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日本経団連総会における米倉新会長就任挨拶

−日本経済団体連合会定時総会−

2010年5月27日(木) 午後2時〜3時30分
於 経団連会館 2階 国際会議場

このたび、経団連会長にご選任いただきました米倉弘昌でございます。

日本はいま、グローバル競争のさらなる激化、デフレ下での経済の低迷、少子高齢化に伴う将来不安の広がりなど、内外の諸課題に直面しております。そうした中、経団連の会長として、その責任の重さ、大きさに身の引き締まる思いがいたします。会員の皆様方のご指導、ご支援を得て、職務を全うすべく全力を傾注する所存でございますので、何卒宜しくお願いいたします。

御手洗冨士夫前会長におかれましては、100年に一度ともいわれる経済危機、加えて、歴史的な政権交代という、かじ取りが非常に難しい時代に、高い識見と行動力をもって経団連の陣頭指揮に当たってこられました。この間のご尽力とご貢献に対しまして、改めて心から敬意と謝意を表する次第であります。

私は、御手洗前会長が提示されました「イノベーションにより希望の国を築く」という路線を踏襲し、「民間活力による日本経済の再生・復活」に全力を挙げて取り組んで参る覚悟でございます。

さて、経団連が取り組むべき課題は、先ほど採択されました「総会決議」にある通り広範かつ多岐にわたっておりますが、ここでは、私の思いを3点に絞って申し述べたいと存じます。

第1は、企業活力による成長の実現であります。

私は、企業が元気を出し、経済が成長して初めて、国民生活の向上、雇用創出、持続可能な社会保障制度の確立、財政の健全化といった諸課題への対応が可能になるものと考えております。

6月には、鳩山政権の成長戦略が策定される見込みですが、経済の実態を踏まえ、需要面・供給面さらには大企業と中小企業を一体的に捉えた持続的な成長の実現に向け、引き続き全力を尽くしてまいりたいと考えております。

現在、アジア諸国をはじめとする新興国が牽引役となって世界経済が回復しつつあるように、世界的なパラダイム・シフトが起きております。例えば中国は、国際金融危機の影響をいち早く克服し、高い成長を維持しており、「世界の工場」から「世界の市場」へと転換を遂げつつあります。アジア太平洋地域に位置するわが国としては、こうした状況を絶好の機会と捉え、日本経済の発展にも結びつけるべきであります。

そのためには、環境をはじめ日本の強みを発揮できる分野での技術開発・イノベーションに一層の磨きをかけるとともに、法人税減税、物流インフラの整備、規制改革など、国際的にイコール・フッティングな事業環境を整備することで、日本企業の国際競争力を高め、「アジアとともに成長する日本」という成長モデルを構築する必要があります。

第2は、世界への貢献であります。

ご承知の通り、日本企業が、戦後、世界で活躍し、経済がここまで成長できたのは、平和のもと自由で開かれた市場が形成されたからであります。その意味で、「良好な日米関係の維持強化」の重要性を再認識する必要があります。日米経済連携協定を念頭に置いた両国経済関係の一層の緊密化を進めるとともに、日本と米国の地域レベルあるいは草の根レベルでの交流を促進し、真に強固な日米関係を構築しなければなりません。日米関係が堅固であることは、アジア太平洋地域はもちろん、ひいては世界の安定と繁栄に資するものと考えます。

本年は、秋にAPEC首脳会合が横浜で開かれます。わが国としては、この機会に、「世界とともに生きる日本」を前面に打ち出し、世界への貢献策を具体的に明らかにすべきであります。経団連としても、APEC活動はもとより、WTO交渉やEPA交渉などの推進に、各国の民間経済界とのネットワークを生かしつつ積極的に取り組んで参りたいと存じます。

一方、昨今、わが国では、欧米をはじめ諸外国への留学生が減少し、企業内でも海外赴任を敬遠する風潮が出るなど、日本人の内向き志向といったものが懸念されています。これまでの歴史を振り返るまでもなく、世界に目を向け諸外国との関係を深めることなくして、日本の将来的な発展は考えられません。韓国や中国、東南アジア諸国の積極的な若者の姿勢に後れをとらぬよう、世界的な場で活躍し、さらには世界に貢献できるグローバルな高度人材を育成する必要があります。同時に、海外からの留学生や人材の受け入れなども積極的に進め、ヒト・モノ・カネを広く呼び込む「オープンな日本」の実現に一層取り組みたいと考えます。

わが国が直面している少子高齢化にしても、やがて他国にも訪れる問題であります。わが国が、こうした課題の解決に世界に先駆けて取り組み、持続可能な日本型成長モデルを構築し、その成果を「日本の力」として世界に発信していくこと、それこそが、日本自身の成長と世界への貢献につながるものと考えます。

また、国際貢献を考える上で、企業の社会的責任、即ち、「CSR」も重要なキーワードであります。高い技術力を有するわが国の企業に強く期待されているのは、いわゆる「社会貢献活動」にとどまらず、CSRの考え方を一層推し進め、エネルギー問題や環境問題など、広く社会が抱える課題の解決につながる革新的な製品・技術・サービスを開発し、提供していく、という、事業活動を通じての国際社会への貢献ではないかと私は考えております。こうした活動の積み重ねが、日本に対する国際的な信頼感を高め、日本が世界に開かれた魅力ある国になる上で、大切であると思います。

第3は、政治や社会との対話であります。

経団連は発足以来、政府や政党をはじめとするステークホールダーと対話を進め、「国民生活の健全なる発展」という課題に取り組んでまいりました。昨年秋に本格的な政権交代がありましたが、その姿勢は、今後も堅持し、政治とも積極的に対話を行ってまいりたいと考えております。また同時に、政策提言集団として、企業が果たす役割や経団連の様々な政策提言について、国民から正しく理解され、国民の共感と支持を得られるよう、的確で分かりやすい情報発信を徹底し、政府や政党だけでなく、企業をとりまく様々なステークホールダーとのコミュニケーションもより一層深めていかなければなりません。そして「国民とともに歩む経団連」として、国民の生活向上と社会の持続可能な発展に資する提言づくりに全力を挙げて取り組み、経済活動の実態を踏まえながら、「民間活力による日本経済の再生と持続的な成長の実現」に向けた具体性に富む成長戦略を打ち出し、実行していきたいと考えております。

わが国は、バブル崩壊後の「失われた10年」を経験し、その後、回復の兆しが見えたものの、リーマン・ショックに続く世界的な経済危機に見舞われました。ようやく景気が上向きになりつつある現在も、ギリシャの信用不安を巡る影響などもあり、依然、悲観的な見方が蔓延しております。しかし、世界を見渡せば、いち早く経済危機を抜け出した中国をはじめとする新興国が世界経済の成長を牽引し、欧米などの先進国と激烈な競争を展開している一方、多くの途上国が相次いで経済成長のテイクオフを迎えております。このことは、日本人や日本企業が活躍できるフィールドが着実に、グローバルに拡大していることでもあります。

こうしたグローバル経済の本格的な発展は、「技術立国」を標榜し、依然として世界トップレベルの高度な技術力と勤勉な国民性を有しているわが国にとって、間違いなく大きなチャンスであります。日本の企業各社が、そして国民の一人ひとりが知恵を絞り、日本ならではの、容易にまねのできない強みを存分に発揮して果敢に挑戦していくことで、必ずや、日本経済を復活させ、新たな繁栄を築くことができると確信しております。私は、皆様に、今こそ、「経営者は自信を持とう」と訴えたいと存じます。そして、民間企業および民間団体を代表する「国民とともに歩む経団連」として、しなやかで強い、新しい日本経済の構築に向け、リーダーシップを発揮していきたいと考えております。

最後になりますが、重ねて、会員の皆様方の、経団連活動へのご理解とご支援、積極的なご参加をお願いいたしまして、私からのご挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

以上

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