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月刊 経団連 巻頭言 グローバリゼーションの新潮流

飯島彰己 (いいじま まさみ) 経団連副会長/三井物産会長

グローバリゼーションへの逆風が強まっている。近年のグローバリゼーションの潮流のもとでは、先進国の企業は新興国で新たな収益機会を獲得し、新興国はそれを追い風に経済発展を加速させるという互恵的な関係が構築され、双方にメリットをもたらした。しかし、先進国、新興国の双方で国内の格差を拡大させるなど、負の影響も小さくなく、それが逆風の背景となっている。

近時の逆風は各国の政策を左右するまでになり、国際的な企業活動や人の移動を妨げる施策が具現化してきている。また、これまでのグローバリゼーションの原動力であった、先進国企業が低廉な労働力や成長余地を求めて新興国に事業を展開する動きも、新興国経済の成熟化に伴って減衰していく流れが見えてきつつある。

しかし、従来型のグローバリゼーションへの逆風が強まるなかで、国境を越える経済活動における新たな潮流も鮮明になってきている。ここにきて目立ってきているのは、中国をはじめとする新興国企業が、自国経済の成長を追い風に力を蓄え、先進国を含む国外での事業展開を本格化させる動きである。それに必要な技術力を獲得するため、ロボットやバイオといった先端分野も含む先進国の有力企業を買収する動きも活発化してきている。それらに対抗して、先進国企業は、技術面の優位性を維持するため、研究開発を活発化させ、その成果を用いた事業展開を国内外で図っている。AIやIoT(Internet of Things)といった最先端分野の動向や、ドイツの産業政策 Industrie 4.0が注目されているのも、そうした背景があってのことだろう。

これらの技術は、資源や環境、医療、安全など、世界に共通する課題の解決につながるものである。先進国、新興国双方の企業が、自ら開発した技術や創出した事業の世界展開を目指す動きと、その果実を企業買収などのかたちで取り込もうとする動きは、逆風が強まるグローバリゼーションの、新たな原動力となるだろう。

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