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企業人政治フォーラム速報 No.95

2002年3月6日発行

若手政策通議員との本音トーク合宿を開催
―2月25(月)〜26日(火)―

 茂木敏充衆議院議員、林芳正参議院議員を招き、「官から民へ〜活力ある経済社会の実現に向けて」をテーマに、経団連ゲストハウスで本音トーク合宿を開催した。当日は、企業人約30名が参加し、深夜まで熱のこもった議論が行なわれた。


【茂木衆議院議員発言要旨】

 一連の外務省の問題を見て感じるのは、外務省にも問題は多いが、政治の側でもこれまで外交に関心を持った議員があまりにも少なかったということだ。「外交は票にならない」としても、若い議員が真剣に取り組まないと、外交に関する議員間の健全な競争、政策論争は生まれないし、外務省と政治の良い関係も樹立できない。
 日本経済再生に向けて、5点申し上げる。第1は、消費拡大と税制改正についてだ。1970年、30代と40代は全貯蓄の50%超を持ち、60歳以上は18.4%だけだった。しかし、2000年では、30代・40代が持つ貯蓄は22%、60代以上が54%と逆転した。ここで注目すべきは税制上、相続に比べて生前贈与が圧倒的に不利になことが、若い世代への贈与を通じた消費拡大を妨げているということだ。米英仏では、生前贈与と相続の税率は同じだ。日本の相続税の基礎控除は5000万円、法定相続人1人当たりさらに1000万控除であり、最低でも6000万円まで控除される。そこで贈与税の改正案として、3年程度の時限立法とした上で、贈与税の基礎控除を110万円から2000万円まで拡大すれば、3年間で控除は最高6000万円となり、相続税とのバランスも取れる。もちろん、消費刺激への即効性もある。
 第2は雇用政策だ。失業率が5〜6%の時代となっても、労働省の政策は2%時代のままだ。ハローワークの仕事は、ただ求職者が希望を記した書類を受け取り、求人票とマッチングするだけだ。民間の斡旋会社は、まず、求職者に対して徹底的なコンサルティングを行ない、当該求職者の市場価値をわからせることからはじめる。同時に、求人を出していない会社に対しても、積極的に働きかけ、きめ細かくマッチングしている。
 ハローワークを完全に無くすことはできないとしても、情報は民間の斡旋会社と共有すべきだ。その上で、ハローワークは長期の失業(身体的な障害等に関連した失業)を担当することとし、短期の失業は民間に任せるべきだ。
 第3は、通信・放送法体系の抜本的改革だ。ITバブルがはじけたとは言え、ITは21世紀をリードする産業だ。日本が遅れているのは、インターネット時代に相応しい法体系になっていないことが大きい。電気通信、放送、CATV等、7つの法律でバラバラに規制するのではなく、インターネット時代に対応した新しい一つ法体系とすべきだ。同時に関連する規制も現在の300から100程度に一気に緩和する。このような抜本的な規制改革で16兆円の新産業・サービスが生まれ、10兆円の民間投資が行なわれると総務省も試算している。
 第4は、新しいリーディング産業の創生だ。ここ10年、日本では次世代を担う産業が生まれておらず、国としての努力も不十分だ。縦割りで硬直化した研究開発費の配分を柔軟化、戦略化すべきだ。情報家電、ナノテク等、日本の製造業の強みを生かせる分野が有力だ。
 第5は公取委についてだ。公取委は、国内シェアにばかり目が行って、国際競争という視点が欠落し、企業合併に対する対応が遅すぎる。このままでは、競争力確保のため世界的な合併が進む中で、日本だけが遅れてしまう。産業再生法の更新の際、企業合併に関する調整プロセスを法律の中に組みこむことも一案だ。

【林参議院議員発言要旨】

 米国で議員スタッフとして議員立法(マンスフィールド法案)に携わった。米議会には、リーガル・スタッフはいても法制局はない。コモン・ローの国なので、後法が優先される。しかし、日本は大陸法であるため、法体系の整合性が重視される。この結果、法制局との刷り併せが必要になる。
 行政改革、公務員制度改革を中心に問題提起をしたい。数年前、行革における政治のリーダーシップを議論した際、議員立法が増えることと、政府(行政)に議員が参加(副大臣、政務官)することが並列に論じられた。確かにこれまで議員立法が少なすぎたので、ある程度増える必要があるが、大統領制の米国のように、100%議員立法にはならないだろう。むしろ議院内閣制の英国のように、行政に政治が入り込んでいくことが大切である。
 省庁再編で省庁の数が機能別に整理されたことは、評価できる。建設省と運輸省が国土交通省に統合されたことで、道路、空港、新幹線の整備が国土開発全体の視点でできるようになった。
 独立行政法人の狙いは、単年度主義にとらわれない運営の効率化・透明化、自己責任の強化だ。そもそも特殊法人にもそのような裁量があったが、形骸化した。独立行政法人のモデルとなった英国のAgencyの元をただせば、日本の特殊法人とのことだ。
 内閣機能強化で重要な点は、経済財政諮問会議や総合科学技術会議など合議制の機関を設けた点だ。これまでは事務次官会議で各省のコンセンサスがなければ、閣議に諮れなかった。しかし、これらの機関では、役所の合意がないものについても内閣主導で議論できる。
 内閣・総理の補佐・支援体制の図で内閣府と総務省、各省の関係が示されている。他省で行うことが適当でない業務を総務省が扱うことになっているが、本来は、そういった調整を内閣府でやるべきであろう。
 自民党国家戦略本部のビジョン策定委員会の中間報告で党議拘束や法案の事前審査について問題提起した。事前審査をすることで党議拘束がかかり、法案の審議の円滑化が図られてきたが、全ての法案にそれが必要かどうかを判断するオプションを内閣に与えてもよいのではないか。たとえば、事前審査をせず提出された法案について党議拘束をはずすことがあってもいい。過去、党議拘束をかけなかったのは、臓器移植法案がある。
 国会審議の円滑化のため、国対委員長の機能が必要であれば、官房副長官が兼務するのも一案である。また、関係委員会審議に大臣の出席が義務付けられるため、衆議院の委員会が開かれている時、平行して参議院の関係委員会の審議ができないことになる。大臣、副大臣が手分けして出席できれば、法案審議が促進される。


[茂木敏充 衆議院議員プロフィール]
もてぎ・としみつ 1955年栃木県生まれ。東京大学、ハーバード大学大学院修了後、マッキンゼー等に勤務。1993年7月初当選。自民党副幹事長、通商産業政務次官等を歴任。近著に「日本経済 再生への最終回答」(徳間書店)。
[林芳正 参議院議員プロフィール]
はやし・よしまさ 1961年東京都生まれ。東京大学卒業後、三井物産入社。ハーバード大学大学院修了。1995年7月初当選。大蔵政務次官等を歴任し、現在、参議院自由民主党政策審議会副会長、党行政改革推進本部事務局長等を務める。

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