Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年4月19日 No.3083  「財政健全化と経済成長」について聞く -経済政策委員会・財政制度委員会合同企画部会

経団連の経済政策委員会企画部会(村岡富美雄部会長)と財政制度委員会企画部会(森田敏夫部会長)は4日、東京・大手町の経団連会館で合同部会を開催し、上智大学の中里透・准教授から、「財政健全化と経済成長」をテーマに説明を聞いた。
概要は次のとおり。

(1)現在の財政状況

2012年度の国の一般会計予算90.3兆円のうち、およそ半分の44.2兆円は公債金収入に依存している。また、これまで減少してきた利払費も、国債残高の累増により、2007年度から増加に転じている。今後、金利が上がっていくこととなれば、財政の持続可能性が確保されなくなるおそれがある。

財政健全化については、金利と成長率の関係にも留意する必要はあるが、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の赤字解消の方が重要である。内閣府の「中長期試算」によれば、消費税率の10%への段階的引き上げを見込んでも、国・地方のプライマリー赤字(2012年度=マイナス25.9兆円)は、2015年度にマイナス16.8兆円、2020年度はマイナス16.6兆円となり、黒字化にはほど遠い。消費増税のみならず、歳出削減にも同時に取り組むことが、財政健全化には不可欠である。

(2)財政健全化の進め方

消費増税とセットで行う歳出改革の具体例としては、公的年金におけるマクロ経済スライドのデフレ下での発動や、地方交付税の見直しなどが挙げられる。

歳出抑制に向けた制度面からのアプローチとしては、上からシーリングをかける「総量規制」の方法と、事業仕分けのように下から積み上げる方法が存在する。事業仕分けや政策評価は、行財政運営の透明性の確保という点から一定の意義はあるものの、結論ありきの議論に陥りやすく、限界がある。抜本的な歳出抑制を図るためには、総量規制を基本とすべきである。また、シーリングは、歳出全体に一律に設定するのではなく、社会保障、公共投資、人件費などの主要分野ごとに、それぞれ設定することが望ましい。

家計や企業は、現在の経済状況だけでなく、将来の経済状況に対する見通し(期待)をもとに、消費や設備投資などの意思決定を行っている。財政運営においても、明確なコミットメントによって家計や企業の期待を安定化することが、経済成長と財政再建の両立を図る観点から望ましい。政府は、財政再建に向けて、「社会保障と税の一体改革」にとどまらず、より広い範囲の「歳出・歳入一体改革」にコミットすべきである。

(3)財政健全化と景気動向

今国会に提出された消費増税関連法案では、経済成長率や物価動向等から、経済状況を総合的に勘案したうえで、消費増税の停止を含めた所要の措置を講じることとされている。景気弾力条項に数値目標を入れることについては、恣意的な運用を避けられるというメリットと硬直的な運用を強いられるというデメリットの双方がある。この点からすると、景気動向を判断する参照指標として達成可能な「目安」を設定したうえで、最終的には柔軟に総合判断できる余地を残すことが一案と考えられる。

【経済政策本部】