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日本経団連総会における御手洗会長開会挨拶

−日本経済団体連合会第10回総会(定時総会)−

2009年5月28日(木) 午後2時〜4時
於 経団連会館 2階 経団連ホール

会員の皆様方には、ご多忙のなか、日本経済団体連合会の「第10回総会」にご出席をいただき、誠にありがとうございます。
また、平素より、当会の活動に対しまして、ひとかたならぬご支援、ご協力を賜っておりますことに、改めて厚くお礼を申し上げます。

本日は、新しい会館に移転してからの初めての総会であり、このように皆様にお集まりいただいて開催できますことを、大変喜ばしく存じます。
私自身、本日の定時総会をもちまして、会長に就任いたしましてから、ちょうど3年が経過いたしましたが、日本は、今、歴史的な岐路にあると感じております。
世界中が経済危機に直面する中で、民間の活力を中心とする日本の潜在力を最大限に引き出し、希望の国を造り上げる必要があります。そのためにも、この国の未来について、明確な目標を国民と共有しつつ、自らが改革の牽引役となるという気概を持って、活動を展開していきたいと考えております。
会員の皆様方には、なお一層のご理解とご協力をいただきたいと存じます。

さて、これまでの3年間を振り返りますと、日本経済にとりましても、経団連にとりましても、大変多くの出来事がありました。
率直に申しまして、この3年間は直面する政策課題に息つく間も無く取り組み、全力疾走で駆け抜けてきた思いがしております。
会長就任の翌年1月には、この国の輝かしい未来に向けたビジョンを発表し、10年後のあるべき姿と、その実現に向けた方策を、5分野19項目の優先課題に整理いたしました。その上で、アクションプログラム2011として114の具体的な取組み課題を提言しております。
これを受けて、昨年の初めには、「成長創造〜躍動の10年へ〜」と題した新年メッセージを発表し、政策提言のアップデートを行いました。

これらに基づき、各界との透明で公正な関係の構築に努めながら、精力的に活動を行ってまいりました結果、皆様方の絶大なるご協力を得て、多くの具体的成果をあげることができました。
主なものとしては、研究開発・投資促進税制が拡充され、イノベーションの加速に向けた環境整備が進んでおります。
アジア諸国を主な対象とする経済連携協定(EPA)の締結も促進されました。
また、ジョブカード制度の創設や事業所内保育所の拡充といった少子化対策や雇用対策も進んでまいりました。

そうした中で、一昨年夏以降の米国に端を発するサブプライム・ローン問題を受けて、経済情勢は激変いたしました。金融・経済危機を克服するため、財政規律を求める姿勢から財政投資への動きを求めるなど、政策の方向転換を行なわざるを得ない状況に陥りました。
そのような環境変化の中にあっても、経団連といたしましては、柔軟に対応することで、迅速かつ的確な主張を行なってまいりました。
その結果として特筆すべきは、何と言っても、現下の金融・経済危機に対して、わが国が、需要や雇用の創出につながる政策を矢継ぎ早に打ち出し、景気の底割れの回避に努めたことであり、そうした中にあって、経団連の要望がほとんどそのまま政府の経済対策に反映されている点であります。
また、先月イタリアで開催されたG8ビジネス・サミットにも参加いたしまして、わが国の対応を説明するとともに、主要国経済界との連携を深めるなど、国際関係でも着実な前進が得られております。

しかし、当然ながら、まだまだ重要な課題は山積しております。
国際的な金融システム不安はいまだに完全に収束するには至らず、国内外の主要な経済指標も、依然として厳しい数値を示しております。
われわれは、このような難局にひるむことなく、将来を見据えた大胆な経済政策を速やかに実行するとともに、不退転の決意で経済社会の構造改革を推進しなければなりません。
まず、最も重要なことは、あらゆる政策を総動員して、経済を持続的な成長軌道に回帰させることであり、経団連といたしましても、成長力強化に資する骨太な政策を、今後も積極的に打ち出してまいります。
特に、雇用の安定と創出に向けては、政労使の一致協力した取り組みを進め、例えば、雇用調整助成金の活用や、新規事業やサービスによって雇用の創出を図るなど、企業としても最大限の努力を惜しまない覚悟であります。

一方で、従業員の人生設計に応じたさまざまな働き方の仕組みを導入し、選択肢を増やすことで、生産性の向上や労働の効率化を図る取り組みも必要となっております。例えば、家族と共に過ごす時間を増やし、ゆとりのある生活を送るなど、世界に先駆けて少子化・高齢化・人口減少社会にも対応した成長モデルの確立を目指すことも重要になっていると存じます。

また、今年はポスト京都議定書の国際枠組みを巡る交渉が山場を迎えることから、地球温暖化問題に対する関心が世界的に高まっております。経済界といたしましては、引き続き、自主行動計画を着実に推進し、CO2排出量の削減に積極的に貢献してまいる所存であります。
その上で、新たな枠組み作りにおいては、環境と経済の両立、主要排出国の全員参加が基本原則であり、削減負担の国際的公平性、実現可能性、国民負担の妥当性を踏まえた実効ある仕組みとすべきことを強く主張しております。

さらに、究極の行政改革ともいえる道州制の導入に向けて、国民運動を推進し、各地でシンポジウムを開催するなどして、気運を高めてまいりたいと存じます。
現状では、導入の道筋が明らかになるまでには、まだまだ乗り越えるべき課題も多く、時間を要することとなります。そのため、かつての第二次臨時行政調査会、いわゆる土光臨調のように、集中して大議論をするための場を設定し、あらゆる角度から検討を深めることも一案であると考えております。

国際関係につきましては、特に、世界経済の成長センターであるアジアとの連携を強化する必要があります。貿易・投資の促進に努めるとともに、経済統合の推進と域内の有効需要創造に資するような戦略的な協力関係を構築することが重要であります。
そのためにも、例えば、アジア・ビジネス・サミットを開催し、各国経済界首脳が一堂に会して、共通の課題について、継続的に議論することも有意義ではないかと考えております。

また、国会情勢の難しさもあって、税制や社会保障制度の抜本的な改革は手付かずの状態であり、深刻な財政赤字や社会保障制度に対する不信が、中長期的な課題として積み残しになっていることは、極めて残念というしかありません。

今年は、遅かれ早かれ、総選挙が行なわれます。与野党には、当面の景気対策は当然として、中長期的な日本のあるべき姿を明確に打ち出し、国民に訴えていただきたいと存じます。消費税のあり方を含め、具体的に改革の道筋を示すことが、責任ある政治の役目であると考えます。

経済界といたしましても、冒頭にも申し上げました通り、明確な目標を国民と共有しつつ、自らが行動して改革を牽引していく所存であり、これは未来の世代に対するわれわれの責任であると認識しております。
民間や地域の活力を最大限に引き出して、経済を持続的な成長軌道に回帰させ、すべての人が将来の安心・安全を確保できるよう、積極的な活動を展開してまいりたいと存じます。

私にとりましては、総決算の年とも言えるこの一年、日本と、この国の国民一人ひとりの将来のために、強力な政策集団としての経団連の総力を結集して諸課題に取り組んでまいりますので、会員の皆様には、重ねてのご理解とご協力をお願い申し上げ、私からの開会挨拶とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。

以上

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