構造改革を断行し、21世紀に向けた飛躍のための総仕上げの年とする
−経団連会長新年メッセージ−
2000年1月1日
(社)経済団体連合会
会長 今井 敬
日本経済は、漸く底を打ったが、先行き予断を許さない。民需主導の本格的な景気回復を実現するには、構造改革の断行が焦眉の急となっている。そこで、本年を、21世紀に向けた飛躍のための総仕上げの年とすべく、抜本的な税制・法制の改革、大胆な規制改革の断行、持続可能な社会保障制度の確立など諸改革に真正面から取り組むとともに、産業競争力の強化を図る必要がある。また、構造改革に伴う摩擦を緩和し、国民の不安感を払拭するため、労働市場の機能強化と雇用のセーフティネットの整備が求められる。一方、これまでの財政に過度に依存した経済運営を脱し、財政再建を視野に入れた対応も検討しなければならない。
これらの課題を達成するには、政治が、新しい議会運営の仕組みを活用しつつ、強力なリーダーシップを発揮して、積極果敢に改革を推進していくことが求められている。また、企業も、この機会に抜本的な構造改革を進め、バランスシートを改善するとともに、企業家精神を大いに発揮して、新たな事業・雇用機会を創造していかなければならない。さらに、企業は、情報公開等によりアカウンタビリティを高めるとともに、企業倫理の徹底により社会からの一層の信頼回復に努めていく必要がある。
経団連としては、このような認識に立って、以下の施策のスピーディな実現を通じ、自己責任原則の下に、自由・公正・透明な市場経済体制の確立を図っていく。また、新時代の企業活動に相応しいコーポレート・ガバナンスのあり方についても明らかにしていく。さらに、地域経済、なかんずく基地経済から脱却し、自立を目指す沖縄の振興に協力していく。
記
抜本的な税制・法制改革の推進
- 連結納税制度の早期導入、会社分割法制・税制の整備
- 直間比率の是正と個人所得課税の制度改革
- 地方法人課税の改革
- 資金調達・運用手段の多様化
- 司法制度改革の推進
大胆な規制改革の断行と行財政改革の推進
- 規制の枠組みの大胆な改革
- 国・地方を通じた行財政改革の推進
- 財投改革の推進
- 高コスト構造の是正
持続可能な社会保障制度の確立
- 公的年金・医療・介護制度の再構築
- 企業年金制度の見直し(確定拠出型年金の導入、厚生年金基金代行部分の返上)
安定的な金融システムの実現と効率的な資本市場の整備
- 「小さな預金保険制度」を目指したセーフティネットの整備
- 金融サービス法の早期制定
- 資本市場インフラの拡充
- 為替レートの安定化と円の国際化の推進
雇用・労働分野の改革
- 労働市場の機能強化を通じた適材適所の実現
- バウチャー制度の活用などを通じた個人の職業能力の向上
- 女性・高年齢層等に対する雇用機会の拡大
総合的・計画的な科学・技術開発基盤の強化
- ミレニアム・プロジェクト(情報化対応、高齢化対応、環境対応)の効率的推進
- 戦略的産業技術政策の迅速かつタイムリーな展開、リーディング・インダストリーの育成
- 21世紀の科学技術、産業技術を支える人材の育成のための教育改革
戦略的・効率的な社会資本の整備
- 交通・物流に係わるインフラの重点的整備(大都市圏の環状道路、拠点空港等)
- 生活・居住空間、業務・商業空間、防災拠点等の整備
高度情報通信社会に対応した基盤の整備
- 行政、教育など公的分野の情報化(電子政府の実現等)
- 情報通信サービスの利便性向上、電子商取引のための基盤整備
経済と環境を両立させる社会の推進
- 廃棄物対策を中心とする資源循環型社会の推進、地球規模の環境保全のための温暖化対策の推進
- 技術開発等による環境負荷の少ない事業活動の推進、環境ビジネスの創造
世界経済の安定的発展への貢献
- WTO新ラウンド交渉の開始に向けた積極的取組み
- アジア経済の持続的発展への協力
以 上
日本語のホームページへ