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月刊 経団連 巻頭言 トップ主導による日本型イノベーションの実現

高橋恭平 (たかはし きょうへい) 経団連審議員会副議長/昭和電工会長

今日、産学官を問わずイノベーションという言葉を聞かない日はないが、あらためて企業トップの役割という観点からその意味を考えてみたい。

昨今の議論・研究でイノベーションはボトムアップ型やトップダウン型などと類型化されるが、これまでのわが国の成長を支えてきた旧日本型イノベーション、すなわちお手本となる欧米の産業のフォロワーとしての先の見える製品開発では、ボトムアップ型で十分な展開も可能であった。

一方、今後先例のない、先の見えないイノベーションへと突き進むには、トップダウン型が必要と言われがちだが、果たしてシリコンバレーのようなベンチャー型イノベーションが日本の大企業組織トップ主導によって実現できるか、トップが個々の事例に深く関与することが現実的であるか、いささか疑問である。

われわれの現在の組織運営を与件として考えた場合、先の見えないなかでイノベーションを進めるためには、企業の仕組みや制度面で社員が果敢にリスクにチャレンジしていける企業風土、体質づくりが必要である。このことこそトップの役割と認識すべきではないか。

昨今叫ばれているオープンイノベーションや産学連携についても、担当レベルの個々の取り組みだけにとどまることなく、トップ主導により組織を挙げて体系的に進めることが極めて重要な局面にあると認識すべきであろう。

現在、日本経済調査協議会で日本型イノベーション創出に関する提言を取りまとめているところである。ここでも産学連携やベンチャーのあり方などが議論されているが、とりわけ重要な観点として、個々の施策云々を取り上げる以前に組織としてイノベーションの土台を構築することが必要であり、トップ主導で永続性のある仕組みや制度を整備することが急務であるとの認識が共有されている。

長期的視野に立った、組織を挙げたイノベーション体制の構築こそが日本型経営の強さを発揮する道であり、トップの役割ではないだろうか。

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