Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年5月31日 No.3087  「現代型うつ」への対処方法を聞く -労働法規委員会労働安全衛生部会

経団連は15日、東京・大手町の経団連会館で、労働法規委員会労働安全衛生部会(竹内章部会長)を開催し、松崎一葉筑波大学大学院教授から、「いま企業がなすべきメンタルヘルス対策~現代型うつを中心に」と題した講演を聞いた。松崎教授は、産業精神医学や宇宙航空精神医学が専門である。

松崎教授によると、産業医学の現場から、現代の「うつ」は「消耗型」「未熟型」の二つに類型すると理解しやすい。従来からある「消耗型うつ」は、過重労働による心身の疲弊ややりがいの喪失に伴う燃え尽きの結果発症する。一方、現代型や未熟型といわれる「うつ」は、人格の未熟さが発症の原因であり、根拠のない万能感をもった他罰的(内省せず責任を他者に押しつける等)な性格をもち、総じて自己愛が強い。その際、医師がどちらのタイプかを診立てて治療戦略を立てることで、より早期の回復につながる。

「消耗型うつ」は、きさくで責任感の強い人物が、職務の過重性、職場の人間関係、努力報酬不均衡といったストレス要因から発症する場合が多い。特に、努力しても十分な報酬が得られない努力と報酬の不均衡な状況になると、燃え尽きや目標の喪失により、うつになりやすい。ラインの管理職は、この状況を理解し、適切に褒めるなどして「働きがい」を維持させることが重要となる。

未熟型うつは、人格が未熟で自己愛傾向の強い若い世代に多く、責任の伴わない手伝い的仕事には力を発揮するが、責任ある本務そのものには回避的な「正業不安」、自分の都合に沿って物事を運ぼうとする「操作性」、ストレスに対して脆弱で、すぐにキレるといった「退行現象」(幼児化)などの特徴がある。現代型うつへの対処方法は、消耗型うつには効果のある業務軽減の措置ではない。また、従来からのうつへの対応策である「激励禁忌原則」の踏襲ではなく、「一緒にがんばっていこう」と、関係性を明示して支援し、本人の実存を支える道筋を示すことが必要である。この関係性を維持できる5歳差程度の先輩を「支援者」として配置し、人格の成長支援を行うことが有効で、また、この支援者を支援するという会社としての仕組みづくりが欠かせない。

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松崎教授の講演の後、同部会では、今年度の活動計画案について審議を行い、了承した。さらに、職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言、国立病院・労災病院等の在り方を考える検討会などについて、事務局が報告した。

【労働法制本部】