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日本経団連総会における御手洗会長開会挨拶

−日本経済団体連合会定時総会−

2010年5月27日(木) 午後2時〜3時30分
於 経団連会館 2階 国際会議場

会員の皆様方には、ご多忙のなか、経団連の定時総会にご来席をいただき、誠にありがとうございます。また、平素より、当会の活動に対しまして、ひとかたならぬご支援、ご協力を賜っておりますことに、改めて厚くお礼を申し上げます。

さて、わが国経済は、輸出、生産が緩やかに持ち直し、設備投資も下げ止まりつつあるなど、リーマン・ショック以前の状況に戻る動きがでてきております。しかし、雇用情勢は依然として厳しく、本格的な景気回復にいたるには予断を許さない状況にあります。また、本格的な人口減少と高齢化の急速な進展の中で、国民の閉塞感や将来不安も未だ払拭されておりません。

私は、経団連会長に就任して以来、一貫して、「経団連は政策集団たれ」と訴えて、活動して参りました。この4年間は、まさに内外激動の時代でありましたが、それゆえに、経団連の真価が問われた日々であったと思います。

4年前は、バブル崩壊による不況からようやく立ち直り、地平線のかなたに太陽の光が見えてきたような時期でありました。私は、これを中天に輝く太陽にしようと「希望の国、日本」というビジョンを発表いたしました。

その中で、「新しい成長エンジンに点火する」「アジアとともに世界を支える」「政府の役割を再定義する」「道州制、労働市場改革により暮らしを変える」「教育を再生し社会の絆を堅くする」の5分野を掲げ、これをさらに19項目、114の具体的取り組み課題として提言し、その実行に努めてまいりました。

幸い、皆様方の多大なるご支援を得て、研究開発投資促進税制の拡充によるイノベーション加速の環境整備、アジア諸国とのEPAの締結、ジョブカード制度の創設や事業所内保育所の拡充といった少子化対策や雇用対策を進めることができました。

2008年の秋には、リーマン・ショックに端を発する世界金融危機が発生し、これが世界同時不況を引き起こし、市場から需要が蒸発した状況になりました。その直後に、フランスで開かれたG8ビジネス・サミットに参加し、金融市場の安定や世界経済の回復のため、各国が協調、連携して行動することをG8諸国の首脳に求めたことは、その後の世界経済の回復にとって非常に効果的であったと思います。

こうした状況に直面する中で、わが国が持続的な成長を実現するためにも、成長目覚ましいアジアを中心とする経済統合を推進し、アジア域内の需要拡大を図ることが重要であるとの確信を強めました。そこで、ASEAN地域を中心に経済連携協定(EPA)のネットワークを、面的にも、また質的にも拡充するよう働きかけてまいりました。

また、今年3月には、アジアの11の国・地域から13経済団体を経団連に招き「アジア・ビジネス・サミット」を開催し、経済連携の推進、広域インフラの整備、環境問題等、アジア共通の課題を話し合いました。アジアのビジネスリーダーは、いずれも自国の発展に自信をもった発言をされていたことが、特に印象に残っております。

今後、わが国としては、ミッシング・リンクとも言える日中韓のEPA締結の動きを加速化することが喫緊の課題となっております。他方、メコン地域開発をはじめアジアのインフラ整備にも積極的に協力していくことが重要であります。

また、今や世界の成長の牽引役として、「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌を遂げつつある中国と、日中文化・スポーツ交流年行事などを通じて、政冷経熱と言われた時代から今日の良好で緊密な日中経済関係の構築へと関係を発展させることにも尽力してまいりました。

先日も、その集大成として訪中し、温家宝総理、李源潮中央組織部長をはじめとする国家指導者と、日中経済交流・拡大、環境協力などをめぐり話し合うとともに、中国の発展状況と壮大な将来計画を目の当たりにしてまいりました。

今後は、こうしたアジアの経済統合の動きを、米国を含むアジア太平洋の経済統合へと発展させて行くべきであると考えます。

昨年秋には、半世紀ぶりといわれる本格的な政権交代が実現しました。私はかねてより、政治と経済は、政策を軸とした車の両輪であると主張してまいりました。

経団連といたしましては、新政権発足後も、総理や各省の大臣等と緊密な政策対話を重ねてまいりました。その結果、新政権の経団連の政策に対する理解も深まりつつあり、道州制や電子行政については総務省と合同で進めていく体制も整備されました。

当面の課題は、デフレを克服し、一日も早く日本経済を自律的な成長軌道に乗せることであります。そのためには、先般取りまとめた「経団連成長戦略2010」を官民一体となって実施することが必要不可欠です。とりわけ、企業の国際競争力の強化を通じた雇用の創出、税・財政・社会保障の一体改革を積極的に推進していかなければなりません。

ここ数年が、これからの日本経済の将来を大きく左右するという状況下にあって、経団連は、わが国が直面する内外の諸課題に真正面から向き合い、新たな発展に向けて邁進していくべきであると考えております。会員の皆様のご協力を再度お願い申し上げまして、私の開会の挨拶とさせて頂きます。

以上

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