PDFファイル版はこちら | 2001年 3月26日発行 |
3月8日の政経懇談会では、公明党の谷口隆義副幹事長を招き、株主代表訴訟制度の見直しを柱とするコーポレート・ガバナンスに関する商法改正問題の検討状況等について話を聞いた。
私は20年以上にわたって公認会計士をやってきた。公認会計士としては初の国会議員である。振り返ってみると、公認会計士としての経験が今も非常に役に立っているように思う。昭和50年代以降、大手企業が一斉にエクイティ・ファイナンスを実施した折には、債券発行のための目論見書を作成する作業に関わった。企業の海外での資金調達に携わったりもした。また上場企業約40社の監査を担当していた。各業界を取り巻く環境等についてもいろいろと勉強することができ、現在もそのような経験が非常に役に立っている。その他、金融機関のシステム監査や与信の審査体制のチェックなども手がけた。このような「現場」経験に基づき、現在は公明党の金融問題調査プロジェクトの座長を務めている。
衆議院の法務委員会では、商法関係の問題が取り上げられる時には、公明党からは私が質問に立っている。党の企業法制に関するプロジェクトの座長も務めている。なお、党のプロジェクトでは、現在、コーポレート・ガバナンスの問題を中心に取り組んでいる。
昨年、商法は制定後100周年を迎えた。ご存知の通り、わが国の商法はドイツ法を基礎とし、債権者保護の立場に立脚した法律となっている。一方で、証券取引法はアメリカ法をベースとし、投資家保護の立場に立った法律である。従来から、この証券取引法と商法との間にギャップが指摘されている。
企業会計の分野においても、従来から商法との調整が行われてきた。現行商法は債権者保護の立場であるので、清算価値をベースに企業価値を算定することになっている。これに対して、企業会計の世界では、事業の継続を前提に、発生主義を原則としている。商法と企業会計との間のギャップとしては、従来から繰延資産等の問題が挙げられている。たとえば、商法では繰延資産は資産とは認められていないが、企業会計では発生主義に基づく厳然たる資産であるとされている。
また、昨今、企業会計では連結会計が主流になりつつある。国際的な流れの中で、わが国でも連結会計への流れが定着しつつある。しかし、わが国の商法は単体企業を前提とした法体系であるので、なかなかうまく対応できていない。商法の抜本改正を控えて、連結会計に対応できるような法体系を整備すべく検討を重ねている。現行商法に関しては、もはや考え方そのものを抜本的に改めていかなくてはならない時期に差し掛かっている。
このように、商法、あるいは企業会計を取り巻く環境は激変している。現在、国会では時価会計が話題になっているが、いよいよこの時価会計が来年度から全面的に導入されることになっている。今後、企業経営にあたっては年金会計、時価会計、連結会計等のいわゆる「会計ビッグバン」に正対していかなくてはならない。今後は企業会計の変化にあわせて、商法のあり方も企業会計制度と整合性のあるものとしなくてはならない。我々もそういったことを念頭において商法改正問題に取り組んでいる。
コーポレート・ガバナンスに関しては、私自身も非常に関心を持っている。3年ほど前から、自民党の保岡興治衆議院議員(前法務大臣)らとともに、超党派の議員の間で議論を進めてきた。最終的に、自民党側から今通常国会で議員立法として提出したいという話があった。それを受けて、公明党内においても議論したが、党内の調整が難航し、党としての意見をなかなかまとめきることができなかった。最終的には党内での喧喧諤諤たる意見を調整し、つい先日、ようやく党としての方向性を「企業統治に関する商法等の改正案」(中間取りまとめ)にまとめた。
公明党の中間取りまとめ案では、第一点目に「選択制」を掲げている。従来の商法の改正時にも、何度か監査役の権限を強化してきたが、監査役制度が当初想定していたようには機能してないのではないかという指摘も多々ある。コーポレート・ガバナンスの観点からすると、監査役制度よりも社外取締役を中心とする監査委員会が経営内容をチェックしていく体制の方が望ましいのではないかという考え方もある。しかし、わが国の監査役制度にも長い歴史があるので、一挙に制度を変えてしまうわけにもいかない。そこで、両者を選択することができる制度として「選択制」を提案している。ただ、「選択制」を今通常国会での議員立法に盛り込むことは時間的にも困難であることから、今回は自民党の要綱案に盛り込まれている監査役の権限強化を実現することを前提に、将来の「選択制」の導入を提案した。
第二点目は、株主代表訴訟における取締役等の損害賠償責任の軽減に関する問題である。自民党案では、「定款の定めに基づき、取締役会決議による場合」と、「株主総会の特別決議による場合」の2つの方法を挙げている。一方、公明党案では、2つの方法のうち、前者には問題があるとしている。その理由として、
金庫株についても、与党三党の証券市場等活性化対策に関するプロジェクト・チームの協議では、今通常国会で成立させようということになった。金庫株については何点か問題点があるが、資本準備金を取得原資に含めるかどうかという問題と、取得から処分までの間に発生した損益を通常の損益取引とするのか、資本取引とするのかという問題が大きなポイントとなってくるように思う。現在、まさにこの点について議論している最中である。
[谷口隆義衆議院議員プロフィール] |
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たにぐち・たかよし 1949年大阪府生まれ。大阪府立大学経済学部卒業。1975年昭和監査法人入所。1985年には谷口隆義公認会計士事務所開設。1993年衆議院議員選挙に初当選。以来、連続3期当選。現在、公明党副幹事長を務める。なお、公認会計士としては衆参両院を通じて初の国会議員。 |