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日本経団連総会における御手洗会長開会挨拶

−日本経済団体連合会第8回総会(定時総会)−

2008年5月28日(水) 午後2時〜4時
於 経団連会館 14階 経団連ホール

会員の皆様方には、ご多忙のなか、日本経済団体連合会の「第8回総会」にご出席をいただき、誠にありがとうございます。
また、平素より、当会の活動に対しまして、ひとかたならぬご支援、ご協力を賜っておりますことに、改めて厚くお礼を申し上げます。
私自身も、本日の定時総会をもちまして、会長に就任いたしましてから、ちょうど2年になりました。
これからの日本に思いをいたしますとき、この国は、まさに「改革実現」の時期にあるということを実感しております。民間の活力を最大限に引き出し、生み出された付加価値を、国民生活の豊かさとして実感していただけるようにしなければなりません。
そのためにも、この国の未来について、明確な目標を国民と共有しつつ、自らが行動して改革の牽引役となるという気概を持って、経団連活動を展開する必要があります。会員の皆様方には、なお一層のご理解とご協力をいただきたいと存じます。

さて、2年間を振り返りますと、非常に短く感じたというのが率直なところでありますが、この間、大変多くの出来事がありました。日本経済にとりましても、経団連にとりましても、大きな動きのあった2年間であったと思います。
2006年に会長に就任いたしましたときは、バブル崩壊後から続いた不良債権などの処理が一段落したところであり、将来に向けて、構造改革を通じた新しい経済社会の創造が求められておりました。
そこで私は、翌年1月に、この国の輝かしい未来に向けたビジョンを発表いたしました。経営計画の手法を取り入れ、10年後のあるべき姿を目標として示し、その実現に向けた方策を、5分野19項目の優先課題に整理し、さらにアクションプログラム2011として114の具体的な取組み課題を提言したところであります。

また、今年の初めにも、「成長創造〜躍動の10年へ〜」と題した新年メッセージを発表し、ビジョンを踏襲する形で政策のアップデートを行いました。
この中では特に、全体の改革を加速度的に進めることを期待して、大きな波及効果を有する3つの先行プロジェクトの実施を提起いたしました。すなわち、(1)世界最先端の電子政府・電子社会の構築、(2)低炭素社会確立に向けたイニシアティブの発揮、(3)道州制につながる広域経済圏の形成、であります。

このように、ビジョンや新年メッセージで掲げた重要課題を軸に、各界との透明で公正な関係の構築に努めながら、精力的に活動を行ってまいりました。これまでの活動を総じて申し上げると、経団連としての活動を行うに当たっての「ポリシー」を確立し、改革に着手した期間であったと思います。

皆様方のご協力により、いくつかの具体的な成果を得ることもできました。
例えば、減価償却制度については40年振りの大改正が行われましたし、研究開発税制も拡充され、イノベーションの加速に向けた環境の整備が進んでおります。
また、アジア諸国を主な対象とする経済連携協定(EPA)の締結の輪も広がってまいりました。
加えて、国内各地で、究極の行政改革である道州制の導入に向けた気運が高まってまいりました。
ワークライフバランスの改善への取組みでも、従業員の人生設計に応じたさまざまな働き方の仕組みを導入したり、企業内保育所を設置したりする企業が増えつつあるなど、自主的な少子化対策も図られております。
さらには、ジョブカードの導入や直接雇用・均衡待遇の促進、生産性向上の成果の適切な分配などについても、自主的な取組みを促進してまいりました。

こうした一方で、深刻な財政赤字や社会保障制度に対する不信を背景として、国民の間に広がる将来への不安感が払拭されていないのも事実であります。国会情勢の難しさもあって、税制や社会保障制度の抜本的な改革は手付かずの状態であり、多くの課題が積み残しのままになっていることは、極めて残念というしかありません。
現在、わが国は大きな変化の渦中にあります。グローバル化の加速に伴って、資源・エネルギー価格の高騰や地球温暖化問題への対応、国際金融不安と米国経済の減速など、企業の経営環境は一層厳しさを増してきております。
政治の混乱に起因する改革の停滞により、スピード感が必要とされる様々な重要課題について、議論を店晒しにしたり、改革の流れを逆行させたりするのは許されないことだということを、強く認識しなければなりません。

改革の遅れは、将来に対する悲観的な見方につながります。われわれは、未来の世代に対する責任を果たさなければなりません。閉塞感を打破し、すべての人が将来の安心・安全を確保できるよう、民間や地域の活力を最大限に引き出して、持続的な経済成長を確保することが不可欠であります。改革のスピードを上げなければなりません。立ち止まる余裕など、ないのであります。
冒頭申し上げましたとおり、現在、この国は「改革実現」の時期にあります。経済界も、明確な目標を国民と共有しつつ、自らが行動して改革を牽引してゆかなければなりません。
そのためにも、まずは、5つの施策に取り組みたいと考えております。

10年以内に世界最高の所得水準を達成できるよう、第一にイノベーションを加速して成長力を強化する、第二にEPA・FTAの締結を通じ 世界経済のダイナミズムを日本に取り込む、第三に道州制を導入して日本全体の豊かさを向上させる、第四に事業環境の整備を進めることで企業の活力を高める、そして第五に、公的部門の改革によって国民の安心・安全を確保する。
こうした施策によって、改革を着実に実現させたいと考えております。
技術で夢を語れるような世界を作り上げることが第一歩となります。世界最先端の電子政府・電子社会の構築を皮切りに、国際的な産学連携などの巨大プロジェクトを立ち上げ、最新技術の連携を進めてイノベーションを加速することも一案であると思います。
また、アメリカやEUなど主要国とのEPA締結を進めることで、人・モノ・資金という、資源の自由な移動や市場の拡大を確保することが可能となり、グローバル化のメリットを存分に活かすことができます。
さらには、省エネルギー、原子力、再生可能エネルギー等における日本の強みを活かして低炭素社会を自ら実現することで、洞爺湖サミットの議長国として、国際的な枠組み作りの議論をリードしていくことも必要であります。
加えて、法制度などの事業環境を整備することで、潜在力を最大限に引き出し、国際競争力を強化することも考えられます。

申し上げましたように、政治情勢などを背景にして、社会保障制度改革も念頭においた税制抜本改革が先延ばしになっていることは、極めて大きな問題であります。社会保障費の増大に対応する財源の確保は、国の命運を左右する一大課題であります。それだけに、国民が安心と安全を確保できるよう、消費税の拡充を含め、計画的かつ中長期的な改革プログラムを設定した上で、国民に対して真摯な態度で丁寧に説明を行い、理解を求めていくことが必要であります。
明確な目標を各界各層が共有することが大事であり、その上で初めて、社会全体が大きな動きを始めるのであります。

経団連としても、各種の委員会活動をより一層活性化することで、改革の牽引役として強力な政策集団であり続けたいと考えます。そのためにも、経団連の政策提言は、経済界のみならず、広く国民や政治の理解と共感を得るものでなければなりません。そうでなければ、真の改革を実現することができないからであります。
また、周囲に要望するだけでなく、自らが率先して行動し、模範となるような取り組みが必要となります。われわれ自身も、企業倫理の一層の確立だけでなく、社会的責任を十分に果たし、さまざまなステークホルダーにフレンドリーな存在となるよう努めなければなりません。

日本と、この国の国民一人ひとりの将来のために、今後とも、経団連の総力を結集して諸課題に取り組みたいと思っております。会員の皆様に、重ねてのご理解とご協力をお願い申し上げ、私からのご挨拶とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。

以上

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