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月刊 経団連 座談会・対談 エンゲージメントを高めてウィズコロナ時代を乗り越え、Society 5.0の実現を目指す

矢島 洋子
三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員主席研究員

菰田 正信
経団連副会長
三井不動産社長

佐藤 康博
経団連副会長
みずほフィナンシャルグループ会長

大橋 徹二
経団連副会長、経営労働政策特別委員長
コマツ会長

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新型コロナウイルス感染の拡大により、我が国企業を取り巻く経営環境は激変した。
今後、企業は社員のエンゲージメントを高めながら、社会や顧客のニーズを的確に捉え、付加価値の高い製品やサービスを創出すべく、働き方改革フェーズⅡを進めていく必要がある。
また、コロナ禍による企業活動への影響は業種・企業によって様々であり、各社の状況が大きく異なる中で迎える2021年春季労使交渉・協議では、例年に増して自社の状況に応じた対応が重要となる。
本座談会では、ポストコロナを見据えた企業各社の事業展望や働き方改革に関する取り組み事例に加え、2021年版経営労働政策特別委員会報告を踏まえ、今次春季労使交渉・協議にどのように臨むべきかなどについて、議論をする。

大橋 徹二(経団連副会長、経営労働政策特別委員長/コマツ会長)
一時はコロナにより海外の工場が閉鎖になったが、現在はほぼ順調に稼働していて、社員のエンゲージメントを高めるためにも、安心して働ける職場環境を保障している。製造業では安全・品質管理の徹底が求められるため、現場社員には一定程度の知識と経験が必要であり、その面でメンバーシップ型の雇用制度が合致する。事業展開するうえでは、新たな分野でビジネスモデルを構築出来る人材が必要となるため、ジョブ型の採用も活用している。また、年間を通して労使による議論を行うことで、互いに信頼感を醸成し、より良い企業経営を目指している。

佐藤 康博(経団連副会長/みずほフィナンシャルグループ会長)
金融業界はコロナによる影響が比較的少ないが、今後のグローバル経済の動向には注視が必要。非接触・非対面ニーズやDXに対応すべく、次世代店舗やテクノロジーを活用したサービスも次々に導入している。エンゲージメント向上には多様性の享受が求められ、テレワーク、ダイバーシティ、DXに伴うリカレント教育など、企業として取り組むべき課題は多い。さらに企業の存在意義や社会的責任にも重点が置かれてくるだろう。個人の専門性を高めるために社内外の兼業・副業も解禁し、2021年度下期からは総合職・一般職の区分をなくすなど、人事制度を大きく変えていく。

菰田 正信(経団連副会長/三井不動産社長)
人々の働く場所や時間の選択肢が広がった。働き方の変化に対して、トータルに働く環境を提供していくビジネスを展開していく。雇用制度については、メンバーシップ型の最大の利点は、自身をプロモートしていく姿を描けることだ。当社は仕事のやりがい、正当な評価などを通じて、社員のエンゲージメントを高めている。多様な働き方を容認していくためには労働を時間で管理・評価するという現在の労働法制の枠組み自体を見直していく必要がある。春季労使交渉において賃上げ以上に重要と考えるのが、第2の就職氷河期世代を作らないための新卒採用の維持である。

矢島 洋子(三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員主席研究員)
働き方改革関連法対応等により、これまでは長時間労働の削減が重視されていたが、コロナによってテレワークなどの柔軟な働き方が広まったことはプラスだと感じる。ただ、女性の割合が高い非正規労働者は労働時間短縮や失業などの影響が大きく、さらに20代の若者では正社員でも年収100万円未満の人が一定数いるなど、災害や感染拡大によって一気に生活が困窮状態に陥る人々の存在があらわとなった。コロナ収束後の経済回復が期待されているが、各国にどれだけディーセントワークがあるか、この先の社会で意欲的に働き、消費する国民がいるかが深く関わってくる。

椋田 哲史(司会:経団連専務理事)

  • ■ 新型コロナウイルス感染拡大の企業活動への影響
  • 苦戦を強いられた企業活動
  • グローバル経済と今後の戦略
  • コロナが人々に与えた影響
  • ■ ポストコロナを見据えた働き方改革のあり方
  • 「働き方改革フェーズⅡ」の深化
  • エンゲージメント向上と多様性の享受
  • 安心があり、やり直しのない職場環境を
  • 目的はテレワークではなく安心の醸成
  • ■ 「自社型」雇用システムの検討
  • 個人の専門性を高めて組織力を強化する
  • 「メンバーシップ型」を中心とした柔軟な雇用制度の実践
  • 課題を明確化して「自社型」の設定を
  • ■ 2021年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス
  • 経営側の基本スタンス
  • 第2の就職氷河期世代を生まないよう新卒採用の維持を
  • 健康経営®を労使共通の価値観とする
  • 労使一体の企業経営を目指す
  • コロナを乗り越えた先のディーセントワークの必要性
  • 注目すべきマルチステークホルダーキャピタリズム

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