第62回経団連定時総会後の記者会見発言のポイント

2000年5月25日
(社)経済団体連合会

【課題・抱負】

今井会長:
経団連会長に就任した時(98年5月)、日本経済は大変な状況であった。その後、経団連の強い働きかけもあり、景気は自律的な回復軌道に乗り始めている。金融システムの安定化、企業が構造改革を進め国際競争を行なっていくための税制・法制面の整備、産業競争力の強化なども進んでいる。
これから民間主導の景気回復を達成するためには、企業が率先して取り組まねばならない。経団連は、民間主導で経済をより強固にするという考えに立って行動していく。
一方、政府にも課題は残っている。連結納税制度の導入、株主総会に係る商法改正、社会保障(改革)を行なわねばならない。

辻副会長:
今後、日本経済が伸びる中で、環境保護と経済発展の両立をいかに図るかが課題である。

金井副会長:
第1に、「科学技術基本計画」に産業界の考えを反映させることである。第2に、産学官が知的所有権などの問題で力を結集すべきだ。知識の源泉は大学にあるので、企業がその知識を生かせるようにすることが重要だ。

前田副会長:
第1に、財政、税制、社会保障のグランド・デザインを構築すべきである。第2に、科学技術創造立国としての政策基盤や仕組みの整備に取り組みたい。

鈴木副会長:
規制改革、構造改革と同時に、企業の自己改革を推進する必要がある。

大賀副会長:
規制緩和から規制改革への流れを踏まえ、明治型の時代に合わない規制に替る21世紀型の規制を政府と民間で創り出していきたい。

岸副会長:
第1に、規制改革を一段と強化し、競争によって経済を活性化しなければならない。第2に、IT革命により日本経済を活性化させる必要がある。その環境を整えるための法整備が重要だ。

荒木副会長:
第1に、経営革新が必要である。その一つの核はITであるが、議論倒れにならないよう、実行あるのみだ。第2に、経済政策の中にもう少し国益を出してもよい。

片田副会長:
競争力を高めるためのインフラ整備として、商法、税法、司法の改革に取り組む必要がある。金融サービス法の整備、地方の中小の金融機関の基盤強化も行なわねばならない。

森下副会長:
第1に、21世紀のリーディング産業を創らねばならない。第2に、WTOをめぐる米中、欧中関係の新展開を踏まえ、アジア全体の中での日中の関係や、アジアの国々に対する日本のスタンス、リーダーシップなどを確立しなければならない。

槙原副会長:
日米関係やWTO、貿易・投資は重要であり、これらの問題に取り組みたい。中長期的な課題としては、教育が大事である。

香西副会長:
都市・住宅問題が重要であり、提言していきたい。また、21世紀の国家とプライベート・セクターのあり方・役割分担を捉え直す必要があり、そのための政策提言について議論していきたい。

上島副会長:
日本とアジアは相互補完的な関係を強化すべきである。グローバル化、IT化が進む中で、新しい時代の国際協力のあり方を提言したい。日本の課題は、(1)21世紀の日本をリードする産業の育成と、(2)海外との共生と競争である。

【森総理の評価】

今井会長:
これからカラーが出てくるのではないか。政治に空白がなかったことと、諸国歴訪で新たな信頼関係をつくり始めたことは良かった。
本日、片田副会長と官邸を訪問し、日本が産業競争力を高めるための課題として、(1)産業競争力会議の継続と、(2)今後の経済発展の核となるITの成長を促すための法制、ルールの見直し、の二点を申し上げた。ITを集中的に司る機関の設立を提言したところ、総理より前向きの返答があった。
「神の国発言」については、「天皇を中心とした神の国」という言葉を使ったことは、不適切だった。今後は注意深く発言されると思う。

【日経連との統合問題】

今井会長:
日経連が動き始めたことを心から歓迎している。経団連が東京中心の組織であるのに対し、日経連は地方組織があるので、大変な問題だ。まだ日経連サイドから呼びかけはない。呼びかけがあれば、副会長とも相談して対応を決めたい。

【株 価】

今井会長:
株価は2つの要因で下がった。第1に、「日経225」の30銘柄入れ替えだ。今の「日経225」に2,500円足して考えるべきだ。
第2の要因は、米株価の低下である。インターネットやIT関連の株の選別が始まった。米経済の過熱を抑えるための金利引き下げに反応して米株価が下がった。日本の株価も対応し、ITやインターネット関連の株価が下がったが、日本の株価自体を心配はしていない。外人投資家が米国での損失を埋めるために日本の株を売っているが、資産はまだ日本に残っている。

大賀副会長:
株価は市場で動くもので、その動向に一喜一憂するのは、如何なものか。インターネット関連株がバブル的な要因で上がったのだから、冷やすのは当然である。実力があり、次世紀につながる事業を行なう企業の株は、必ずまた上がる。

以 上

日本語のホームページ会長コメント目次