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新年経済3団体長共同会見における奥田会長発言要旨

2003年1月6日
(社)日本経済団体連合会

【景気】

2003年は、戦争もなく北朝鮮の状況にも変化がないとすれば、ゼロから1%の間の経済成長率になると見ている。なお、輸出面で対米依存が強まっており、米国経済の動向によっては、日本経済に大きな影響が出る懸念がある。

【株価、為替】

株価と為替は予測できない。特に今は、イラク情勢、北朝鮮情勢など国際政治絡みの要因があり、その影響が大きいので、先行きを読むことは難しい。

【デフレ対策】

デフレ・スパイラルに陥っているのかどうかを慎重に見極める必要がある。現在、安価な労働力を誇る中国の世界経済への本格的な参入、ITによる生産、開発コストの低減により、世界規模で物価が低下している。デフレのまま経済を運営すればよいとの見方もある。

【インフレターゲット】

非常に難しいし、実行できないと思う。ただし、現在日銀が進めている量的緩和は一種のインフレターゲットであり、これには反対しない。

【不良債権処理】

不良債権処理については、金融機関の会計処理と、その先にある企業の債務処理とを混同しているように感じている。金融機関の処理は、2、3年もかければ可能であろうが、企業の過剰債務問題の解消は、優良企業の選別、建て直しが必要であり、難しい。産業再生機構などで実際に作業にあたる人材は、企業と従来から付き合いがあり、数字だけでは現れない企業の内実に通じた金融業界の人があたるべきだ。

【消費税率の引き上げ】

日本経団連は消費税率の引き上げを提案したが、その前提として、まず徹底した歳出カットを行う必要がある。それでも毎年1兆円から2兆円増える社会保障関係費を賄う財源がなく、何もしないのでは財政が破綻してしまうので、消費税率の引き上げが必要だ。
一挙に18%に引き上げる案と毎年1%ずつ16%まで徐々に引き上げる案を提示したが、後者の方が穏やかな選択であると考える。もちろん、贅沢品は高く、生活必需品は低く、という具合に税率に差を設けることが必要だ。

【企業献金】

政治献金は、個人献金と政党助成金、そして政治資金規正法で認められた企業献金が基本だ。最も良いのは個人献金の拡充だが、なかなか日本には根付かない。寄付税制を見直し、もう少し弾力性のあるものにする必要がある。企業献金については、特定政党への献金と、政策本位の献金という2つのやり方がある。

【イラク情勢】

仮に対イラク戦争が始まり、短期間で終了しても、その後に続くテロの脅威は後々まで続くだろう。戦争が終わればただちに楽観ムードになり、急速にドルが強くなるとは期待できない。戦争が長期化すれば、日本経済、米国経済に影響が出る。

【次期日銀総裁】

金融事情、金融政策、財政政策等について極めて広範な見識を有し、人脈を持つ人材が望ましい。

以 上

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