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月刊 経団連 巻頭言 得意領域での国際競争力発揮を通じ、早期に確実な実需取り込みを

畔柳信雄 (くろやなぎ のぶお) 経団連副会長/三菱東京UFJ銀行相談役

安倍政権誕生後、金融政策、財政政策の実行により、円高是正、株価上昇が進み、成長戦略を通じた実需創出に関心は移っている。農業、医療・介護、環境等の分野において、イノベーション、規制改革の推進を通じた市場拡大が期待されている。いずれも、成長の可能性を秘めた有望分野である。ただ、わが国財政は、国際的信認維持に向け、2020年度までのプライマリーバランス黒字化が必須であり、待ったなしの状況にある。この状況を鑑みれば、重要な視点は、早期に確実な実需創出が可能な施策への優先的取り組みである。

「早期」に「確実」な成長を実現するには、実績もあり、実態規模も備える有力な国内産業が、欧米、アジアなどグローバル市場で競争力を最大限発揮することが条件となろう。足元では、金融政策による円高是正が進み、自動車や電子部品といったわが国の得意領域の産業が価格競争力を取り戻し、再び世界市場で競争力を発揮している。また、最も期待するアジアの成長市場取り込みという面では、インフラ・システムの海外展開が重要であろう。世界の社会インフラ整備の需要は旺盛で、アジアだけでも2020年までに8兆ドルの設備投資が行われる。当該分野は、安全面、正確性、効率性といった点でわが国が高い競争力を有する有望分野であり、官民連携でのトップセールスや、円借款の戦略的活用に向けた制度見直し等、民間の声を踏まえた施策が推進されている。

国際市場での競争力発揮には、思い切った規制緩和などの取り組みが重要である。政府には、引き続き、官民連携に基づき、事業環境整備、支援施策推進による後押しを期待したい。加えて、今後は、施策のプライオリティー付けや、短期、中期、長期の時間軸に区分した施策の工程表管理といった、戦略の高度化が肝要である。これらにより、目的実現へのプロセスを立体的に設計管理し、早期に確実な実績をあげるべく、実態的かつ戦略的な施策推進を図るべきである。

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