Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年4月26日 No.3084  被災地のいま<3>
~経団連「社会貢献実践講座~災害被災地支援編」
-分断するコミュニティーの再結束
(訪問日=2012年2月23日、場所=福島県いわき市)

人口33万人のいわき市は、東日本大震災の被災地であると同時に、福島第1原発事故避難者2.2万人の受け入れ自治体となっている。市内に建設された3071戸の応急仮設住宅のうち、いわき市民を対象とする189戸は同市中央台の高久第1応急仮設住宅団地に集まっている。

それまで異なる地域で暮らしていた人々が集まる仮設住宅では、新たなつながりをつくり、コミュニティーを構築することが重要になる。仮設住宅には自治会が結成され、互いに助け合いながら安心して生活できる環境づくりに苦労している。自治会には「仕切りの壁が薄く隣の声が聞こえる」「結露がひどい」「風呂の追い焚き機能がない」などの苦情が寄せられる。自治会長は住環境の改善を行政に掛け合う一方、火災報知機が鳴れば安全確認に駆け付け、火事や事故を出さないようルールの徹底を呼びかける。

自治会と一緒に被災者の見守り活動を行っているのが、地元の社会福祉協議会(社協)である。社協では「生活支援相談員」を中心に、被災者を定期的に訪問して相談に応じたり、福祉・生活関連サービスの利用を支援したりしている。あわせて、集会所での交流の場づくりを通じて引きこもり防止に取り組み、子どもたちの居場所運営なども行っている。

しかし、個人情報保護の壁もあり、民間借り上げ住宅で暮らす人々には支援が届けづらい。さらに、自治体ごとに異なる支援メニューや原発事故の賠償金が、市内の被災者と避難者の間にさらなる格差や軋轢を生み出している。

いわき市の仮設住宅の近くに建てられた楢葉町の高齢者支援センターでは、故郷に帰りたくても帰れない、先の見通しも立たない高齢者たちが不安な気持ちを吐露する。家族と離れ9回も避難先を転々としたおばあさん、高齢の兄弟2人だけで暮らすおじいさんたちの姿に、災害の影響は最も弱い人たちに大きく出ることを再認識する。

東日本大震災は、「一つの自治体に複数の市町村の住民が暮らす」「一つの自治体の住民が複数の自治体で暮らす」という想定外の状況を生み出した。多様な背景を持つ人々の共生、分け隔てない支援、地域における新たな絆づくりなどの課題が被災地にのしかかっている。

いわき市に建てられた楢葉町の高齢者支援センターで説明を聞く参加者

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