[ 経団連 | 企業人政治フォーラム | 速報目次 ]

企業人政治フォーラム速報 No.99

2002年5月27日発行

企業人政治フォーラム会員1万人拡大キャンペーン実施中!!
入会に関心のある個人・法人を是非ご紹介下さい。
TEL : 03−5204−1766  FAX : 03−5255−6255  e-mail : bpf@keidanren.or.jp


川上和久 明治学院大学教授

「政治にとってのメディア、メディアにとっての政治」
(5月14日企業人政治フォーラム 川上和久 明治学院大学教授講演会)

 5月14日、メディアと政治の関係に詳しい、川上和久明治学院大学法学部教授を招いて「政治にとってのメディア、メディアにとっての政治」と題して話を聴いた。

【理想の関係と現実】

ラルフネーダーが「情報は民主主義の通貨である」といっているように、政治もメディアも情報を流通させることに協力することが基本である。規範的民主主義にとって、情報流通の活性化を通した民度の向上と、国民のメディアリテラシーを向上させることで政治に対する有権者のインプットを強化し、それを受けた政治的アウトプットが強化されていくプラスの循環過程が理想である。現実は、国民と政治とメディアの間で情報流通が円滑でないため、お互いに不信感を持っている。

【55年体制崩壊後のメディアの役割】

55年体制下でメディアが有権者に与えた影響は、中選挙区制のため、限定的なものであったが、政治的エリートと呼ばれる人たちへの影響は少なからずあった。1党支配の中ではメディアは野党的スタンスで報道し、政治的エリートはそれを政策として取り入れ自民党は包括政党として広範な支持を受けた。ところが、分配の機能不全に陥ったことにより、国民の政治不信を起している。そこで、政治不信を解消する役割、私的利益を公的に解決するろ過装置としての役割、イシューを提示する役割、そしてアカウンタビリティを果たすツールとしての役割が必要である。

【細川連立内閣成立以降、メディアは何をしているか?】

現在のメディアがやっている事の1つは、テレポリティクスである。細川連立政権の政治関連改革により、小選挙区比例代表並立制が導入され、党営選挙となったことにより、党の顔としてテレビ向けの人材が出てきた。テレビは客観報道ではあるが、結果としての善悪二元論の構図の中で改革派は何かをやってくれるというイメージをつくった。しかし、テレビの中での政治家の発言が政策として実現することは少ない。
また、メディアは政治不信を増大する報道が多く、有権者も高度経済成長時代同様、冷めた見方をしている。それに対して政党もイメージだけに走り、有権者を引き付けるマーケティング戦略を持っていない。

【望ましい政治とメディアの関係、Solutionと展望】

このような状況を変えるために、政治とメディアは何をすべきか。まず、政治は

  1. インターネットを通した情報公開、地道な政策提言、
  2. メールマガジンの活用、
  3. 政党のコミュニケーション能力の向上、
  4. インターネットを活用した政治システムの構築、
  5. 双方向性の活性化、
を行なうべきである。これらは、メディアミックスでさらに効力を発揮するIT政治のCIである。
メディアは、
  1. 取材能力の強化、
  2. 自浄作用の強化、
  3. 有権者のリテラシー向上に資する仕掛け、
  4. インプット−アウトプット関係の明確化、
が必要である。また、有権者も民度向上のために、各種団体などの政策インプット能力の強化と、ITによる活性化が必要である。

【経団連への期待】

経団連が政治に対して物を言ったり、政治家と直接懇談や情報交流するとともに、インターネットを活用してそうした情報を公表していく。これを繰返すことでメディアもうかうかしていられなくなる。メディアは普通の人では取れないような情報を編集してわかりやすく、主体的に有権者に伝えることで、有権者へのインプット機能が強化され、ひいては有権者がそのような問題を政治にインプットする機能の充実にもつながる。経団連には政治的なインプット機能を果たしながら、民度の向上と民主主義社会の安定にも通じた機能を果たしてもらいたい。


[川上和久 教授プロフィール]
かわかみ・かずひさ 1980年、東京大学法学部卒。86年、同大学院社会科学研究科博士課程単位取得、東海大学文学部助教授、明治学院大学法学部助教授を経て、97年より現職。主な著書「情報操作のトリック(講談社現代新書)」、「メディアの進化と権力(NTT出版・第6回大川出版賞)」他。



伊藤達也 衆議院議員

「若手政治家は小泉改革をこう考える」
(5月21日若手政治家との政策懇談会)

 5月21日、第1回若手政治家との政策懇談会を開催した。当日は、衆議院議員の伊藤達也氏を招き、小泉改革を加速させる経済再生戦略についてご講演いただき、参加者との意見交換を行なった。以下は講演の概要である。

【小泉経済政策の評価】

小泉構造改革は主として既得権益を清算し、それを新しい活動の原資に振り向けるようとした。国民も「痛み」ではなく「励み」と感じたからこそ、驚異的な支持率を得ていた。しかし、政権誕生から1年余り経った今、理念や具体的政策、優先順位やスピードに疑問が生じている。今必要なものは、新しい政策の機軸を明確にする建設的な政策論争である。

【経済再生戦略】

経済再生のためには、攻めの構造改革として 1.需要創出型構造改革、2.経済の環境整備、3.新しい財政の構造改革、守りの構造改革として4.金融と産業の再生、の4項目が重要であり、攻めと守りを同時に行なうことが肝要である。

【攻めの構造改革】

需要創造型構造改革として、戦略的な規制緩和の推進、行政から民間への業務委託、電子政府・電子自治体化、ターゲット・ドリブン型研究開発、産業の競争力強化とサービス経済化の推進を実施する。
経済の環境整備には、相続税、贈与税の見直し、個人投資家の育成と税制改革を中心とした個人金融資産の活用、わが国の国際収支構造の変化に基づく対外経済戦略のパラダイム転換が重要である。
新しい財政の構造改革には、包括予算化や、政策効果の説明責任を厳しく問う制度、シーリング制度に代わる歳出コントロールの枠組み導入、公会計制度改革を盛り込んだ、新「財政構造改革法」を制定する。

【守りの構造改革】

守りの構造改革である金融と産業の再生には、以下の3点を実施するべきである。

  1. 銀行再生のため、新旧勘定分離で不良債権を最終的に解決する。
  2. 中小企業への資金供給のため、資金仲介に新タイプの金融機関を創設する。
  3. 成熟産業再生のためリスクマネーを強化する。
    具体的には米国では20兆円市場であるプライベート・エクイティ・ファンドを育成する。


[伊藤達也 衆議院議員プロフィール]
いとう・たつや 1961年東京生まれ。84年慶応義塾大学法学部卒業後、松下政経塾に入塾。87年から米国に留学し、サクラメント市長や下院議員の政策スタッフを務め国際感覚を磨く。93年に初当選以降3回連続当選。自民党経済産業部会長、e-Japan重点計画特命委員会事務局長、元通産政務次官。

企業人政治フォーラムのホームページへ