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シンポジウム「温暖化対策と成長戦略」
御手洗会長開会挨拶

2007年5月22日(火) 13時30分〜17時30分
経団連会館 14階 経団連ホール

  1. 経団連の御手洗です。本日は、お忙しいなか、多数の方々にご参加頂きましてありがとうございます。主催者の一人として、厚くお礼申し上げます。

  2. 改めて申しあげるまでもありませんが、気候変動問題は、地球規模での対応が必要な最重要課題の一つとして、議論が高まりつつあります。
    国際的には、1992年に締結されました国連の気候変動枠組条約、そして1997年の京都議定書を中心に、これまで各国の取り組みが進められて参りました。
    しかし、京都議定書には、米国、中国、インドなどの主要排出国が参加していない、あるいは削減義務を負っていないなどの問題があります。
    そこで、最近では、G8サミットでも、エネルギーと気候変動問題を重要なテーマとして取り上げるようになっております。
    また、APP・アジア太平洋パートナーシップなど、国連の取組みを補完する多様な取組みも展開されるようになってまいりました。

  3. 温暖化防止にとって重要なことは、あらゆる国と地域において、個人を含むすべての経済主体が、自らの問題として、果たすべき役割を認識し、省エネや温室効果ガスの排出削減を実践していくことであります。
    企業としても、気候変動問題への取り組みを積極的に推進して参らなければならないと考えております。

  4. 気候変動対策には、様々な手法がありますが、一律に適用しうる万能の対策があるわけではありません。
    キャップ&トレードによる排出権取引をはじめ、各地で様々な手法が試みられていますが、重要なのは、各国・地域や業種・企業それぞれの実情に応じて、最適な対策を自ら選択し、最大の成果を上げていくことであると存じます。
    日本では、自らの努力による排出削減が基本であるとの立場から、民間の自主性と活力を最大限に活かした温暖化防止活動を展開し、自主行動計画を中心に成果を上げて参りました。

  5. とくに、プレッジ・アンド・レビューによってCO2排出の削減を図る環境自主行動計画は、参加企業の努力の結果、6年連続で目標を達成しております。
    自主行動計画は、産業部門およびエネルギー転換部門からの参加業種のCO2排出量が、わが国全体の排出量の40%以上、産業ならびにエネルギー転換部門全体の80%以上をカバーしており、日本の国内対策において重要な役割を担っているわけであります。
    自主的取り組みの長所の一つは、各業種の多様かつ複雑な実態を最もよく把握しているそれぞれの事業者が、最も有効で費用対効果の高い対策を実施できる点であると思います。

  6. こうした企業の温暖化対策において、鍵となるのは、やはり技術の活用と技術革新であります。
    わが国は、石油ショック以来の絶え間ない技術革新の結果、今日、多くの分野において、世界に冠たる省CO2水準を達成することができました。
    しかし現状に満足するのではなく、これまでの経験と成果を活かして、技術開発・普及の一層の促進に努めて参りたいと考えております。

  7. 6月のG8ハイリゲンダム・サミットに先駆けて、先月25日に、G8各国の主要経済団体トップによる「G8ビジネス・サミット」が「成長と責任」をテーマにベルリンで開催され、私も参加致しました。
    このビジネス・サミットでも、「成長と環境保護」が重要テーマとして取り上げられ、経済界の果たすべき役割について議論されましたが、やはり焦点となったのは、環境効率を改善する技術の推進でありました。
    このG8ビジネス・サミットで取りまとめました共同宣言では、エネルギー効率の大幅な改善が、長期的に先進国・途上国共通の利益に適うとの認識のもと、エネルギー効率の改善と、新技術の導入促進の必要性を指摘いたしました。
    国際エネルギー機関(IEA)においても、省エネルギーがCO2削減に大変大きな効果を発揮するとの報告がなされております。

  8. 今後の温暖化対策においては、企業の活力を活かし、技術革新や設備投資をさらに促進していくことが必要であると存じます。
    「市場メカニズムの活用」の重要性が指摘されますが、これは本来、競争原理に基づいて各企業が省エネや低炭素型の製品・サービスの開発、提供を推進し、それらがユーザーや社会から評価・選択されることであると考えます。
    こうした市場の機能を通じて、企業の温暖化対策が強化されるという好循環を形成していくことが重要であると存じます。

  9. また、自国の排出削減に止まらず、コストパフォーマンスの確認された技術を途上国に移転するなど、地球規模での温暖化対策を支援していくことが必要であります。
    例えば最近、APPのように、業種ごとに技術の普及などを進めるセクトラル・アプローチが注目されておりますが、まさに産業界の知見の共有と普及を効率的に推進するものであり、実効ある温暖化対策に繋がると期待しております。

  10. 本日は、日英両国の各部門を代表する企業の方々から、様々な事例をご紹介いただくわけですが、産業界の活力をいかした枠組の下でこそ、経済と環境が両立する持続可能な社会を実現しうると確信しております。
    本日のシンポジウムが、業界の垣根を越えて、今後の積極的な取り組みの一助となりますことを祈念致しまして、私のご挨拶と致します。
    ご清聴ありがとうございました。

以上

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