第63回経団連定時総会後の記者会見における発言のポイント

2001年5月25日
(社)経済団体連合会

【景気認識】

今井会長:2001年度の成長率は、政府見通しの1.7%にはとてもいかないと思っている。
景気の現状が非常に厳しいことを前提に政策を行わなければならないが、従来のように補正予算を組んで公共事業を続けるのではなく、構造改革を断行することだ。それにより、個人と企業に将来の安心を与えることが最も大事である。かなりのマイナス成長にでもならない限り、改革を進めることが景気対策になる。痛みを伴っても改革を進め、健全な経済にしなければならない。

【財政再建】

今井会長:来年度の公債発行額を30兆円に抑えるには、歳出を(財政の中期展望と比較して)3兆円強減らさなければならない。3兆円はGDPの0.6%程度にすぎないし、公共事業をやっても波及効果はほとんどない。痛みを伴っても歳出を削減すべきだ。
歳出のうち大きいのは、公共事業、地方交付税、社会保障である。社会保障費は高齢者増に伴い増額は避けられない。したがって、公共事業と地方交付税に大ナタを振るわなければならない。改革の成否は小泉総理の党内基盤と国民の支持による。参院選がどうなるかが左右する。

【金融】

今井会長:[邦銀国有化に関するフィナンシャル・タイムズの記事について]制度上、政府には優先株を普通株に切り替える権利があるので、質問に対して「制度的には可能である」と答えたものだ。ただし、国有化が起こる蓋然性が高いとは、まったく言っていない。

【抱負】

今井会長:経済は個人と企業が主体である。経済団体の役割は、個人と企業が伸び伸びと自立して活動できる環境を整備することだ。こうした観点に立って、これまでの3年間、金融システムの安定化、企業の構造改革を進めやすくする法制・税制面の環境整備と、国際競争力の向上、技術力の強化に努めてきた。
残り1年もその延長線上だ。金融については、システムの問題はもうない。あとは、個々の金融機関の不良債権処理、企業の過剰設備の処理である。株主総会関連の商法改正はじめ会社関連法制の整備も必要だ。連結納税制度も来年から実現することになっている。また、社会保障の問題も重要だ。国民負担率をどうするかを含め、社会保障制度について、企業の立場から政府と議論していく。さらには、小泉内閣も言っているが、官民の役割を見直し、民でやれることは民でやることが重要である。特に特殊法人と郵政3事業だ。

西室副会長:私はかねてより、経団連は大企業を代表する団体というだけではないと思っている。企業の存立基盤である国民を常に意識し、その声を吸い上げられる経団連でなければならない。特に、国民の不安払拭につながる財政構造改革の包括的なグランドデザイン策定に努めたい。もう一つ大事なのは、国際的な視点であり、この面でも貢献できればと思っている。

吉野副会長:私は、海外ビジネスが国内の倍の規模を占め、コンシューマーを相手にしている製造業の、技術畑の出身だ。この観点から、日本経済の発展のために役立ちたい。「科学技術立国」は日本の大きな要素の一つなので、その点でも役立ちたい。

以 上

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