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企業の活力で新たな発展の時代を目指す

〜日本経団連会長新年メッセージ〜

2004年1月1日
(社)日本経済団体連合会
会長 奥田 碩

バブル崩壊後、長期の低迷を続けてきた日本経済にも、輸出環境の改善と設備投資の回復を背景に、ようやく明るさが見え始めてきた。本年は、個人消費や住宅投資を喚起し、内需中心の持続的な成長を確実なものとしていかなければならない。

その鍵を握るのは企業の活力である。各企業が、不断の経営改革と質の高い多様な人材の育成を行いながら、新たな需要の創造につながる魅力ある新製品・サービスの開発に果敢に取り組み、攻めの企業戦略を強化していくことを強く期待する。同時に、不祥事や事故の防止に向け社内体制の総点検を行うとともに、良き企業市民として、主体的に社会的責任を果たしていくことを求めたい。

企業の活力を存分に引き出すためには、少子化・高齢化、グローバル化、情報化といった内外の劇的な環境変化に対応できなくなっている「官主導・キャッチアップ型経済社会」の抜本的改革が不可欠である。そこで、昨年、われわれは、「多様性のダイナミズム」と「共感と信頼」を基本理念とする、新ビジョン「活力と魅力溢れる日本をめざして」を公表し、「民主導・自律型経済社会」の確立の必要性を訴えるとともに、具体的な処方箋を示した。

しかし、経済社会の改革は、政治の強いリーダーシップなしには実現し得ない。政策の立案から実行に至るすべての過程で、政治が、より中心的な役割を果たしていかなければならない。そして、企業には、社会的責任の一端として、政策本位の政治の実現への協力が求められている。こうしたことから、日本経団連は、政治と経済との間の、透明で緊張感ある新たな関係の構築に向け、以下の10項目の「優先政策事項」を公表するとともに、「企業の自発的政治寄付に関する申し合わせ」を行った。今後、各政党の政策評価を公表し、企業・団体による自主的な政治寄付の参考に供する予定である。

日本経団連は、政治と正面から向き合いながら、新ビジョンの実現に引き続き全力で取り組む。目の前の道は険しいが、これを乗り越えることで、必ずや新たな発展の時代を築くことができると確信している。


〔優先政策事項の概要〕
1.経済再生、国際競争力強化に向けた税制改革
法人実効税率を少なくとも欧州主要国並に引き下げるとともに、租税負担と社会保障負担を合わせた企業の公的負担を抑制する。
2.将来不安を払拭するための社会保障改革
社会保障、財政、税制を一体的に改革するなかで、潜在的国民負担率を将来に渡り50%以下に抑制する。この一環として、消費税率の引き上げを検討する。
3.民間の活力を引き出すための規制・行政改革
大胆かつ速やかに規制改革を進めるための体制を整備するとともに、特殊法人・公社等の改革、公務員制度改革など、行政改革を推進する。また、国際競争力強化に向けた、競争政策の適正化、商法改正を実現する。
4.科学技術創造立国の実現のための環境整備
先端技術の開発とその産業化・普及の促進に努めるとともに、知的財産政策や国際標準化政策の強化、産官学の連携などの施策を戦略的に進める。
5.エネルギー戦略の確立と産業界の自主的取り組みを重視した環境政策の推進
総合的なエネルギー戦略を確立し、原子力を活用しつつ、エネルギー源の多様化、ベストミックスを進める。また、地球温暖化防止のため、産業界の自主的取り組みを尊重した政策を推進する。
6.心豊かで個性ある人材を育成する教育改革の推進
教育の質の向上と教育現場の活性化をはかるため、思い切った規制改革を進め、教育現場に競争原理と評価制度を導入する。
7.個人の多様な力を活かす雇用・就労形態の促進
労働市場・労働基準に関わる規制の改革、民間による職業紹介・能力開発の積極活用、雇用保険三事業の抜本的な見直しをはかる。さらに、女性と高齢者の積極的活用をはかり、外国人の受け入れ体制を整備する。
8.活力とゆとりを生み出すための都市・住環境の整備
大都市圏の交通・物流など都市基盤を戦略的・効率的に整備する。また、住宅関連の税負担を軽減するとともに、住宅取得支援税制を拡充する。
9.地方の自立を促す制度改革と活性化対策の推進
地方の行財政改革の推進とともに、財政基盤と自己責任原則の確立をはかる。また、州制導入を視野に、地方の税財政の抜本的な見直しや自治体の合併を進める。さらに、地域活性化に向け、中小企業の活力の強化、観光の振興をはかる。
10.グローバル競争の激化に即応した通商・投資・経済協力政策の推進
WTO新ラウンド交渉の早期一括合意に努めるとともに、二国間の経済連携協定を推進する。この一環として、農業分野の構造改革を進める。さらに、政府開発援助(ODA)を国益重視の視点から活用する。
以上

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