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月刊 経団連 座談会・対談 産業競争力強化に資する知的財産戦略

椋田哲史
司会:経団連常務理事

遠藤 誠
弁護士

渡部俊也
東京大学政策ビジョン研究センター教授

日覺昭廣
経団連審議員会副議長・知的財産委員長
東レ社長

三浦 惺
経団連副会長
日本電信電話会長

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三浦 惺 (経団連副会長/日本電信電話会長)
日本企業が国際競争力を維持していくためには、不断のイノベーションが不可欠であり、そのなかで知的財産戦略が非常に重要になってくる。これまで経団連では、職務発明の法人帰属化、営業秘密・技術情報の保護強化など、国内外での知財基盤整備に関する提言を行ってきた。昨年来、政府も知財分野に対して前向きに取り組んでおり、法整備、諸外国への働きかけなどについて、今後の一層の進展を大いに期待する。

渡部俊也 (東京大学政策ビジョン研究センター教授)
世界中の国と企業がイノベーション競争を行っている現在、イノベーションの「やり方」の競争が起こり、オープンイノベーションなど新しいイノベーションが生まれている。日本企業は、こうした背景を踏まえて知財マネジメントを行わなければならない。職務発明については、企業に権利を帰属させるのが妥当だと考える。営業秘密・技術情報の保護に関しては、政府として保護の水準を上げるとともに、企業側も情報管理を強化すべきだろう。

日覺昭廣 (経団連審議員会副議長・知的財産委員長/東レ社長)
知的財産は、グローバル競争を優位に勝ち抜くための重要な経営資源の一つである。職務発明制度については、法人帰属化に向けて、抜本的な見直しが行われることになった。営業秘密保護の強化に関しては、経団連として、営業秘密保護に特化した新法の制定、「営業秘密管理指針」の改定を通じた運用の見直し、官民フォーラムの実行ある運営などを積極的に働きかけている。

遠藤 誠 (弁護士)
天然資源を海外に依存する日本にとって技術力は生命線であり、それを守るために知的財産権がある。技術力を持った日本企業は、中国などの新興国市場で国際競争を勝ち抜くために、知財を有効に活用することが重要である。グローバルな営業秘密侵害に関しては、ライセンシーや海外子会社、退職者からの秘密漏えいに注意し、きめ細かい情報管理が求められる。また、知財に関する法整備を進めている東南アジア諸国等に対しては、日本の専門家の派遣、さまざまなメリットの提供などで、制度調和を図るべきである。

椋田哲史 (司会:経団連専務理事)

  • ●イノベーションにおける知財の重要性
  • 知財戦略を経営戦略に組み入れることが不可欠
  • 知財はグローバル競争を勝ち抜くための重要な経営資源
  • イノベーションの「やり方」の競争が始まっている
  • 海外における知財問題の多様性を考えるべき
  • ●職務発明制度の見直しに向けて
  • 職務発明の法人帰属化に向けた経団連の取り組み
  • 職務発明制度の抜本的見直しに向けた政府の検討
  • 金銭的報酬がモチベーションを高めるとは限らない
  • 中国の発明者保護政策はイノベーション創出に逆効果
  • ●営業秘密の保護に向けて
  • 海外競合企業による技術情報等の不正取得・使用を抑止するために
  • 法制化の検討と同時に実務面の改善を急ぐべき
  • きめ細かい情報管理体制の整備を
  • 日本企業は情報管理を強化すべき
  • ●グローバル時代における知財のあり方について
  • アジアにおける知財戦略のコアをつくる
  • 「国際標準化戦略」の構築が必要
  • 新興国の知財関連法づくりに協力すべき
  • 国際機関の主要ポストを積極的に取りにいく

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