記者会見における今井会長発言のポイント

2000年6月12日
(社)経済団体連合会

【総選挙】

 今後の4年間の政権を決める選挙であり、非常に重要だ。景気を考えると、まず、強力な安定政権ができてほしい。国政運営の課題を示し、政策を掲げて、国民に分かりやすい形で議論してほしい。教育、財政構造改革等について議論してもらいたい。

【構造改革のタイミング】

 景気が本格的な回復軌道に乗ったことを確認した後、財政中立型の財政運営で様子を見る期間が必要だ。ある程度IT革命などで生産性を上げ、GDP成長を持続的なものとした段階で、構造改革に着手しなければならない。米国も財政構造改革には10年近くかかっており、10年かけて改革するグランド・デザインを描くべきだ。ただし、行政改革は中央、地方の両方で今すぐに進めるべきだ。

【ゼロ金利政策】

 金利の引き上げは消費にはプラスになるだろうが、米国の景気や為替レートにどのような影響が出るかわからないので、今やるにはリスクが大きすぎる。
 消費者物価は下がっているので、実質金利はプラスである。デフレ懸念が完全に払拭されたとは思っていない。1-3月期の国民所得統計によると、消費はかなり回復しているが、これは昨年10-12月期にかなり落ち込んだ反動であり、うるう年要因もある。手放しで楽観できる状況ではない。4-6月期の結果をもう1回見なければ、本格的な景気回復を確信できない。

【信組信金の金融検査】

 難しい問題だ。銀行並の検査では、もたない信組が多いという人もいる。別の検査基準を考えるべきという意見もある。一方、金融機関の間で検査基準に差を付けるのは問題であると考える人もいる。地方の産業の一部に影響が出るとも言われるが、不健全な金融機関を残すと、批判が出る。
 ただ、4月に検査の実施主体が都道府県から移ったとき、金融監督庁は検査ができると言っていたのだから、問題なく検査を行なう前提はあるのだろう。

【事業会社の銀行業参入】

 事業会社が銀行業に参入してもよいと思っている。ただし、金融業なので、規律は守るべきだ。親会社・子会社間で壁をつくるのが最低限の条件だ。おそらく、事業会社による金融業への参入は起こってくると思う。国民のためにはプラスだ。

【課税最低限の引き下げ】

 日本の場合、標準世帯の課税最低限は368万円だ。この控除をやめて、手当としてはどうかとの意見もあるが、所得税全般の議論をすべきと考える。一部だけ取り出して議論すべきではなく、税制全般で考えねばならない。

【日経連との統合問題】

 [日経連との統合後の組織の長に奥田日経連会長を指名したと報じられていることについて]そうした事実はまったくない。私は統合を歓迎している。ただ、日経連は地方組織を持っている。今、意見集約中で、8月のセミナーまで時間がかかると聞いている。日経連も統合を歓迎するとなったら、具体的な話をすることになろう。今、経団連から動くことはない。

【財界の高齢化】

 会社経営を進めていると、1社や各業界団体では解決できない壁につきあたる。そこで企業・業界団体が集まり、経済界の声を一つにして政府に働きかけ、改革を実現していく。これが財界の仕事である。したがって、財界人は現役であるべきで、経団連の副会長、評議員会副議長、委員長には、なるべく現役の方に就任していただく方針できた。しかし、諸問題について活発に発言される方であっても、社長の場合は社業で忙しく、集まって議論する時間が割けないこともある。現役優先を原則とし、できるだけ時間を割ける方にやっていただくという考え方でよいと思っている。

以 上

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