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企業人政治フォーラム速報 No.92

2002年2月4日発行

相沢英之 衆議院議員

今後の政策課題と税制改革の展望
(1月25日政経懇談会)

 1月25日の政経懇談会では、衆議院議員の相沢英之自民党税制調査会長を招き、税制を中心とした今後の政策課題について話を聞いた。

【行財政改革の大きな課題】

 政治・行政・経済ともに逼塞感を持っている。戦後50年以上が経ち、色々な制度が積み上がっており、それを一度壊さないと更なる展開ができない。税収も増えない、という感じをもつことは確かである。私も一昨年まで行政改革推進本部の副本部長を務め、主として独立行政法人の導入に関わった。省庁再編も行なわれたが、省庁を足し上げただけでは本格的な行政改革にはならない。本当の行政改革とは、中央官庁の仕事を見直して民間に譲るものは譲り、地方に移すものは移すことである。これを実現するには抵抗が多いが、小泉総理は道路公団や住宅金融公庫の廃止統合を表明しており、実質的に足を踏み込んだ行革に取り組んでいる。
 行革に絡んで地方分権を進める上では、今の3,200余りある市町村では受け皿として不十分であり、今の1/3くらいまで統合する必要がある。また、権限だけではなく財源移譲も必要であるといわれる。しかし、仮に交付税交付金をやめて、税源を移譲すると財源としては偏在するだけである。地方に税源を与え自主的に調達するといっても、東京のような大都市は金が増えて、地方の県は財源を失うことにならざるを得ない。ここが問題である。

【平成14年度税制改正案のポイント】

  1. 連結納税制度
    連結納税制度導入による税収減は色々議論はあったが、平年度で8,000億円と考える。これを埋め合わせるために、連結納税採用時の子会社の加入制限や、子会社の欠損金の持ち込み制限等の措置を講じた。また、退職給与引当金制度を廃止する。これについては連結納税制度を採用しない企業の収益に跳ね返るとの議論があり、連結納税採用会社にも若干の負担を願うという意味で、最終的に2年間2%の連結付加税を導入することになった。

  2. 中小企業関係税制
    同族会社の留保金課税、交際費課税、事業承継に関する税制がある。特に交際費課税については努力したが、大きな見直しとはならなかった。

  3. 金融・証券税制
    老人マル優制度の改組、株式譲渡益課税に関する申告不要の特例、ストックオプション税制等の拡大が主なポイントである。

  4. 外形標準課税
    平成14年度からの導入は見送り、来年の課題とした。

【税制の抜本改正について】

 経済財政諮問会議では、受益と負担の関係、税と社会保険料、特定財源の問題、国と地方の財源配分を中心に議論が進み、政府税調では、税体系のあり方、所得・消費・資産のバランス、課税ベースのあり方、所得税の控除等を中心に議論されるだろう。自民党税調としては、最終的な法案としてのとりまとめが必要となるため、我々で最後の結末をつけなければならない。諮問会議や政府税調では財政の締めくくりとはあまり関係なく、理論的に検討を進めることは可能であるが、党税調は直接結論が法律案に関連するので原則的、抽象的な議論だけをやるわけにはいかない。しかし、党税調としても、従来は11月か12月に半月から1ヶ月の間に年次改正を議論して決める方法をとっていたので、基本的な問題が十分検討されず、先送りされてきたことは否定できない。そこで党としても2月以降検討を進めていく。

【自民党税調としての検討ポイント】

 どういう問題を取り上げるかというと、1つは所得税の問題である。所得税は基礎控除、給与所得控除、扶養控除等、控除額が大きく種類も多いし、課税最低限が各国と比べて非常に高い。384万円までが夫婦と子供二人の標準世帯で非課税となる。約1/4の人が所得税を納めないというのはいかがなものか。また、累進税率が厳しい。総理からも「できるだけフラットにできないか」といわれた。税収を変えないという前提ならば、短絡的な見方をすると、所得の低い方に課税して高所得者の負担を軽減することで問題になるが、方向としてはそういうことだろう。
 また、住宅資金贈与の非課税枠の抜本的拡大も、消費への影響も大きく、重要な検討課題である。
 もう1つは法人税に関しての様々な特別措置の問題である。これは正に総論賛成、各論反対ということにいつもなってしまう。特別措置を減らすことで、その分法人税率を下げるという考え方もあるが、まず特別措置を減らすための協力を得る必要がある。また、特別措置は小規模企業に対する課税の軽減等中小企業関係のものが多いのも問題である。

【地価と株価の下落がデフレの最大原因】

 地価と株価が下がっていることがデフレの最大原因である。では、地価対策、株価対策に税制上どのような取組みができるか。地価については、従来のように公共事業を進めると、土地取得等も発生するので地価対策にはなる。しかし今年は公共事業を1兆円減らす計画であるのに、平成15年度に公共事業を増やすことにはならないだろう。そうなると需要面からの景気刺激が必要となる。そこで土地税制で何とかならないかということで、今年の予算でも譲渡所得の軽減、土地登録免許税の減免、不動産所得税の減免、固定資産税減税等々の項目が挙がったが、固定資産税などは総務省の反対であった。ドイツは土地、株式の譲渡益については非課税であり、小額の株式取引には補助金も出している。そこまでは無理としても、土地の譲渡益課税については思い切って減らしたい。不動産取得税も同様である。固定資産税も地価が下がる中で税額が上がる現象が起きており見直したい。
 証券税制については、源泉分離を残したいとの声もあった。私も源泉分離、申告分離の選択性を残したかった。しかし、税調の従来の考え方としては申告分離一本化を前提として税率の引き下げ、損失の繰越を認めるということであるので、その線で14年税制は考えた。しかし時限的な措置もあるので、更に証券市場を活性化させるために考えていかなければならない。

【消費税自身の持つ歪みの是正が肝要】

 消費税については、将来的な問題として税率を上げることもあり得る。ただし、現況の下では消費促進にならない消費税のアップは難しい。小泉総理も「まず、益税の解消など、消費税の税体系の中の歪み、不公平の是正が先で、色々な措置を税法上、財政上やった最後の手段として税率アップを考えるべきではないか」と言っている。ただ、「税制改正についても聖域なき検討をする必要があるので、今の段階では消費税は上げるとも下げるとも言わない」とも言っている。私の意見も同じである。


[相沢英之衆議院議員プロフィール]
あいざわ・ひでゆき 1919年大分県生まれ。大蔵省入省後、主計局長、事務次官を務めた。1976年に初当選後は経済企画庁長官・金融安定化特命委員長、金融再生委員長等、財政金融政策の要職を務めた。現在は自民党税制調査会長、自民党デフレ対策特命委員長を務める。

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