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企業人政治フォーラム速報 No.61

PDFファイル版はこちら 1999年 9月30日発行

「今後の政局について」
/村岡兼造衆議院議員
(9月22日政経懇談会)

9月22日に開催された政経懇談会では、自民党幹事長代理の村岡兼造衆議院議員(前内閣官房長官)を招き、自民党総裁選後の政局等について聞くとともに、懇談した。

■総裁選後について

今回の総裁選では、小渕総理が350票を獲得し、他候補に大差をつけて勝利したが、結果的には加藤氏、山崎氏とも目標以上の支持を集めたわけで、3者ともまずまずの結果であるといえる。
新内閣発足にあたって、自自公には、衆議院定数削減、さらに選挙協力といった問題がある。選挙協力については、私も幹事長代理として自由党とともに検討してきたが、その取りまとめにあたっては、「大変だ」と言われているが、「どうしても出る」という人間については無所属で出てもらうしかないわけで、選挙協力そのものは、それほど連立の障害になるものではないと考えている。自民党としては、大きな政党であるので、「できるところではこちらが引いて」協力したい。ただ、すべてにおいて協力するというわけにはいかない。

■次期臨時国会以降
 〜政治主導の意思決定プロセス定着に向けて〜

臨時国会の招集はいつかということになるが、これは10月の末か11月の初めのことになると思う。いずれにせよ、この臨時国会は画期的なものになるだろう。というのも、従来の政府委員が廃止され、「役人」は参考人ということになるからである。また、政務次官については8名増員し、現在の24名から32名になる。また、平成12年1月の国会から国家基本政策委員会が設置されるが、次回の臨時国会では、週に1回、与野党の党首が討論を実施する場を設けるといった試みを検討している。
さらに、平成13年1月の省庁再編と同時に、副大臣22名、大臣政務官26名が新たに設置されるが、これは一連の国会審議の活性化、および政治主導の政策決定システムの確立のための措置で、非常に画期的なものである。従来は、大臣が外国へ行く際には国会の承認が必要であったが、そのようなことでは重要な国際会議への出席等に不都合が生じる可能性があった。しかし、副大臣制の設置に伴い、大臣が外国に行かなくてはならない場合には、副大臣が大臣に代って国会で答弁を行うことが可能になる。これらの制度の導入によって、国会がどのようになるのかはやってみないとわからないが、政治主導になりつつあるということはできる。ただ、一方で大臣と副大臣の意見が違った場合に、それが表面化すれば、両者のうちどちらかが辞任しなくてはならないといった状況が生まれてくるかもしれない。官僚の不祥事の影響もあるのだろうが、世界の趨勢を受けて、政治家の側においても「これではダメだ」ということで、政治主導の流れが確立しつつあることは間違いない。そして、今後、その流れは強くなっていくのではないかと思う。

■自自公誕生の背景、衆議院解散について

小渕総理も再選を果たしたとはいえ、総選挙が1年以内には必ず実施される。自自公の問題については、引続きマスコミ等で話題になるだろう。そもそも自自公連立に踏み切った背景には、昨年の、いわゆる「金融国会」や額賀前防衛庁長官の罷免といった問題がある。マスコミ等には「数だけではおかしいのではないか」という論調が多かったが、結局、民主主義の結論は「数」である。政局が安定していない場合には、危機に対処することは非常に難しいことであり、そういった意味からも政局の安定というものが非常に重要になってくるのだ。ただ、単なる「数あわせ」ではなく、政策の一致というものが必要なわけで、政策については、現在、3党間で調整中である。
衆議院の解散についてはいろいろ言われており、12月の予算編成後の解散といったことも囁かれているが、自由、公明両党との連立政権である小渕新内閣が、10月に発足して2ヶ月程度で解散ということは、「考えうる一つの選択肢」ではあるが、その可能性は低いと考えている。

■「天下り」人事の是正

私は党内で「天下り」問題にも取組んでいる(公務員倫理法制定に関する調査会長)が、従来は各省単位で対応していたものを、来年度から総務庁で「人材バンク」のようなものを設立し、内閣で対応していこうと考えている。経済界においても、できれば「お役所」からの人材を受け入れなくてもやっていける、もしくは自発的に「返上」していくくらいの覚悟が必要なのではないかと思う。
中央官庁の事務次官の退官を62歳まで延長すべきだという声があるが、現在は58、9歳で退官しているのが実態である。また、「ライン」のポストが限られているため、50歳くらいになると、「肩たたき」が始まるようであるし、52、3歳になると30〜40%の職員に対して肩たたきがあるようだ。そういった人材を民間企業に「出す」わけで、民間企業からすれば、正直なところ「(お役所で)いらなくなった人材を放出する」のであるから、実際にはそのような人材は必要ないはずである。しかし、「お上」の存在というものは強いのだろう。
私は、以前から何度も「天下りはダメだ」と言ってきた。官房長官時代にも、(キャリア官僚を)28、9歳で地方の税務署長に就任させるという、大蔵省のシステムは「絶対にダメだ」と主張した。かなりの抵抗があったものの、現在はこれが33歳くらいになっているという。しかし、それでもまだ若いと考えている。職員数が30〜40人の地方の税務署に、本省から28、9歳の人間が来て署長に就任しても、実質的な実務はほとんど何もしておらず、実務は副所長がほとんどすべてやっているというのが現状である。このようなシステムはもはや通用しないのだということで止めさせたのであるが、天下りの問題についても、「役所の論理」というものはなかなか変えにくいものである。
しかし、現実には50歳前後で肩たたきを受けて、辞めろと言われても、その後の生計を立てていくことができないわけで、今後は「ライン」の役職は無理であるとしても、実務の「スタッフ」として、たとえば60歳まで雇用していくというふうに改めるべきである。その中で、現在は仙台の国税局長であれば40歳台であるものを、52、3歳で就任するといったように、(就任年齢を)「引き上げ」ても良いのではないかと思う。また、日本橋の税務署長などは、何千億円という税金を扱うわけであるから、57、8歳の人間が務めても良いのではないかとも思う。今後の少子高齢化社会の中で、公務員も実務スタッフについては、途中で放出することなく、65歳くらいまで雇用しないと対応できなくなるような状況も考えられる。いずれにせよ、自民党と人事院との間ではこのようなことを話合っており、10月中には天下りの問題について、党から意見を出すことを考えている。

[村岡兼造衆議院議員プロフィール]

むらおか・かねぞう
1931年秋田県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。1967年より秋田県議会議員を2期務め、1972年衆議院議員初当選以来、当選8回。3回にわたる国対委員長時代には、与野党間の調整に活躍。第二次橋本改造内閣では内閣官房長官を務めた。現在は、自民党幹事長代理、平成研究会(小渕派)副会長。


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