするか、といった国家の基本的な問題を議論すべきだ。いずれにしろ、この政府委員制度の廃止は、大変大きな政治改革につながっていくと確信している。
それから、公務員については、10年間で25%の削減を申し入れたが、これは純減の数字だ。
さらに、民間も必至にリストラをし、公務員も減らすということになれば、当然、国会議員がその範を垂れなければならない。それで、衆参両院の50名ずつの削減を主張した。参議院については、全体の数が少ないので同数の削減ということについて異論はあるが、衆議院の50名の削減については、自民党も了解したと受け取っている。これは今国会で成立させたい。
大臣の削減については、小沢党首は、当初14人に減らせ、と主張したが、これは内閣としては、いかにも困難だ、ということで、とりあえず、2人減らして18人ということで合意した。これは大変難しい問題であったが、よくやり遂げたと思う。

■安全保障問題

現在、日本は、急迫不正の侵略については、日米安全保障条約に頼っている。今の体制は国際的に見ても、相当高いレベルにあると思うが、日本側は、いかんせん実戦経験はなく、演習しかしていない。そこで、いざというときに、本当に実効が上がるのか、ということを、日米で真剣に検討し、連携をとることが大事だ。その際、日本がきちんと後方支援をします、と言わなければならないが、それを内緒でやるのではなく、日本のためであるということを、国民にも、野党にも理解してもらわなければならない。
そのためには、早急に新しい日米防衛協力の指針(ガイドライン)法案を整備する必要があるが、今までは、なるべく円満に済ませるということで、重要な点は避けてきた。日本は、何ができて、何ができないのか、という判断基準を明確にしておき、緊急時にあわてて超法規的措置を取るといったことがないようにしておかなければならない。そして、このことは、国民はもちろん、ASEANを中心とする関係諸国にきちんと説明し、理解してもらう必要がある。

■経済対策

国民の暮らしを守るためには、経済の問題は一番大事な問題だ。なかでも、税制改革を思い切ってやることによって、国民に、将来に対する安心感を持ってもらうことが大事だ。そのため、今回、消費税を、年金、高齢者医療、介護に限定して使う福祉目的税化する、ということを提案した。これについても、小渕総理の決断で、来年度の予算総則に盛り込まれた。
現在の経済情勢からすると、景気対策として、何かあと一押しする必要があるのではないか。そのためには、消費税の一時凍結というようなことが大事だと思う。ただ、これを長くやっている余裕は、国の財政にはないので、半年くらいでいいと思う。大蔵省は、レジの修正やタクシーメーターの交換など、大変なことになるといって反対するが、実際に現場の人に聞くと、そんなことはない。また、一度下げたら、上げるときに、内閣が潰れるほどの騒ぎになる、という意見もあるが、消費税を導入した頃と今とでは国民の消費税に対する認識も違う。そうでなければ、消費税の福祉目的化に賛成するわけはない(少なくとも、消費税の福祉目的化に反対の声はほとんど聞かれない)。
ただ、我々は、消費税にこだわっているわけではない。それができないのなら、他に何ができるか、お互いに知恵を出し合おうと自民党に投げかけているところだ。

■今後の政界再編と自自連立の効果

今後、政界再編はどう進んでいくかということだが、これからは、派閥の合従連衡ではなく、あくまでも政策中心の政界再編の時代になっていくと思う。
小渕政権も少し支持率を上げてきたが、恐らく、予算が通過し、具体的な仕事が始まれば、さらに支持率も上がっていくだろう。
自自連立の成果が如実に表われているのは、今回の予算編成と予算審議だ。恐らく、2月18日には、予算案は衆議院を通過すると思う。
冒頭、今後8年間は参議院で自民党は過半数を見込めないと言ったが、これは自自連立以前の話しであり、自自連立がなり、選挙協力ができれば、次回の参院選で過半数を得ることも不可能ではないと思う。
かつて、故松下幸之助さんが、当時の池田総理に「政治の生産性を高めてほしい」と言ったそうだが、まさに、自自連立以前の状態は、政治の生産性という点からは程遠い状況にあった。しかし、これからは、政治の生産性を高め、経済の再生に向かって、懸命に取り組んでいきたい。そして、政治家も、経済界も、官僚も、もう1度自信を取り戻して、この国難に立ち向かう決意さえできれば、これを克服できると思う。


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