活力溢れる経済社会の構築に向け、改革を進める

− 経団連会長 新年メッセージ −

2002年1月1日
(社)経済団体連合会
会長 今 井  敬

 わが国は、小泉内閣のもとで、「聖域なき構造改革」を進めているが、デフレのなかで失業率が上昇するという、産みの苦しみともいえる状況に直面している。しかし、痛みを恐れ、改革を先送りすれば、真に民主導の活力溢れる経済社会を創る好機を逸し、経済の長期的な低迷を招くことになる。不退転の決意で構造改革を進め、グローバル化や少子高齢化といった内外の大きな環境変化に柔軟に対応できるよう、経済体質を強化していく必要がある。日本経済の再生は、諸外国からも強く期待されており、改革の推進は国際社会におけるわが国の責務でもある。

 企業は、自らの責任と努力で、不良債権及び過剰債務の処理の迅速化、企業組織の再編を進めるとともに、新産業・新事業の開拓、技術開発の推進に積極果敢に取組み、国際競争力を強化していかなければならない。

 政府は、「官から民へ」という流れに沿って、国、地方を通じた行財政改革を徹底し、経済活動に対する政府の関与を排除していく必要がある。特に、歳出構造、社会保障制度、税制を一体とした財政構造改革、思い切った規制改革や特殊法人改革などを進めると同時に、事後チェック型の市場重視の法制、制度を確立していくことが重要である。

 改革を通じ、生産性の低い分野に滞留している経済資源が、生産性の高い分野に再配分されるとともに、国民の将来に対する不安が払拭されていけば、日本経済が持つ高い潜在力に見合った成長を実現していくことが可能になる。

 今年は、まさに構造改革の正念場とも言うべき重要な年である。経団連は日経連との統合により、強力な政策提言能力と実現能力を有する総合経済団体を目指していく。改革を支援し、意欲と能力のある全ての個人や企業が、独創性、創造性を大いに発揮し、自らの夢を実現できるような、魅力あるビジネス環境の整備に向け、全力をあげて取組む決意である。


(参考資料)

2002年の主要政策課題

  1. 簡素で効率的な政府の実現
    1. 行財政改革の推進

      1. 国・地方を通じた歳出構造、社会保障制度、税制を包括した財政構造改革のグランドデザインの確立
      2. 官民の役割分担の徹底、市町村合併の推進等、国・地方を通じた行政改革の推進
      3. 経済の活性化と国民利便の向上に向けた規制改革の断行

    2. 持続可能な社会保障制度の実現

      1. 持続可能な医療保障制度の構築(高齢者医療制度の見直し、保険者機能の強化等)
      2. 公的年金制度の再構築
      3. 企業年金制度の自由度の拡大・選択肢の拡充(特別法人税の撤廃、厚生年金基金の代行部分の返上早期化等)

    3. 抜本的な税制改革の推進

      1. 連結納税制度の早期導入
      2. 法人税・所得税の一層の改革
      3. 国・地方の税源配分の見直しを含めた地方課税の抜本改革
      4. 持続可能な社会保障制度の構築のための消費税の拡充

  2. 新たな成長基盤の確立
    1. 金融資本市場の活性化、金融システムの維持・強化

      1. 公的資本注入等も視野に入れた不良債権処理の迅速かつ適切な推進
      2. 証券取引を包括的に監視する日本版SECの創設
      3. 投資優遇という観点からの包括的な金融課税の改革
      4. 証券取引における決済期間の短縮を含むシステムの改善

    2. IT革命推進のための環境整備

      1. 情報通信分野における競争促進
      2. 通信・放送の融合への対応
      3. 国・地方を通ずる「一つの」電子政府の実現
      4. ブロードバンド関連ビジネスの環境整備
      5. IT人材育成の強化

    3. 戦略的・効率的な社会資本の整備

      1. 交通・物流に係るインフラの重点的整備(大都市圏の環状道路、拠点空港等)
      2. 生活・居住空間、業務・商業空間、防災拠点等の都市基盤整備
      3. PFIの積極的活用

    4. 科学技術・産業技術の強化に向けた総合的・計画的な政策の推進

      1. 総合科学技術会議による戦略的・総合的な科学技術政策の推進(ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料、IT宇宙インフラなどの先端的分野を中心に)
      2. 産学官連携の強力な推進
      3. 戦略的な知的財産政策の推進

    5. 新産業・新事業の環境整備

      1. インキュベーション機能の強化
      2. 起業家ならびにベンチャー支援人材の育成の強化
      3. ベンチャー支援税制の拡充

    6. 円滑な労働移動の推進、雇用創出機会の拡大

      1. 官民が協力・連携したセーフティネットの整備
      2. 求職者の早期就職実現と雇用保険財政の健全化
      3. 規制改革、既存産業の活性化等による雇用機会の拡大

    7. 法制改革の推進

      1. 国際競争力強化へ向けた商法大改正の推進
      2. 自己責任社会のインフラとなる司法制度改革の着実な実現

    8. 教育改革の推進

      1. 創造的で国際的な人材育成のための複眼的・複線的な教育システムづくり(競争原理の導入、大学改革の推進、教育の情報化の推進等)
      2. 高い道徳性と社会性を培う教育と社会の実現

  3. グローバル化への対応
    1. 地球環境問題への対応と循環型社会の推進

      1. 経済活動と調和のとれた地球温暖化対策の積極的な推進
      2. 循環型社会に向けたソフト面(規制緩和等)、ハード面(リサイクル施設、廃棄物最終処分場等)の一体的整備
      3. リスクに応じた土壌保全対策の推進

    2. 国際ビジネスの拡大と深化に向けた環境整備

      1. 通商政策のグランドデザインの具体化とその推進
      2. WTO新ラウンド交渉への取組みの強化
      3. 自由貿易協定(FTA)の積極的推進(メキシコ、韓国など)
      4. 日米経済関係の一層の緊密化の推進
      5. アジアとの経済連携の強化
      6. 開発途上国への効果的なODA実施のための官民連携

以 上

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