[ 経団連 | 企業人政治フォーラム | 速報目次 ]

企業人政治フォーラム速報 No.79

PDFファイル版はこちら 2001年 4月26日発行

経済構造改革と日本の将来像
─ 逢沢一郎衆議院議員
(4月19日政経懇談会)

4月19日の政経懇談会では、自民党の逢沢一郎衆議院議員を招き、「経済構造改革と日本の将来像」と題してわが国経済や政治の抱える問題と、改革の方向性について話を聞いた。

【日本経済は夕方の太陽か?】

今まさに自民党総裁選の最中ではあるが、政治が本来の機能を回復・発揮できる状況を作って、日本経済の再建に責任を果たしていかなければならないと強く感じている。最近の日本の力は揺らいできたのではないか、日本のピークは1980年代後半から、1990年代までであったと将来的に言われるのではないか、今の日本は夕方の太陽とまで言われている。しかしながら、日本と日本人が持っている本来の力を発揮すれば、世界の目が再び日本に向けられることは可能である。世界の様々な機関が競争力のランキングを発表しているが、スイスのある機関の発表によると、93年、94年くらいまで、日本の競争力は総合1位であったが、年々順位を下げて現在では21位である。しかしながらアメリカの競争力評議会の発表している『技術革新がどの国で最も進んでいるか』では、日本1位、スイス2位、アメリカ3位でずっと推移している。また、GDPに占める科学技術研究費は、日本が2.98%で世界1位、アメリカが2.59%で2位であり、ほぼ、10年くらい順位は変わっていない。アメリカ国内における特許取得件数では上位10社のうち7社を日本企業が占めている。このような事実を考えると、日本は健康であり、新しいことに挑戦する力は全然衰えていないのではないかと思う。

【小さな政府と三眼レフの社会】

21世紀の日本の姿を考えたとき、一つにはコンパクトであるが良く働く小さな政府が大切である。もう一つは競争力と創造性を持つ企業、産業社会を再構築しなければならない。今までは行政という社会と、企業という社会の二極体制であったが、それにNPO、NGOを加え三眼レフ体制の社会を目指すべきである。
今でも日本は先進諸国の中で、単位人口あたりの国家公務員、地方公務員、特殊法人の職員の総数は、最も少ない数の国の一つである。但し国土の広さ、単一民族であることを考慮すると、まだコンパクトにできるはずである。例えば岡山市は、人口60万強で、市会議員は52名存在しているが、岡山市の姉妹都市であるサンノゼ市は人口80万に対して市会議員は10人である。同じ市会議員であっても相当な権威を持って議会に出て来ている。NPO、NGOについては、経団連の理解も頂き、税制を作り上げることができた。今後は、日本にしっかり根付かせていきたい。

【公正な競争を促進する規制緩和】

規制緩和に取り組んでいるが、電力やガス等のエネルギーの世界も相当変わってきている。保護や規制の多い社会から、自由と自己責任の社会に変えていきたいと10年前から発言しつづけてきたが、まだ続ける必要がある。例えば農業の分野でも政府の保護をほとんど受けていない卵・ブロイラーは競争力があるが、補助金や規制で守られている分野については押しなべて競争力が弱い。公正な競争を促進するために原則を大事にした経済的規制の緩和が必要である。
また、独占禁止法について不当廉売に対する対応について考えて行きたい。不当廉売とは、平たく言えば「仕入れ価格を下回る価格で継続的に販売をし、そのことによって近隣の同業他社が目に見える形で具体的な影響を被ったことが立証できた時」に始めて不当廉売となる。中小企業を中心に不当廉売に対して独禁法が機動的に動いてくれないとの声が多い。公正な競争を確保するために、この点についても更に研究を深めて行く。

【財政再建の議論を】

今回の総裁選でも当面の景気対策か構造改革かの切り口でメディアは報道しているが、一番議論すべきは財政再建である。いきなりの改革は不可能であっても、どのような道筋でそれを解決するかの所見を、次期総理は持つべきである。現在、国民の租税・社会保障負担は37%弱であるが、これに財政赤字分を乗せると実質的な国民負担は、ほぼ50%になっている。この事を政治家も国民ももっと真剣に受け止める必要がある。行革による無駄の排除をベースとして、給与所得控除と配偶者特別控除を見直し、課税最低額を引き下げる必要があると考えている。また、消費税率の見直しについての議論も必要であるが、消費税を上げる時には、非課税品目、軽減税率、インボイス等の考え方も必要になってくる。今後5年から10年の時間軸の中でこのような議論も詰めて行く責任を政治が負っている。

【首相公選制か単純小選挙区制に】

最近の日本の議院内閣制の現実は最悪に近い状況で推移していると言わざるを得ない。多数のアンケートや世論調査があるが、現段階で単純に今の議院内閣制が良いか、首相公選制が良いかを質問すれば、7割から8割近くが首相公選制を支持している。これは今の議院内閣制の現実に対して国民が満足するどころか辟易している事の現れであると厳しく受け止める必要がある。私自身も、憲法を改正して首相公選制に移行するか、今の衆議院の選挙区制度を小選挙区比例代表並立制から、単純小選挙区制にするかだと考えている。今の選挙区制度では、3党以上の連立でなければ過半数を維持できない。政策決定に時間がかかり、その内容も焦点がぼやけたり、連立のための理解しがたいコストも伴ってしまう。小泉総裁候補の遊説に大勢が集まってくるのは、現状を大きく変えて欲しいと願う国民の方々のうねりであると理解している。自民党が21世紀も政権を託してもらえる存在であり続けることができるかどうか、ギリギリのところに来ていると考えている。新しい時代の要請に応えられるよう、今考えていることをいかにして形に変えて行くか、真剣に取り組んで行きたい。


[逢沢一郎衆議院議員プロフィール]
あいさわ・いちろう 1944年岡山県生まれ。慶應義塾大学工学部卒業。松下政経塾の第1期生として入塾。
1986年衆議院議員初当選。当選5回。通商産業政務次官、衆議院外務委員長、自民党商工部会長などを務め、現自民党政務調査会副会長、松下政経塾理事。

企業人政治フォーラムのホームページへ