危機を克服し、日本経済の発展基盤を整備する

−経団連会長新年メッセージ−

1999年1月1日
(社)経済団体連合会
会長 今井 敬

本年は、現下の経済危機を一刻も早く克服し、構造改革の推進、産業基盤の強化によって、2年後に迫った21世紀に向けて確固たる経済の発展基盤を整備しなければならない。日本の景気回復は、アジア経済の再生、ひいては世界経済の安定的発展にとって不可欠であり、国際的責務でもある。
これらの課題を達成するためには、政治の強力なリーダーシップの下で大胆な政策を迅速かつ果断に実行することが求められている。同時に、企業は、公正かつ透明な経営に努め、自立、自助、自己責任の原則の下、経営体質の強化、技術開発等によって競争力を強化するとともに、企業家精神を大いに発揮し、経済の活性化につなげてゆく。
このような視点に立って、経団連としては、以下の実現を図るとともに、一連の諸施策を活用して景気の回復に向けて最大限の努力をするよう会員企業に呼びかけてゆく。

切れ目ない需要喚起策と企業の自助努力

すでに決定されている経済再生のための施策を迅速かつ着実に実行する。特に財政出動によって切れ目のない需要喚起策を講じる。それらの施策と、金融機関の資本充実による流動性の回復、企業の財務体質ならびに過剰供給体質の改善等の努力があいまてば、必ずや日本経済は長期低迷から脱し、年度後半には2%程度の成長軌道に乗る。

明確なビジョンに基づく構造改革の推進と将来不安の払拭

経済のグローバル化、少子・高齢化が進展する中、明確なビジョンに基づいた構造改革を推進し、将来不安を払拭することも経済の活性化に不可欠である。すなわち国・地方を通じた行財政改革、情報化によって簡素で効率的な透明性の高い政府を実現する。個人所得課税・法人課税をはじめ税制の抜本的な制度改革を図る。持続可能な社会保障制度を再構築して国民が安心と信頼の持てる長寿社会を実現する。

企業の国際競争力の強化と戦略的な産業技術政策の確立

21世紀に向けて持続的かつ安定的な成長を実現するには、産業基盤の整備、とりわけ製造業の国際競争力を強化しなければならない。そのため、規制撤廃・緩和、物流インフラの重点整備等によって高コスト構造を是正するとともに、政府に「産業競争力戦略会議(仮称)」を設置し総合的な施策を展開する。
また、戦略的な産業技術政策を確立し、情報通信、環境、バイオ、新素材等の高度技術集約型事業に政策資源(政府研究開発投資等)を集中投入して、高付加価値型の産業構造を実現する。

世界経済の安定的発展と円の国際化の推進

一刻も早く国内の景気を回復させ、世界経済の安定的発展、とりわけアジア経済の再生に向けてのわが国への強い期待に応える。企業としては、中長期的な観点から、対アジア投資を継続するとともに、人材育成や裾野産業育成に積極的に協力してゆく。
また、国際金融・通貨体制の安定・強化の観点から、ユーロの登場を歓迎するとともに、円の国際化を一層推進してゆく。

以 上

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