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企業人政治フォーラム速報 No.76

PDFファイル版はこちら 2000年12月27日発行

近藤剛氏

企業人政治フォーラム・近藤剛氏講演会

近藤剛さんを次期参議院選挙における企業人政治フォーラムの推薦候補者に決定

12月25日に開催された講演会において、講師の近藤剛氏(伊藤忠商事元常務取締役、政治経済研究所長)より、「来年の参議院選挙(比例区)に挑戦したい」との発言があった。
これに対し、出席した会員からの提案を踏まえ、近藤氏を次期参議院選挙における当フォーラムの推薦候補者として決議いたしましたのでお知らせ申し上げます。


近藤剛さんを激励する!

【青木幹雄参議院自由民主党幹事長】

あと一週間で新たな世紀を迎える。来年には、21世紀のわが国の針路を決定すると言われている、非常に重要な参議院選挙が控えている。私どもはかねてから、経済界においても国政の一翼を担っていただきたい、と強く希望してきたが、このたびその希望に応えて、近藤剛さんという非常に優秀な方を、自由民主党公認の参議院議員候補としてご推薦いただいた。私どもでは、12月22日に近藤さんを公認候補者として、一緒になって参議院選挙を戦っていくことを決定した。
2年半前には、経済界の代表として加納さんという優秀な人材を参議院に送っていただいた。ここに近藤さんが加わることになると、「1+1=2」ではなくて、5倍、10倍に匹敵する力で、経済界の「代弁者」となって活躍されることを心から期待している。

【尾身幸次自由民主党幹事長代理】

国際化の進展に伴い、企業が国を選ぶ時代になってきた。日本を経済活動にとって魅力ある国にするためには、連結納税制度の導入や、確定拠出型年金の創設などのさまざまな問題を解決していかなくてはならない。そのような中で、参議院にはビジネスの経験があり、経済界の代表として働くことができる人材が必要である。
私は近藤さんとは以前からの知り合いであるが、近藤さんはアメリカで働く日本人の中で、「ナンバー・ワン」の仕事をしてこられた方である。近藤さんの国際感覚を活かして、政治を変えていっていただきたいと思う。
近藤さんにお目にかかって、以前とは顔つきが変わり、「勝負を賭ける」顔になられたように感じた。私も、近藤さんとはご縁があるので、皆様方と一緒になってがんばっていきたい。

【加納時男参議院自由民主党副幹事長】

近藤さんには、私が参議院議員になってから発見したことを3つお伝えしたい。
1つ目は政治家の中には、意外に、勉強する方が多いということである。毎朝、さまざまな分野の勉強会が開催されており、それぞれの勉強会では、非常にレベルの高い議論が展開されており、私も非常に刺激を受けている。
2つ目は参議院では新人議員であっても、意外に出番が多いことである。私も、一年間に委員会で30回以上も発言できるとは思ってもいなかった。当選直後であっても、手を挙げるといろいろなことを任せてもらえる。
3つ目は政治には意外に「力」があるということである。毎朝の勉強会では当面の政治課題や、中長期的な課題を徹底的に議論している。国会に提出される法案も、そこでの結果をもとに検討されたものである。
現在、自民党はその体質を変えていかなくてはならない時期に差し掛かっているが、近藤さんはまさに絶好の時期に出てこられた。難問が待ち構えている時に、いろいろ言い訳を言って難問を避けようとするのは「二流のインテリ」である。難問がある時に、これに敢然と立ち向かうのが、「知性のあるインテリ」、「行動力のあるインテリ」である。これは、まさに私の知っている近藤さんの姿である。近藤さんと一緒に働かせていただけるよう期待している。

近藤剛氏講演概要

◆ ワシントンで考えたこと

私は80年代の後半から90年代の初めにかけてワシントンに駐在していた。この間、東西冷戦構造の崩壊や湾岸戦争の勃発等、さまざまな印象的な出来事が次々と起こり、まさに世界の歴史の渦中にいるような感情を抱いていた。経済面では、当時、アメリカは双子の赤字に苦しんでおり、「アメリカは東西冷戦に勝利したことにはなっているが、本当に勝利したのは日本である」というようなことが喧伝されていた。一方の日本は経済ブームに沸き、世界経済の中で頂点を極める勢いであった。当時、ワシントンを訪れた多くの日本人の方々が、「もう日本はアメリカから学ぶものは何もない」と言っておられたのを記憶している。しかし、この10年間で日米の立場は逆転してしまった。あと一週間ほどで21世紀を迎えるにあたって、この10年間に日米両国で起こったこと、あるいは我々は21世紀に向けて何をなすべきかということを、もう一度考える必要があると思う。

◆ この10年間に世界で起こったこと

この10年の間に世界で何が起こったのか。東西冷戦構造の崩壊は、政治・経済の両面において大きなインパクトを与えた。政治の面では、いわゆる「平和の配当」を求める動きが出てきた。アメリカでは東西冷戦構造が崩壊した翌年の、1992年の大統領選挙では経済第一主義を唱えたクリントン候補が、湾岸戦争を勝利に導いた現職のブッシュ大統領を破った。1993年には韓国に初の文民政権である金泳三政権が誕生した。日本においてもいわゆる「55年体制」が崩壊したことは記憶に新しいところである。

◆ 経済における世界的なパラダイムの変化

経済面においても、東西冷戦構造の崩壊に伴って世界的なパラダイムの変化が起こった。このパラダイムの変化を4つの側面から捉えてみたい。
1つ目は世界的なグローバリゼーションの動きである。具体的には、東西冷戦構造の崩壊に伴い、従来の社会主義経済圏が西側の市場経済圏に取り込まれるようになったことである。
2つ目の側面はIT革命の進展である。東西冷戦構造の崩壊に伴い、アメリカの軍需産業における技術・人材が民需にシフトしたことによって、現在のように大きくIT革命が進展することになった。
3つ目の大きな流れは自由化の流れである。企業が国を選ぶ時代になって、先進国、発展途上国を問わず、資本と技術の誘致が国の経済力の強化、産業競争力の強化にとって非常に重要な要素になった。1994年にAPECで採択された「ボゴール宣言」も、このような世界的な自由化のうねりの中で出されたものであることを認識する必要がある。
4つ目の側面は労働市場の変質である。グローバリゼーションの流れの中で、労働市場も世界的な規模で流動化した。

◆ この10年間 〜日米の対応の違い〜

これらの4つの側面で説明できる世界経済のパラダイムの変化に対する、日米両国の対応の違いが現在の両国の差を生み出した。アメリカでは政治と経済の両面において、この経済のパラダイムの変化を積極的に捉えた。その結果、政治の力と経済の力が融合し、アメリカという国の「総合力」が発揮された。
一方、日本ではバブルの崩壊等も重なり、この世界的な経済のパラダイムの変化を、従来の経済変動の一側面と誤認してしまったきらいがある。企業は従来型の経費削減を中心とした「我慢の経営」に徹し、政治の面では内需主導型の経済構造改革に向けた動きが停滞してしまうことになってしまった。

◆ 日本がなすべきこと

この10年間を経て、日本も方向としては正しい方向に向けて進みだしつつある。しかし、現在、我々に最も欠けているのは、「総論賛成、各論反対」と言っている時代は過ぎ去ったということを認識することである。現在、実際に必要とされているのは「総論」ではなくて、「各論」を実行に移す「実行力」である。
しかし、その実行力の発揮にあたっても2つの大きな課題がある。1つ目はスピードの問題である。「ドッグイヤー」の時代と言われている中で、これからの政治はバスケットボールのようなものである。各プレイヤーには瞬時、瞬時の決断が要求され、一瞬の隙や猶予も許されない。
2つ目はこの大きな経済のパラダイムの変化に対して、いかにして国としての総合力を高めていくのかという問題である。そのためには、今後、政治と経済が新しいパートナーシップを構築して、この課題に対応していく必要がある。

◆ 参議院選挙への挑戦

今後、政治が経済界のニーズを的確に把握し、迅速にそれに対応することが求められていることは言うまでもないが、一方で、経済界も政治に深くコミットする時代が到来したのではないかと思う。実質的には「政経分離」の時代は終わっている。これが世界の現実である。日本に、政治と経済の新しいパートナーシップを築いていくために、私としても、評論家的な存在であってはならないと思っている。来年の参議院選挙が大きなチャンスであるのならば、私としては果敢にそれに挑戦してみたいと考えている。

近藤剛氏を囲んでの朝食交流会を開催

12月25日には講演会とあわせて、講師である近藤剛氏を囲んでの朝食交流会を開催し、多数の会員の参加を得た。

近藤剛氏プロフィール


こんどう たけし
元 伊藤忠商事株式会社常務取締役・政治経済研究所長

1941年 東京生まれ
1954年 昭島市立昭島小学校卒
1957年 昭島市立昭島中学校卒
1960年 都立第五商業高校卒
1964年 早稲田大学政経学部卒
同年  伊藤忠商事株式会社入社
ロンドン駐在、本社業務本部米州チーム長、産業電子機器部次長などを経て、1983年よりシアーズ・ワールド・トレード社特別顧問、ペトロリウム・ファイナンス社副社長(ワシントン駐在)
1987年より伊藤忠アメリカ会社副社長兼ワシントン事務所長
1992年より政治経済研究所長、1996年6月取締役就任、1997年4月より海外・開発担当役員補佐兼海外市場開発部長兼政治経済研究所長、1998年4月常務取締役就任。
2000年6月 常任顧問就任
同年12月末 退職

著書に「入門国際経済論」(成文堂:共著)、「米国の通商戦略」(徳間書店)、「現代産業の再構築」(慶應通信:共著)、「ストップ・ザ・日米摩擦」(三田出版会:共著)、「"Northern Territories" and Beyond Russian, Japanese, and American Perspectives」(Praeger Publishers:共著)、「主張するアメリカ 逡巡する日本」(三田出版会)、訳書に「冷戦後の日米同盟」(徳間書店)がある。
趣味:読書(雑読) 音楽鑑賞(クラシック/オペラ) 絵画鑑賞(洋画) 散歩ジョギング
座右の銘:「初心忘るべからず」 「着眼大局、着手小局」


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