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月刊 経団連 座談会・対談 ロジスティクス変革のうねり ―Society 5.0時代への期待

井阪隆一
経団連審議員会副議長
セブン&アイ・ホールディングス社長

根本敏則
敬愛大学経済学部教授

松本年弘
国土交通省大臣官房物流審議官

工藤泰三
経団連副会長
日本郵船会長

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工藤泰三(経団連副会長/日本郵船会長)
現在、物流業界は、担い手の深刻な人手不足・高齢化、地球環境問題や大規模災害リスクへの対応など、多くの課題に直面している。物流現場における徹底的なBPRとデジタル化、自動化によって、生産性を向上させ、労働環境を改善していくことが求められる。海運業界では、ビッグデータを効率的な船舶の運航、メンテナンス、イールドマネジメントに活用するなど、Society 5.0に向けた取り組みを進めている。

松本年弘(国土交通省大臣官房物流審議官)
トラック運送における人手不足・高齢化は深刻であり、労働環境や取引慣行の改善は急務であると認識している。国土交通省では「生産性革命プロジェクト」において「物流生産性革命」をテーマとして掲げ、この課題に取り組んでいる。政府としては、昨年、「総合物流施策大綱」を改訂し、2020年を目標に、社会状況の変化や新たな課題に対応できる「強い物流」を構築することを目指している。SIP第2期では、「スマート物流サービス」の実現を目指すプロジェクトが5カ年計画でスタートしている。

根本敏則(敬愛大学経済学部教授)
今後、流通にロボットやAIなど最先端技術が導入され、物流を含めさまざまな部分で効率化が進み、関連する費用が低減していくことは明らかである。そうしたなかで、いかに付加価値を生み出していくかが問われている。例えば、中国の富裕層に向けて、日本の生鮮食品を越境eコマースで届けるなど、食品関連のサービスに可能性があるのではないか。現在進められている小口保冷輸送の国際標準化が1つの契機になり得る。また、そこで生み出された付加価値を、荷主と物流事業者がシェアしていくことも、もう1つの課題といえるだろう。

井阪隆一(経団連審議員会副議長/セブン&アイ・ホールディングス社長)
経団連の提言「Society 5.0時代の物流」では、「つながる物流」「共同する物流」「人手を解放する物流」「創造する物流」「社会に貢献する物流」の5つを掲げ、最先端技術の利活用を進めることで、労働環境の改善と魅力の向上、国内外における強靭な物流ネットワークの構築を目指している。小売業においても、例えば、RFID等を活用した作業効率化や、物流事業者と連携してのラストワンマイルのお届けなど、Society 5.0時代に向けた取り組みを進めている。

根本勝則(司会:経団連専務理事)

  • ■ 物流が直面する諸課題
  • 危機に瀕する物流~担い手の人手不足・高齢化、環境問題、大規模災害リスクへの対応
  • サプライチェーンの上流・中流・下流、それぞれの課題
  • 「物流生産性革命」で労働生産性改善と賃金増加を図る
  • ■ Society 5.0時代の物流の姿、新しい物流が変える社会
  • 提言「Society 5.0時代の物流」が目指す物流の将来像
  • キーワードはデジタル化・自動化、グローバル化
  • 付加価値をシェアし荷主と物流事業者がウィン・ウィンの関係に
  • 新しい「総合物流施策大綱」が掲げる6つの視点
  • ■ 物流の魅力を高め競争力を強化する具体的な取り組み
  • 非競争領域のデータ共通基盤を整備していくのも公の役割
  • トラックの自動走行・隊列走行に向けたインフラ・制度整備を
  • IoT、ビッグデータを活用した船舶のメンテナンス、イールドマネジメントへの取り組み
  • マンパワーに頼る流通・物流現場も最新技術を活用することで生産性を向上
  • 「スマート物流サービス」の実現を目指すプロジェクトがスタート
  • ■ 今後の経済発展を達成するために物流が進むべき方向性
  • 小口保冷輸送の国際標準化を契機に物流イノベーションを
  • 「人口減少」は日本社会を変革するチャンス
  • 競争一辺倒ではない協調を含めた取り組みを
  • 官民で協力しながら消費者が喜ぶサービスを生み出したい

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