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月刊 経団連 座談会・対談 防衛産業の生産・技術基盤の維持・強化に向けて

桜林美佐
司会:ジャーナリスト

小川和久
軍事アナリスト・国際変動研究所理事長・静岡県立大学特任教授

佐藤育男
日本防衛装備工業会会長
日本製鋼所

矢野 薫
経団連審議員会副議長
日本電気

大宮英明
経団連副会長・防衛生産委員長
三菱重工業

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大宮英明 (経団連副会長・防衛生産委員長/三菱重工業社長)
経団連防衛生産委員会は、2010年7月に公表した「新たな防衛計画の大綱に向けた提言」において、予算の制約のなかで防衛生産・技術基盤を維持・強化するため、重点投資分野を明確化した防衛産業政策の確立や武器輸出三原則等の見直しを訴えた。安全保障や防衛産業に対する国民の理解を促進するためには、その意義や役割を丁寧に説明していくことが大切である。経団連としても広報活動に努めていきたい。

矢野 薫 (経団連審議員会副議長/日本電気会長)
専守防衛を旨とする日本の安全保障において、情報優越の確立は必須である。また、インターネットをはじめ、情報通信システム分野の民生技術発展に、米国の軍事技術開発の成果が寄与してきたことは周知のとおりである。こうした観点からも、防衛生産・技術基盤の維持・強化は重要だと考える。防衛産業の従事者が国家の安全に寄与するという高い志を持って働いていることを、ぜひ、理解してもらいたい。

佐藤育男 (日本防衛装備工業会会長/日本製鋼所社長)
当社は、1907年、英国の技術を導入し国産の兵器を製造することを目的として創業した。現在は、兵器製造で培った技術をもとに、各種の産業機器を開発・製造している。そのDNAは今日に受け継がれており、防衛産業における技術基盤の維持・強化には強い思いがある。ある程度のボリュームがなければ産業は維持できないため、輸出ができない防衛産業は厳しい状況にある。武器輸出三原則の見直しを契機に、装備品の国際共同開発を進めたい。

小川和久 (軍事アナリスト・国際変動研究所理事長・静岡県立大学特任教授)
海に守られてきた日本は、島国ゆえに外交・安全保障・危機管理を苦手としてきた。平和と安全なくして繁栄なしの思想的整理のもと、適正な安全保障体制について国民に正面から問いかける時期に差し掛かっている。縦割りの弊害を乗り越え、安全な日本を実現するためには、日本版NSCの創設は不可欠だ。そのうえで、国際水準をクリアしたシンクタンクがあれば、国家の安全にかかわる重要なテーマについて正面から国民に問うことができ、理解も深まっていく。

桜林美佐 (司会:ジャーナリスト)
官房長官談話というかたちで武器輸出三原則等が見直されるなど、防衛政策は、一つの転換期といえるタイミングにある。国防は国が続く限り行われ、これまで継承してきた技術の火を消してはいけない。防衛装備品を購入する予算の割合は、決して多くなく、予算が付かなければ、企業は動けない。勇気を持って、防衛費の増額を訴えなければならないと強く感じる。

  • ●防衛産業の現状と基盤強化に向けた課題
  • 防衛産業の現状と経団連における取り組み
  • 欧米は、武器輸出を防衛生産基盤維持の手段に
  • 明確な方針を定めることが大切
  • 情報通信システム、宇宙システムの開発利用
  • 陸上装備システムの現状と課題
  • 安全保障に関する思想・哲学の構築を急げ
  • ●国民の安全保障に対する理解の促進
  • 国民に向けて、わかりやすく、丁寧に説明していくことが大切
  • 国民の安全・安心に寄与するという誇りを持って
  • 防衛技術が民生転用されていることをアピールしていく
  • 国民に正面から問いかけるべき
  • ●これからの安全保障のあり方と経済界・産業界の役割
  • 大学教育を通して、国民の理解促進と人材育成を
  • どうして「日本版NSC」が必要なのか?
  • 外国との共同開発への道を開く

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