情報通信分野の規制緩和要望

「規制緩和要望」(1998年 2月17日) より

通信・放送の融合に対応した制度、政策の見直し
人工衛星局の無線局に関する包括免許制の導入等
無線局設備増設時の審査の簡略化
無線局免許申請手続きの簡略化
周波数利用効率化のためのルールの導入
ＣＳデジタル放送のスポーツ専門チャンネルに関する放送番組審議機関設置の免除
約款認可制の原則届出制への見直し
ＩＴＳ（高度道路交通システム）の利活用の推進
歳出金・歳入金の口座振替手続の電子化の促進
技術進歩に対応した測量法の見直し
郵便事業への民間参入

通信・放送の融合に対応した制度、政策の見直し

米国等では、通信衛星をはじめとする通信・放送の融合分野を、ニュービジネス、あるいは競争力強化の手段として積極的に推進・活用している。わが国においても、この融合分野は２１世紀の経済社会を牽引する成長分野として期待されており、企業が、自らあるいはユーザーのニーズに応じて、自由な創意工夫を凝らして機動的、弾力的に通信・放送の融合分野を活用できるよう、現行制度、ならびにその運用等を見直すべきである。

衛星中継器の通信・放送共用化

制度の概要: 成長が期待される通信衛星ビジネスに関して無線局の免許を受ける際、原則として、衛星中継器は電気通信役務、放送役務のどちらかに区分され、電気通信役務及び放送役務の共用を行うためには通信目的と放送目的の両方の無線局の免許をとらなければならない。
要望内容: 一つの衛星中継器を、簡易な手続きで機動的に、通信・放送のいずれの用途にも使うことができるようにすべきである。
要望理由

技術的には通信・放送両用途に供することができるが、行政側の対応により、割り当てられた周波数帯域を、個々の顧客のニーズに合わせて通信、放送の両方のサービスを機動的に提供することができない。
技術革新、委託放送事業者の減少等により、放送用に割り当てられた周波数に余裕が出た場合、簡易な手続きで通信用に利用できれば、周波数利用の効率性が向上する。通信用に割り当てられた電波についても同様である。
既に認められている周波数を別の目的に利用する場合には、簡易な手続きで各種サービスを提供できるようにするのが妥当である。

異なる委託放送事業者（ＣＳデジタル放送）間における番組・種別間の伝送容量の融通の解禁

制度の概要: 現在、異なる委託放送事業者のチャンネル間でビット数の融通を行うことは認められていない。
要望内容: 同一の衛星中継器については、異なる委託放送事業者のチャンネル間でのビット数の融通を認めるべきである。
要望理由

技術的には、同一衛星中継器内であれば、複数事業者のニーズに応じてチャンネル間のビット数の変更を機動的に行うことができる。
例えば、スポーツなど動きの速い画像の送信には、一画面毎に、より多くのビット数を割り当てて画像の鮮明化を図り、静止画や動きの少ない画像の送信にはビット数を減らすことが認められれば、衛星中継器の一層効率的な利用が可能になる。こうしたビット数の調整は、米国では行われている。

ＣＳ委託放送事業者によるＣＳ放送用電波を用いたＣＡＴＶ局向け広報番組配信の解禁

制度の概要: ＣＳ委託放送事業者は、各地のＣＡＴＶ局向けに、通常番組以外に、ＣＳ放送広報用の番組を供給する際、ＣＳ放送用電波を使用するためには、別途通信用の無線局免許が必要とされていることから、現在、ビデオテープを宅配便で個別に配送せざるをえない。
要望内容: ＣＳ委託放送事業者が、ＣＳ放送の休止時間帯（例えば深夜）にＣＳ放送用電波を用いて、各地のＣＡＴＶ局向けにＣＳ放送広報用の番組の配信を行うことを、簡易な手続きで迅速に行えるようにすべきである。
要望理由

ＣＳ放送用電波を用いて番組を配信すると、輸送にかかる人手、手間、費用等の負担を節減できる。
ＣＳ放送用電波を使用すると、ＣＳ委託放送事業者は臨時の特集番組（例えば、有名人関連、イベント関連等）を迅速かつ機動的に広報・宣伝することができ、ＣＡＴＶ局のコミュニティ・チャンネルは、より機動的、柔軟なものとなる。
ＣＳ放送の空き時間帯にも電波を利用することができ、周波数利用の効率が高まる。

通信ネットワークのＣＡＴＶ事業への本格的利用の解禁

制度の概要: 郵政省は、９３年１２月発表の「ニュービジネスの展開　ＣＡＴＶ発展に向けての施策」において「電気通信回線の利用も可能」としたが、その後、加入者光ファイバー網を伝送路として利用したＣＡＴＶ事業の本格的実施は認められていない（一部試験サービスが認められたのみ）。
要望内容: 公正競争条件に配慮しつつ、電気通信事業者の回線設備をＣＡＴＶ伝送路として全面的に利用できるようにすべきである。
要望理由

政府・与党が推進している家庭までの光ファイバーケーブル設置（ＦＴＴＨ：Fiber To The Home）の促進につながる。
初期投資負担が軽減され、ＣＡＴＶ事業への新規参入が促進される等のメリットがある。
従来のケーブルよりも大容量の伝送が可能となり、利用者の番組の選択の幅が広がる。

受信者が限定された通信衛星サービスに関する規制緩和

郵政省では、ニュービジネス、競争力強化等の手段として注目されている通信衛星サービスに関して、昨年12月に「通信衛星を利用した通信・放送の中間領域的な新たなサービスに係る通信と放送の区分に関するガイドライン」を公表したことは高く評価する。今後、新しいビジネスの育成、ならびに企業、国民の機動的・柔軟な活動の促進という観点にたって、ガイドラインの運用を図ることが求められる。

一定の資格者等に受信者を限定したＣＳ情報送信の通信扱い化

制度の概要: ９７年１２月に公表された「通信衛星を利用した通信・放送の中間領域的な新たなサービスに係る通信と放送の区分に関するガイドライン」において、公衆に直接受信させることを送信者が意図していることが、送信者の主観だけでなく客観的にも認められる場合が放送、その他の場合は通信とする、とされている。
要望内容: 送信者において、公衆が直接視聴できないような措置を講じ、受信者の範囲を一定の資格者（国家試験合格者、農協組合員等各種組合組合員等）に限定している場合には、通信扱いとすべきである。
要望理由

不特定多数の公衆が直接受信できないような措置を講じ、特定個人にのみ、情報を配信することは、技術的に可能である。
受信者の範囲を一定の資格者（国家試験合格者、農協組合員等各種組合組合員等）に限定している場合には、公衆に直接受信させることを送信者が意図していないことは明らかであり、通信扱いとするのが妥当である。
なお、情報内容等については、自主的に、契約等で明示することが考えられる。

ＣＳデジタル通信受信機の流通の自由の明確化

制度の概要: 通信衛星を用いた情報送信サービスを受信するために必要な受信機について、放送専用受信機については、流通に関する制度的規制は存在しないが、通信用受信機については、その受信機を必要とする対象が限定的であることを根拠として、電器店等の店頭での販売が可能かどうかが明確ではなく、民間は店頭販売をできないでいる。
要望内容: 通信用受信機についても、電器店等の店頭での販売が可能であることを明確にする必要がある。
要望理由

ＣＳデジタル通信受信用端末の流通経路の制限されることにより、端末の普及が遅れ、価格引き下げの制約となっており、ユーザーにとってデメリットとなっている。
ＩＣカードには１枚毎に異なるＩＤナンバーが付されており、送信者側が、特定ＩＤナンバーの受信機のみに情報を送信すること、逆に、送信しないことは技術的に可能である。ＩＣカードを管理することにより、通信傍受を防ぐことは可能であり、端末自体が公衆の手に渡っても何ら問題はない。

ＣＳ委託放送事業者によるＣＳ放送用電波を用いた特定ＣＳ放送受信者向け付加サービスの解禁

制度の概要: ＣＳ委託放送事業者が、放送休止時間帯やデータ放送用のビットを利用して、特定のＣＳ放送受信者(特定商品のメーカーとその販売者等)に対してのみ映像、データを伝送するためには、別途通信用の無線局の免許が必要とされる。
要望内容: ＣＳ委託放送事業者が、既に認められている放送の休止時間帯やデータ放送用のビットを利用して、特定のＣＳ放送受信者に対してのみ映像、データを、簡易な手続き、低コストで伝送できるようにすべきである。
要望理由

ＣＳ放送の休止時間帯にも電波を利用できたり、データ放送用のビットを活用することができれば、周波数の有効利用が可能となる。
放送用電波を利用して各種の情報（新商品情報、サービス情報、テレビコマーシャルの補完情報、イベント情報等）を、特定のＣＳ放送受信者に対して伝送できるようになれば、低廉なコストで、販売の促進、営業情報の迅速な伝達等を図ることができる。
技術的には、放送休止時間帯やデータ放送用のビットを利用して映像、データを伝送しても実質的な問題は発生しない。

契約関係にある特定ＣＳ放送受信者に対するＣＳ放送チャンネル利用の映像等の伝送の許容

制度の概要: 雇用契約、代理店契約、特約店契約、販売店契約等の契約関係にある特定の者に対してのみ映像等を伝送するサービスについて、ＣＳデジタル放送のチャンネルを利用して行なうためには、電波法による免許、電気通信事業法による事業許可が必要とされる。
要望内容: 雇用契約、代理店契約、特約店契約、販売店契約等の契約関係にある特定のＣＳ放送受信者に対してのみＣＳデジタル放送のチャンネルを利用して映像等を伝送することを、通常の通信事業者に要求されるバックアップ体制ほどの安全・信頼性が確保されないことを利用者が了解することを条件に、簡易な手続き、低コストで実施できるようにすべきである。
要望理由

雇用契約、代理店契約、特約店契約、販売店契約等の契約関係にある特定のＣＳ放送受信者に対してのみ通信衛星を利用して映像等を伝送することは、技術的に何ら問題ない。
簡易な手続き、低コストでＣＳデジタル放送のチャンネルを利用して映像等を伝送できれば、代理店契約、特約店、系列販売店等に対して新製品情報、営業情報、経営情報等を効率的に連絡することができる。
雇用契約、代理店契約、特約店契約、販売店契約等の契約関係にある者への伝送は、一般の電話と異なり、厳格なバックアップ体制等の安全性・信頼性は必ずしも必要ではない。

人工衛星局の無線局に関する包括免許制の導入等

制度等の概要: 現在、衛星通信無線局に関するの免許については、人工衛星局ならびにすべての地球局について審査を受けることになっている。
要望内容: 人工衛星局については、早急に包括的に免許（周波数帯など）を取得できるようにすべきである。
要望理由

サービス提供の即応性、機動性に対するユーザーのニーズが高まっているが、現在、申請前に最大３ヶ月の待機、人工衛星局の審査に約３ヶ月、その後すべての地球局の審査に２ヶ月近くもかかっている。包括的な免許であれば、人工衛星局の電波の免許は、一度の申請で済み、手続きが簡素化され、ユーザーの利便性が向上するとともに、行政側の負担も軽減される。
人工衛星局は、地球から送る電波の鏡であり、電波干渉の問題は、地球局に関する審査で対応できる。
人工衛星局間の国際調整は、別途実施済みである。

無線局設備増設時の審査の簡略化

制度の概要: 現在の制度では、ニーズの拡大に伴って無線出力装置等の無線局設備の増設を行う場合も、原則として郵政大臣の認可を受けることになっている。
要望内容: 本年４月から、無線局の検査について、民間事業者（認定点検事業者）が実質的に検査主体になれるようになったが、これと併せて、既に許可を受けた指定事項の変更を要しない無線局設備の増設の場合については、すべて届出制とすべきである。
要望理由

利用者ニーズへの迅速な対応や事業者負担の軽減の観点から、現在、電気通信事業法の一部見直し作業が進んでいるが、同時にサービス提供の重要な要素となる無線局についても、同様の観点から、増設に関する手続の簡略化・審査期間の短縮を図るべきである。
電波障害が起きて最も困るのは事業者であり、事業者は問題が生じないように万全を期している。
混信・妨害等については電波検査の際にチェックが可能であり、認定点検事業者制度を併用すれば、システム増設が届出制となっても、電波管理を適切に行いつつ、サービスニーズに迅速に対応することが可能となる。

無線局免許申請手続きの簡略化

制度の概要

現在、無線局免許申請に際しては、電波法６条の事項すべてを申請書に記載しなければならない。

＊電波法６条による申請書記載事項: 目的、無線局開設理由、通信の相手方・通信事項、無線設備の設置場所、電波の型式、希望する周波数の範囲・空中線電力、希望する運用許容時間、無線設備の工事設計および工事落成の予定期日、運用開始の予定期日（このほか無線局免許手続規則で、装置の製造業者名、型式又は名称・製造番号等の記載が義務づけ）

要望内容

重要事項（例えば電波法８条の予備免許時の指定事項等）に係る審査に必要最低限の事項のみを記載した申請書に基づいて審査を開始し、他の記載事項については、その後届出ればよいとする方向で検討すべきである。当面、無線設備の設置場所、製造業者名、型式又は名称、製造番号等については、工事落成時までに記入すれば良いとすべきである。

＊電波法８条の指定事項: 工事落成の期限、電波の型式・周波数、呼出符号、空中線電力、運用許容時間

要望理由

利用者のニーズに迅速に対応するためには、サービス提供の重要な要素となる無線局の免許に関する手続を簡略化し、審査期間の短縮を図ることが不可欠である。
電波法８条の指定事項等の重要事項を審査側が把握していれば、それ以外の記載事項は、後に提出することとしても実質的には支障がない。
例えば、無線設備の設置場所、設備の名称・製造業者の名等は、サービス提供の詳細が決まらないと確定できず、それを待っていたのでは、利用者への迅速なサービス提供はむずかしい。

周波数利用効率化のためのルールの導入

制度の概要: 携帯電話のように需要が急速に拡大して周波数が逼迫しているものがある一方、活用余地が残されている周波数もある。
要望内容: 周波数の有効利用の傾向を評価するルールの確立、周波数有効利用状況の評価を、透明性の高い形で行うとともに、周波数の効率利用を促すためのルールの導入を検討すべきである。
要望理由

携帯電話の伸びは顕著であり（現在約2950万台）、現在割り当てられている周波数でこれらの需要に対応することは困難になりつつある。一方、例えば、ＭＣＡ無線（財団法人移動無線センター等が運営）のように契約数が約80万件にもかかわらず、携帯電話用周波数（144MHz）の約半分に相当する帯域（76MHz）が割り当てられ、かなりの余裕を持っているシステムも見受けられる。
有効利用を促すルールを導入することにより、有限資源である周波数のさらなる効率的利用を図ることができる。

ＣＳデジタル放送のスポーツ専門チャンネルに関する放送番組審議機関設置の免除

制度の概要: 現在、放送事業者は、放送番組の適正を図るため、放送番組審議機関の設置が義務づけられている。
要望内容: ＣＳデジタル放送のスポーツ専門チャンネルについては、原則として、番組審議機関の設置を免除すべきである。
要望理由

ＣＳデジタル放送のスポーツチャンネルは、ＮＨＫ、民放、ＢＳと異なり、社会的影響力は小さい。
スポーツの多様化が相当進んでいるわが国においては、格闘技を除く通常のスポーツ番組については、公序良俗等の点から悪影響を及ぼすとは考えにくく、有識者が番組内容をチェックする理由は乏しい。民間自らのガイドライン、倫理規定等で自主的に対応できる。
放送番組審議機関の設置義務が免除されると、審議機関の設置、運営に関する人員、事務負担、費用等が節減される。

約款認可制の原則届出制への見直し

制度の概要: 電気通信事業法31条の２において、第一種電気通信事業者は、電気通信役務に関する提供条件に関する契約約款について、郵政大臣の事前認可を受けなければならない。
要望内容: 契約約款については、原則届出、例外認可とし、認可対象となる条項、サービス等のみを法定すべきである。
要望理由

競争分野については、利用者に不利な約款を持った事業者からは利用者が離れて他の事業者にシフトするため、通信料金と同様に、契約約款も届出制とするのが妥当である。
原則届出になれば、移動体通信など代替的サービスの出現によりサービスの改廃が弾力的に行えるとともに、ユーザーニーズに応じて新しい役務を機動的に提供できるようになる。
英米でも、契約約款は認可制にはなっていない。

ＩＴＳ（高度道路交通システム）の利活用の推進

制度の概要: ＩＴＳについては、5省庁連絡会議（建設省、警察庁、通商産業省、運輸省、郵政省）を中心に推進されており、97年度までに776億3千万円が投入されている。そのうち高速道路におけるノンストップ自動料金収受システム（ＥＴＣ）については、99年度の実用化開始を目指し、試験運用が行なわれている。
要望内容

ノンストップ自動料金収受システム（ＥＴＣ）の拡充・普及を図るとともに、ＥＴＣを通じて得られる車両の通過情報について、セキュリティや運転者のプライバシー保護のための所要の対策を講じた上で、適正な対価で民間にも提供できるようにすべきである。
また、利用者利便の向上、多様な民間事業者の創意工夫の発揮、国際協調等の観点から、設備・機器や通信仕様等については、国際標準と整合のとれたものにする必要がある。
さらに、ＥＴＣに用いられる車載器については、道路公団からの貸与でなく、利用者ニーズに対応して、多様な製品から選択できるようにすべきである。車載器に挿入するＩＣタグ（非接触型無線識別タグ）についても、標準化等によって、ＥＴＣ以外のシステム（例：車両運行管理－トラックターミナル、配送センター等の通過状況把握）との併用を進めるなど、利用者負担の軽減についても検討すべきである。
要望理由

ＥＴＣは単に料金収受の効率化のみならず、車両の通過情報を活用することによって、行政においては道路管理の効率化等に、民間においては、道路運送事業者の運行管理やカーナビゲーションでの活用等、利用範囲が大幅に広がることが期待できる。
ＥＴＣの導入に関する利用者の負担増大（車載器のリース料等）を最小限に抑え、利用者のメリットを最大限に高めるためには、国際標準化や他のシステムとの共用化を進め、多様な事業者による機器の開発を促進するとともに、利用者がＥＴＣシステムを多様な用途に活用できるようにすることが肝要である。

歳出金・歳入金の口座振替手続の電子化の促進

制度の概要: 歳入金・歳出金の口座振替を行なうためには、各省庁から紙ベースで送られてきた書類を金融機関で仕分けし、手作業でデータ入力を行なう必要がある。
要望内容: 政府においても、歳入金・歳出金の電子化の方針が示されたが、一刻も早く実現すべきである。
少なくとも行政機関内部のデータ処理が電子化されているものについては、可及的速やかに各省庁から金融機関への口座振替委託データの交付を電子化すべきである。
また、歳入金・歳出金の双方について、費目ごとに電子化のスケジュール、電子化に向けての課題を早急に明らかにすることが求められる。
要望理由: 各省庁から金融機関へのデータの入力等のために費やされる時間は、社会保険料、国税還付金、国家公務員給与等主なものだけでも年間96万５千時間にのぼる。その他、集計、確認、送付といった作業がこれに加わり、書類の搬送コスト、保管コストを含めると、情報化の遅れに伴う負担はさらに重くなっている。
政府の対応状況

●『21世紀を切りひらく緊急経済対策』(97年11月18日)
国庫金の口座振替について、国と金融機関の間の手続の電子化を推進する。特に、歳入金に係る口座振替委託データについては早急に電子化を図る。
●『行政情報化推進基本計画の改定について』(97年12月20日)
上記に加え、官庁会計事務データ通信システムの導入による統一的な官庁会計事務処理体系の早期確立を図る。

技術進歩に対応した測量法の見直し

制度の概要: 現行測量法は、測量主体の違いによって、基本測量（すべての測量の基礎となる測量で、建設省国土地理院が実施）と公共測量（政令で定める局地的測量または高度の精度を必要としない測量を除いた測量について、国または公共団体が、全部若しくは一部負担あるいは補助により実施）、基本測量及び公共測量以外の測量（基本測量または公共測量の測量成果を利用する測量のうち、政令で定める局地的測量または高度の精度を必要としない測量を除いた測量）とに区分されている（測量法第4条、5条、６条）。
基本測量あるいは公共測量の成果を複製、あるいは使用して測量を実施しようとする者は、国土地理院長あるいは測量計画機関の長の承認を得る必要がある（測量法第29条、30条、第43条、44条）。測量成果の使用承認申請書には、使用目的または当該測量の種別、使用期間、使用方法等を記入する必要がある（測量法施行規則第２条、別表第２）。なお、測量成果をそのまま複製し、もっぱら営利の目的で販売することは認められていない（第29条、第43条）。
公共測量については、測量計画機関が、観測機械の種類、観測法、計算法等を規定した作業規程を定め、建設大臣の承認を得ることとされている（測量法第33条）。その際、建設大臣は、作業規程の準則を定めることができるとされており、実質上の作業規程となっている（測量法第34条）。そのうち、例えば、現在の測量座標は、世界的な測地系（ＷＧＳ84）とは異なっている。
基本測量、公共測量、並びに基本測量及び公共測量以外の測量を請け負う測量業者は、建設大臣の登録を受けることになっており（第55条）、国土地理院に登録された測量士（学歴、実務経験、測量士試験合格などが必要）の営業所への設置が義務づけられている（第55条の13）。
要望内容

国や地方自治体が品質を認定された民間の測量成果等を柔軟に活用できる仕組みとする。
測量成果の複製・使用に関する承認について、使用目的を申請項目から除外するなど、測量成果の利活用促進に向けた制度の改正を行なう。
測量計画機関が策定する作業規程、並びに建設大臣の作成する準則を見直し、世界的測地系等に準拠したものにするとともに、測量成果の品質が確保されれば、プロセスについては最大限事業者の裁量に委ねるようにすべきである。
測量業者の営業所への測量士の設置義務について、デジタル地図の調製をもっぱらの業務とする場合など、一定の要件のもとに緩和する。
要望理由

測量技術の向上により、従来のように、公的主体が中心となって測量を行なう意義は薄れている。むしろ、一定の品質基準が担保されれば、官民双方が測量成果を相互に活用できる仕組みづくりが求められている。
測量成果の複製・使用承認については、例えば、デジタル地図をインターネット等で頒布する場合、エンドユーザーの利用目的を制限することは実際には不可能である。とりわけＧＩＳ（地理情報システム）の円滑な推進のためには、デジタル地図の自由な流通が促進されることが不可欠であり、承認制度の見直しが求められる。さらに、①と併せて、官民の役割分担、データ提供の対価等について併せて検討する必要がある。
測量技術の向上、デジタル化への迅速な対応を促すため、プロセスについては事業者の自己責任と創意工夫に委ねるべきである。例えば、記号表現については、縮尺ごとに全国一律の図式が定められているが、地域、縮尺によっては不要なものがある。コード番号の定義等について統一が図られていれば、必ずしも一律の図式を定める必要はない。測量成果の品質の確保については、測量器械の精度の表示等、事業者による情報開示の充実や測量成果そのもののチェックで足りる。また、例えばＧＰＳ等の衛星による位置データ取得を行なう際、作業規程における座標系等が世界的測地系に準拠していなければ、修正データを入力する必要があり、余分なコストが生じる。
測量技術の向上、デジタル化の進展に伴い、測量士を設置させる義務は薄れている。新技術の活用による測量業者の負担軽減、測量コストの低減のため、デジタル地図の調製を専門とする場合など、測量士の設置義務を緩和することが求められる。

郵便事業への民間参入

制度の概要: 信書の送達は、郵便法第５条の規定に基づき、国(郵政省)の独占とされている。
要望内容: 97年12月の行政改革会議最終報告においては「郵便事業への民間企業の参入については、その具体的条件の検討に入る」とされており、早期に検討に着手し郵便事業への民間事業者の参入を可能とすべきである。
要望理由: 郵便法制定時と現在は様相が相当変化している。全国組織を有する民間事業者もあり、郵政と何ら遜色のないサービス提供が可能である。民間事業者が参入して官民が競争をすることにより、利用者に対するより良いサービスの提供が期待される。

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