[ 日本経団連 | コメント/スピーチ ]

日本経団連総会における御手洗会長挨拶

−日本経済団体連合会第6回定時総会−

2007年5月23日(水) 午後2時〜3時30分
於 経団連会館 14階 経団連ホール

  1. 会員の皆様方には、ご多忙のなか、日本経済団体連合会の「第6回定時総会」にご出席いただき、誠にありがとうございます。
    平素より、当会の活動に対しまして、ひとかたならぬご支援、ご協力を賜り、あらためて、厚くお礼を申し上げます。

  2. 本日の定時総会をもちまして、会長として2年目の活動に入るわけでありますが、この一年を振り返りますと、日本経済、そして経団連にとりましても、大きな動きのあった一年であったと思います。
    昨年9月に発足した安倍内閣は「成長路線」を旗印に掲げ、発足して一年にも満たないなかで、地方分権、教育基本法、公務員制度改革はもちろん、防衛庁の省昇格や国民投票法など、国の根幹となる諸制度の改革に取り組まれ、数々の成果を挙げられました。
    加えて、電撃的な訪中を実行し、「政冷経熱」といわれた中国との関係改善に取り組み、実に6年半ぶりとなる中国首相の来日と日本での首脳会談を実現いたしました。
    経済面においても、雇用情勢は堅調に推移を続け、個人消費にも回復の動きが見られております。世界経済の拡大により輸出は増勢を強める見込みであり、「成長路線」の成果が、国民の目に見えるかたちで具現化しつつあると考えております。

  3. こうしたなか、私にとりましても、大変刺激的な一年でありました。企業経営の現場から離れて、政治や行政と直接向き合う活動は、まさに挑戦に次ぐ挑戦でございました。
    技術開発、地域活性化、税制、経済連携協定、社会保障、労働市場などは、この国の輝く未来に向けて、避けては通れない課題であります。これらの課題に全身全霊を傾けて取り組みました。
    そして、その一つの成果として、本年1月には新ビジョン「希望の国、日本」を世に問い、私なりのこの国のかたちをお示ししたわけであります。
    その根底には、「誰もが挑戦の機会を与えられる社会、努力して成果をあげた人が報われる社会でなければならない。そうした真に公正・公平な社会システムをつくりあげていくことが、国際競争力を持ち続けるために不可欠である」という哲学を貫いております。

  4. 世界を見渡しますと、情報通信技術や輸送手段の高度化、また経済連携協定の拡大などにより、グローバル化がさらに加速し、世界はネットワーク化された大きな市場になろうとしております。
    日本も、ここで遅れをとるわけにはまいりません。外に向けては、ドーハラウンド交渉の推進を通じたWTO体制の強化に引き続き取り組むとともに、アジア太平洋地域とのネットワーク形成を加速させ、また、内に向けては、聖域を設けることなく国内の構造改革に取り組むことが求められます。
    私は、経団連会長の立場で、この一年間に、アジアを始め、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、中東の計14カ国を訪問し、各国の政治・経済の情勢などにつきまして、首相や経済閣僚、経済人と直接話し合う機会を持ってまいりました。
    こうした話し合いを通じて、私は、世界同時好況というきわめて稀な現実を実感するとともに、競争力強化に邁進する各国首脳の強い意志と姿勢に、国の未来を考える座標軸をみる思いがいたしました。
    そして、日本がとるべき道は、世界に目を向けた「成長路線」であるという考えを、一層強くいたしました。

  5. 一方、国内においては、人口減少社会の到来が現実のものとなっております。国民の将来不安を払拭するためにも、引き続き成長力強化と歳出の効率化・合理化を車の両輪として、成長の持続可能性を確保していかなければなりません。
    その際、経済の活力を高め、成長の牽引車となりうるのは、民間の活力であります。
    経済界としては、生産性のさらなる向上やワークライフバランスの実践に努めるとともに、日本が強みをもつ製造業の分野での国際競争力をさらに強化するため、先端技術開発に取り組まねばなりません。
    製造業以外の分野においても、一層の生産性向上に努めるとともに、高品質のサービスを提供することが、強く求められているものと考えております。
    生産性の向上と裏表の関係にある雇用問題も、将来のために、いま、取り組まなければならない重要課題であります。
    保育サービスの充実などで子育てに勤しむ女性が社会参加しやすくすることや、就職氷河期と言われる時代に不幸にして職を得られなかった人々への就労支援などが早急に求められております。
    こうした取り組みは、この国の最大の課題である少子化対策にもつながるものであり、私としても重点的に取り組みたいと考えております。

  6. 昨今指摘されている地域間格差に関しましては、国民に豊かさを実感してもらうためにも、地域の自立と活性化を基軸とする効果的な施策を早急に打ち出していかなければなりません。
    私は、この一年、全国各地の経済界と意見交換の機会をもち、生の声を聴くことに努めてまいりました。
    好調な地域もあれば、頑張っているのに苦しい地域もございました。また、地域全体としては回復傾向にあっても、景気の良い県もあれば、回復が遅れている県もあるというのが現実でありました。
    各地域がそれぞれの特色を活かしつつ、自らの責任と権限のもとに広域経済圏の創出を目指して取り組む。それこそが、地域の人々の活力を引き出し、日本全体の活力につながるはずであります。
    そこで、私の持論である道州制の導入を投げかけてみましたところ、多くの方々から前向きの反応を伺うことができました。
    それぞれの地域が、自立に向けての強い意欲を示されたことに、大いに勇気付けられたものであります。
    道州制について議論を進めることは、国民をまきこんで、「究極の構造改革」を議論することに他なりません。
    引き続き、道州制の導入に向けて、前向きな議論を進めていきたいと考えております。

  7. いま、日本経済は、確かな足どりで回復から拡大へと向かっております。「失われた10年」は終わりました。われわれはいま、新しいスタート地点に立っております。
    日本経済を取りまく世界的な潮流変化に対応し、将来に立ち向かっていくために、ここで立ち止まることなく、創造的な視点をもって、自らの意志と力で構造改革に取り組まなければなりません。
    そして、民間や地方の活力をさらに引き出すことを通じて、日本経済をより高い成長軌道に乗せていくことが重要なのであります。

  8. 課題は山積しております。一つ一つの課題について、関係する多くの方々との議論を深め、実行につなげていくことを、二年目の経団連運営の規範にしたいと考えております。
    経団連の政策提言が、経済界のみならず、広く国民の理解と共感を得るものでなければ、政治を動かし、真の改革を実現することはできません。
    各種の政策委員会の活動をより一層、活性化するとともに、新たな体制となった21世紀政策研究所との連携を深め、経団連は、さらに強力な政策集団となることを目指します。
    その際、政治と経済が車の両輪となって改革を推進していくため、政策を機軸として政治との関係をより一層、強化していく所存でございます。
    あわせて、政策本位で政党への支援を高める観点から、政党の政策評価を引き続き実施するとともに、これに基づく企業の自発的な政治寄付を推進してまいります。会員の皆様方に、なお一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。

  9. 最後に、企業倫理の徹底について、お願いを致したいと思います。
    これまで経団連が、繰り返し、企業倫理の徹底を求めてまいりましたのは、民主導によるわが国の経済・社会の活性化を図るためであります。
    すなわち、小さく効率的な政府を実現し、企業が自由に活動できる環境を整備するためには、これまでにも増して企業経営者に高い倫理観が求められるからであります。
    経団連では先頃、3年ぶりに企業行動憲章の実行の手引きを改訂いたしました。
    そのなかで、「企業活動は、社会の信頼と共感なくして成り立たない。経営トップが先頭に立ち、社会からの批判に襟を正し、法令を遵守し、企業倫理を確立し、CSRに取り組むことが、組織存続と企業価値向上の基本であることを再確認する必要がある」、ということを強調しております。
    経営トップの皆様方には、社会の声を企業経営に取り入れ、社員が胸を張って生き生きと働ける環境づくりに率先して取り組まれますよう、あらためて、お願い申し上げます。
    以上をもちまして、私からのご挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

以上

日本語のホームページへ