Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年4月12日 No.3082  大都市制度と道州制構想めぐり懇談 -後藤・安田記念東京都市研究所の西尾理事長から説明聞く/道州制推進委員会

講演する西尾理事長

経団連(米倉弘昌会長)は3日、東京・大手町の経団連会館で道州制推進委員会(畔柳信雄委員長、松下雋共同委員長)を開催し、後藤・安田記念東京都市研究所の西尾勝理事長から、「大阪都」構想をはじめとする自治体の動きと道州制との関係について説明を聞くとともに懇談した。西尾理事長の説明は次のとおり。

◇◇◇

政権交代が起こり、道州制の議論は停滞したが、民主・自民両党には積極的に推進している議員も多く、次の総選挙では公約に掲げてくる可能性が高い。また、何も進まなかったわけではなく、道州制推進ビジョン懇談会以後、(1)全国知事会による「出先機関の原則廃止」要求(2)関西広域連合の進展と九州広域行政機構の誕生(3)大阪維新の会が提唱する「大阪都」構想の進展――など、道州制構想を意識した自治体の動きが生まれている。

出先機関の原則廃止に関して、それが徹底されることで、道州制への移行を加速するか、困難にするかは見極めが難しい。国の出先機関の事務権限の大半が都道府県に移譲されると、都道府県はその状態に満足し、道州制に向けた動きを止める可能性がある。

関西広域連合についても、関西州の実現に向けた一里塚と考える知事と、国の出先機関の事務権限を移譲させるための受け皿と考える知事とがいる。出先機関の廃止と権限の移譲に限って目的を共有しているにすぎず、事務権限が移譲されても、道州制につながるか定かではない。

「大阪都」構想については、大阪に東京都区部類似の制度をつくった場合、それを廃止して道州に移行することは極めて困難になろう。橋下大阪市長が「大阪都」の実現から関西州の実現に至る道筋をどのように考えているかは明確でない。

指定都市市長会の「特別自治市構想」は、一定の要件を備えた大都市が望む場合、道府県から独立して道府県の権能を持つ「特別自治市」になれるようにするものである。道府県税と市税を一括徴収することも含まれており、これが認められれば、道府県の財政調整能力は大きく減ずることになるため、道府県の再編成論議に拍車がかかり、道州制への移行が強まる可能性がある。

道州制構想を一層具体化するのであれば、(1)東京圏と関西圏について、現実的で実行可能な制度とすること(2)全国的な財政調整の重要性に留意しつつ、国税、道州税、市町村税間の租税配分に関する制度設計を綿密にすること――が求められる。

◇◇◇

当日は、「地域主権と道州制を推進する国民会議」を適切な時期に開催することなど、道州制推進委員会の当面の活動方針について了承した。

【産業政策本部】