第29回中国地方経済懇談会後の共同記者会見における
今井会長発言のポイント

2001年2月22日
(社)経済団体連合会

【景気】

 米国経済は減速しているが、多様な政策手段があるので年後半には持ち直し、ソフトランディングするだろう。日本経済は踊り場にあり、注視が必要だ。問題は2つある。第1が物価の下落であり、名目GDPが減少していることだ。物価下落は消費者にはプラスだが、企業の収益には厳しい。第2が株価である。これまで含み益をリストラ原資などにしてきたが、株価が下がり、時価会計が入ってくると直接企業収益にかかわる。

【株価】

 現在の株価について心配はしているが、98年秋のような危機的な水準とは認識していない。TOPIXは当時よりも高いし、日経平均も銘柄入れ替えの影響がある。株価低迷の原因は、日本の構造改革が進まないこと、時価会計導入による持ち合い解消で地合が悪くなっていることの2つだ。政府は構造改革のグランドデザインを示して国民に将来の道筋を示し、貯蓄が消費に回るようにすべきだ。
 他方、企業は収益力を高めるとともに、自己株償却や金庫株で市場の地合を良くし、ROEを高める努力をすべきだ。金融機関の直接償却については、担保物件を処分する市場が未成熟で損失額が膨らむ可能性があることや、預貸率が低いために直接償却しても資金が国債の購入に回るだけという状況はあるようだが、進めるべきだ。
 与党の活性化対策も早く実行に移してほしい。財政政策や金融政策を使い尽くしたので新しい政策は望めない。今は13年度予算を年度内に成立させ、切れ目なく執行することだ。総理の退陣論ばかりが議論される国会の情勢は苦々しく思っている。
 株価は人為的に操作できるものでもないし、すべきでもない。企業が収益力やROEを高め、政府は金庫株の導入等の措置を講じるべきだ。また世界的に直接金融の比率が増している。個人金融資産が証券市場に流れるよう、配当やキャピタルゲインなどの税を低くすることが必要だ。与党も予算成立後に取り組むと理解している。

【中央と地方のデジタル・デバイド】

 通信分野では事業者が競争でネットワークの高速化を進めており、放送分野でもBSデジタルや地上波のデジタル化などで多チャンネル化や双方向サービスが始まる。このように、伝送手段で中央と地方のデジタル・デバイドが起こることは無い。ソフトウェア産業についても、米国やインドにみられるように、大都市に集中するものではない。地方が特色を出すことが重要だ。

【規制改革】

 規制改革は引き続き進めるべきだ。カリフォルニア州のケースは従前から危惧されていたものだ。当面、日本で発送電を分離することはないだろう。ただし、通信分野に続いて電力やガスの分野でも競争を促進することは大事だ。繊維の輸入急増問題については、国際的に認められたルールに従って対処すべきだ。その際、製造業者ばかりでなく、流通業者や消費者の利益も考慮することが必要である。

【団体統合】

 経団連と日経連は統合する。完全統合は来年だが、社会保障では来週、合同部会を開催するなどしている。日経連の地方経営者協会についてはそのまま存続する。地方の経済団体の再編を促すことはない。

以 上

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