Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年8月9日 No.3097  21世紀政策研究所がシンポジウム「グローバルJAPAN~2050年 シミュレーションと総合戦略」を開催 -研究成果報告やパネルディスカッション実施

あいさつする森田所長

21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は7月4日、東京・大手町の経団連会館で第91回シンポジウム「グローバルJAPAN~2050年 シミュレーションと総合戦略」を開催した。シンポジウムでは、4月16日に公表した研究成果の報告とともに、パネルディスカッションを実施した。会員企業の代表者を中心に約200名の参加があった。

冒頭、開会あいさつで森田所長は、「日本は、名目GDPがおよそ20年前の水準にとどまるという成長なき経済に陥っており、政府債務の残高もGDP比で約200%に達し、財政や社会保障が危機に瀕している。また、2011年3月には東日本大震災に見舞われ、長期的なエネルギー制約の問題も浮上している。山積する諸課題の解決に国を挙げて取り組む必要がある」との問題意識を示した。

研究成果の報告では、グローバルJAPAN特別委員会で主査を務めた丹呉泰健・前財務事務次官が世界経済・日本財政のシミュレーション結果を説明し、危機を克服していくために「今や議論ではなく実行が必要」と警鐘を鳴らした。その後、研究主幹である慶應義塾大学の鶴光太郎教授、同大学の土居丈朗教授、政策研究大学院大学の白石隆学長が各担当分野の提言のポイントを説明した。

続いて行われたパネルディスカッションでは、まず、同委員会の委員である三菱総合研究所の武田洋子チーフエコノミストから、(1)高齢者雇用と若年者雇用の両立(2)財政再建と経済成長の両立(3)アジア経済の先行き――について問題提起があった。

引き続き、ゲストパネリストの東京大学高齢社会総合研究機構の秋山弘子特任教授から、自身の研究に基づいた長寿社会のまちづくり、高齢者の“生きがい就労”の必要性について紹介があり、それを踏まえ、(1)長寿社会における産業界の役割(2)長寿社会のまちづくりにおける国と地方の役割分担――について問題提起があった。

その後の討論では、「日本が抱える雇用の問題は世代間対立の問題でもある。高齢者と若者が協働していけるような仕組み、例えば高齢者が若者にさまざまな技能や知識を伝えていくような生きがい就労が必要」(鶴研究主幹)、「就労インセンティブを高めるような税制・社会保障制度が必要」「長寿社会のまちづくりでは持続性の観点から財政に依存せず、地元の自治体・産業界が大きな役割を果たすべき」(土居研究主幹)、「中国の成長減速はナショナリズムの台頭など政治的リスクを伴う。他方で多くの中国人が米国に留学しており、20年後を見れば、エリート人材は日本よりはるかにグローバル化されている可能性もある」(白石研究主幹)など、活発な議論が行われた。

最後に森田所長からの「現在の日本は複雑骨折の状況。すべての政策を速やかに、徹底的に実行することが必要」と、政治のリーダーシップに期待する発言をもって閉幕した。

【21世紀政策研究所】