記者会見における今井会長発言のポイント

2000年7月3日
(社)経済団体連合会

【新内閣への要望】

 森内閣発足時、総理を訪問し、3点申し上げた。第1に、景気回復は胸突き八丁まできているので、引き続き景気回復を確実なものとする財政・金融政策を維持してほしい。第2に、経済構造改革を続けていくべきだ。特に経済再生の起爆剤となるITを推進する組織を設けてほしい。第3に、選挙後ただちに、国民が将来の生活に安心できるよう、税、社会保障、地方行財政を含む、将来のグランドデザインを国民に提示してほしい。この3点を基に、新内閣への要望を取りまとめているところであり、今週中に固めて、総理を訪問したい。

【景気-4-6月期のGDP成長率】

 実感としては、悪い方向に向かっていない。ただ、1-3月期の数字が、年率10%とあまりに高く出ているので、反動として、前期比マイナスになるかもしれない。しかし、トレンドとしては下がっているという感じはしない。

【ゼロ金利解除】

 ゼロ金利解除が消費によい影響があるとの意見もあるが、本日の会長・副会長会議では、解除は時期尚早との意見だった。まだインフレ懸念はおろか、実質的に物価はマイナスだ。最近、卸売物価が上がったが、これは原油ならびに石油関連製品の値上がりによるものであり、それ以外は下がっている。消費者物価も同じく下がっている。
 まだ1四半期しかプラス成長が確認されていない。その前の2四半期は大きなマイナスであった。消費もまだはっきりと上向いているというわけではない。従って、今金利を上げる理由はまったくない。リスクをとって、他の経済政策との整合性を無視して金利を上げることには反対である。
 金利の引き上げにより、長期金利が上昇し、債券価格が下落する惧れがある。また、円高を招き、輸出に影響が出るかもしれない。こうしたことを考慮すると、明日発表される日銀短観の数字のいかんにかかわらず、もう1期くらい様子を見た方がよい。

【そごうの債権放棄】

 非常に難しい問題である。預金保険機構は、税投入額の多寡、地域社会への影響、雇用不安の回避を理由として債権放棄に応じたと聞く。一般論として、私は債権放棄には必ずしも賛成ではない。債権を放棄した企業が競争力を高めるのに対して、債権放棄を要請しないで自力返済をしようとする企業がハンデを負ってしまう。これは、市場経済の中では不公平な処理である。従って、今回のそごうの処理を、あまりに軽軽に前例とすべきではない。
 また、債権は資本金よりも優先されるべきである。債権放棄を要請した企業は、減資するなどにより資本に手を付けるべきだ。債権放棄だけを行なうべきではない。
 そごうの再建計画については、累損の解消に10年余、全額返済には30年余かかると聞いている。そごうの再建計画の実行が容易ではないというのは、常識的な見方ではないか。
 そごう以外の企業の債権放棄も、非常に難しい問題だ。メインバンクがどのような方針で対応するのかによると思う。国民の税負担を最小限にするためには、債権放棄の方が回収率があがる。しかし、自由経済の中で、債権放棄を受けた方が競争上有利になるというのは、モラルとして避けるべきであり、よほどの事態に限るべきだ。国として原則的に債権放棄に応ずるべきではないとの意見は、非常に有力だと思う。メインバンクにも貸し手の責任、監督責任があることは否定できない。

【中尾元建設相の収賄事件】

 事実とすれば、極めて遺憾だ。新聞情報によれば、収賄によって公共投資の執行が歪められたことはないとのことであり、せめてもの救いだ。今後とも、限りない透明性と公正さをお願いしたい。

以 上

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