[ 経団連 | 企業人政治フォーラム | 速報目次 ]

企業人政治フォーラム速報 No.55

1999年 4月27日発行

最近の米国政治情勢について
/米国ブルッキングス研究所トーマス・E・マン博士ほか一行の来日にあたって

去る4月8日、米国の選挙・政治資金研究の第一人者であるブルッキングス研究所のトーマス・E・マン博士ほか一行が、日本国際交流センターの招きにより来日した機会をとらえ、米国の政治情勢について話を聞くとともに、一行と出席者との間で意見交換を行った。

[トーマス・マン博士]

米国の政治情勢を4つのポイントから指摘してみたい。第一は、ワシントンにおける政治的ムードの劇的な変化である。議論の焦点が、1年間におよぶ大統領のスキャンダルや弾劾騒動から、セルビアでの紛争に移った。米国人は従来、海外での軍事行動に関しては熱心ではなかったが、今回の米軍とNATOの軍事行動に対する国民の支持は上昇しており、必要ならば地上軍の派遣も容認する、というのが世論の風潮である。
第二に、近年、米国経済は驚異的な好調を維持しており、高成長や低失業率・インフレ率を今後とも予測しないエコノミストは今やいない。今回の景気回復の過程では、全所得層における実質賃金の改善という、80年代には見られなかった現象が生じている。また生産性にも顕著な改善の兆候が見られ、犯罪、福祉給付者、10代の妊娠、離婚などのデータがいずれも低下するなど、社会的にも良いニュースが相次いでいる。しかし、米国における社会問題の絶対的な水準は依然高位であり、経済が悪化した場合には再び社会問題が浮上することとなろう。
第三に、国の財政をめぐっては、財政赤字から黒字の時代へと転換したが、政治が単純になった訳ではなく、むしろ黒字の使い方をめぐって、政党間の戦いが熾烈さを増している。
第四に、2000年の選挙に向けた運動が既に始まっており、大統領候補は積極的な選挙資金調達活動を展開している。民主・共和両党の有力候補者であるゴア副大統領、ブッシュ・テキサス州知事は、既に公的資金調達システムの枠内で許容される上限レベルまで資金を集めており、この2人以外に、必要な資金を集められる者が出てくるかどうかに焦点が移っている。こうした中で、民主党が大統領の弾劾プロセスを経て一層強力になったにもかかわらず、現状、ゴア副大統領の支持率は、ブッシュ知事よりも20%も低いと言う点が興味深い。
いずれにしろ、政党間の競争が熾烈さを増しており、僅差の争いとなっている。そうした中、経済が好調を維持しているにもかかわらず、政治に対する国民の不満は高まっており、現在の米国の政治は非常に興味深い時期にあると言える。

[E・J・ディオンヌ ワシントンポストコラムニスト]

現在、クリントンが民主党の政策を共和党のものに近い方向にシフトさせているにもかかわらず、共和党の大統領に対する攻撃がむしろ激化しているという、米国政治をめぐるパラドックスについて指摘したい。つまり、政策的な攻撃を行う根拠が乏しい中で、政党間の抗争が激化しているのである。共和党がクリントンを憎む理由は、共和党が伝統的に主張してきた財政均衡や、犯罪撲滅といった政策を、クリントンが「盗んだから」である。従って、2000年の選挙では、共和党が、クリントンから受けた打撃を、党内においていかに調整するかがポイントとなってくる。同党の有力大統領候補であるブッシュ知事は、共和党の伝統的な反政府的立場を修正しつつあり、その意味で、共和党内の調整プロセスはすでに始まっていると言える。おそらく2000年の大統領選は、民主党ゴア対共和党ブッシュの戦いとなるであろう。

■意見交換■

「日本では無党派層が増大しているが、米国ではどうか。また、このような層に対する働きかけが選挙運動におけるポイントとなっているのだろうか。」

  • 近年の米国政治における重要なトレンドは、明確な政党支持を持たない人々の増大である。特定の政党を支持する「コア」の支持者を除くと、政党に対する忠誠心はそれほど強くなく、また、多くの米国民はそもそも政治に関心がないとも言える。
    (M・ウィアー カリフォルニア大教授)

  • この点については、日本のほうが米国より一歩進んでいると言えるのかもしれない。米国でも、30歳以下の有権者の半数以上が特定の支持政党を持たない。先のミネソタ州知事選挙で元レスラーのベンチュラ氏が当選したが、彼は日本と同じような反政党キャンペーンをやって、若年層の支持を得たのである。
    (ディオンヌ氏)

  • 米国の政党は(日本に比べて)「強い」と同時に「弱い」と言える。強いというのは、二大政党の歴史的な積み重ねがあり、多くの人は特定の支持政党を持っており、自分が支持する政党の候補者に投票する傾向が強い点である。弱いというのは、60〜70年代に明確な政党支持のない「独立系」の人が増大し、現在でも高い比率を保持している点である。特に若年層ほど、特定政党を支持する割合が低く、選挙キャンペーンの専門家は、浮動層(スウィング・ボーター)を対象に資金を投入している。
    (マン博士)

  • 米国では投票率が低く、大統領選では50%以下、その他の議員選挙では35%に過ぎない。動員活動がなければ、投票にさえ行かないというのが現状である。
    (R・ケント・ウィーバー ブルッキングス研究所シニアフェロー)



外国にいても、国政選挙に参加できる「在外選挙」がスタート
/1999年5月1日より在外選挙人名簿登録受付開始

この度、在外邦人の国政選挙への参加を可能にする、「在外選挙」制度の概要が明らかになった。1999年5月1日より在外選挙人名簿への登録受付が開始され、名簿への登録後、2000年5月1日以後の国政選挙より、在外投票が可能となる。

[概要]
  1. 登録資格
    年齢満20歳以上の日本国民で、その者の住所を管轄する領事官(大使や総領事)の管轄区域内に、引き続き3ヶ月以上住所を有する者。

  2. 申請
    申請者本人が、現住所を管轄する在外公館(大使館や総領事館)に、直接出頭して申請。なお、旅券等の書類の提示が必要。

  3. 在外選挙人名簿の登録市区町村
    原則として、日本国内の最終住所地の市区町村選挙管理委員会。ただし、国外で生まれ、日本で暮らしたことがない場合などは、本籍地の市区町村選挙管理委員会。

  4. 在外選挙の対象となる選挙
    衆議院比例代表選出議員および参議院比例代表選出議員の選挙。 ※衆議院小選挙区選出議員および参議院選挙区選出議員の選挙は、当分の間、在外選挙の対象外。

  5. 選挙できる選挙区
    登録された市区町村の属する選挙区。

  6. 投票方法

    • 在外公館投票
    • 郵便投票(居住国等に在外公館がない場合など)
    • 帰国投票

    ※なお、各企業ご担当におかれましては、海外駐在の社員の方々にもご周知いただけましたら幸いです。

    ※詳細については、都道府県、市区町村の選挙管理委員会、または在外公館まで。
    また自治省のホームページ(http://www.mha.go.jp)においても情報提供中。

企業人政治フォーラムのホームページへ