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月刊 経団連 巻頭言 決断と実行で日本を再生する

米倉弘昌 (よねくら ひろまさ) 経団連会長

私が経団連会長に就任してから、はや2年が経過した。昨年3月11日、東日本大震災が発生し、わが国は甚大な被害を受けたが、政府、自治体、企業各社ならびに地域の方々をはじめとする皆様の懸命の努力によって、被災地の復旧は着実に進んできた。しかしながら、がれきの処理や地元経済の再建など本格的な復興に向けた取り組みは、まだこれからの状況にある。

わが国経済は、復興需要が景気を下支えしていくと見込まれる一方、長引く円高が企業の業績に大きな影響を与えているほか、欧州債務危機の再燃や原油価格の高騰なども懸念され、依然として予断を許さない。

加えて、少子高齢化、税・社会保障制度の一体改革と財政の健全化、経済連携の推進、エネルギー政策の抜本的な見直しなど、国家としての将来を大きく左右する課題に直面している。この難局を乗り越え新しい日本として生まれ変わることができるのか、それとも衰退に向かうのか、わが国はまさに歴史的な岐路に立っているといえよう。

日本再生のために取り組むべき課題はすでに明らかである。今求められているのは「決断と実行」である。野田総理は、国民の生活を守る観点から、大飯原子力発電所の再稼働を決断されたほか、消費税率の引き上げを含む社会保障と税の一体改革にも強い覚悟を持って取り組まれた。引き続き、課題解決に向けて強いリーダーシップを発揮されることを大いに期待したい。

経団連は、6月5日に定時総会を開催し、「行動する経済団体」として、政治に対し党派を超えた国益重視の大局的な「決断と実行」を求めるとともに、自らわが国が直面する重要諸課題の解決に果敢に取り組んでいくことを決議した。具体的には、「本格的な復旧・復興の加速化」「成長の実現と雇用の創出」「持続可能な社会保障・財政構造の確立」「エネルギーの安定供給とエネルギー・環境政策の再構築」「経済統合の促進と海外インフラの整備」である。

これまでもわが国は、国民の不屈の精神と助け合いの心、強力なチームワーク、世界に冠たる技術力といった強みを発揮して、幾度となく危機的な状況を乗り越え、復活を遂げてきた。

私は2年前に経団連会長に就任する際、企業経営者の皆様に「自信を持とう」と呼びかけた。日本再生に向けた本格的な取り組みがいよいよ始まろうとしているなかで、経営者のみならず国民の皆様にも「今こそ自信を持とう。私たち一人ひとりが、日本の力を信じ、共に行動を起こしていこう」とあらためて呼びかけたい。

経団連としても、経済界の総力をあげてわが国の再生をリードし、国民が未来に大きな期待と希望を持てる、活力に溢れた「新しい日本」をつくり上げていきたい。

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