Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年9月6日 No.3099  2012年春季労使交渉の概況 -東日本大震災からの復旧・復興に取り組んだ従業員の貢献にも配慮

2012年の賃金(大手企業、中小企業)と夏季賞与・一時金(大手企業)の妥結結果(最終集計)を取りまとめたことを踏まえ、今年の春季労使交渉を振り返る。

経団連は、春季労使交渉における経営側の基本スタンスを示す「2012年版経営労働政策委員会報告」において、国内雇用の維持や雇用の創出などについて、労使で徹底的な話し合いが必要であり、各社の実態を踏まえた「自主的かつ個別の議論」が求められているとした。そのうえで、賃金決定にあたっては、総額人件費を管理する観点から、自社の支払能力に即して判断するとともに、一時的な業績変動は、賞与・一時金に反映させることが基本との従来からの主張をあらためて強調した。

一方、連合は、「2012春季生活闘争方針」において、一般労働者の賃金が近年のピーク時(1997年)と10年を比較して4.0%減少していると指摘し、低下した賃金水準の中期的な復元・格差是正に向けた取り組みを徹底する観点から、震災からの復興・復旧等への労働者の頑張りに応えることも含め、昨年に引き続き、すべての労働組合が1%を目安に「適正な配分」を追求するとした。

連合の闘争方針等を踏まえ、各企業別労働組合は2月ごろから経営側へ要求書を提出した。多くの労働組合は厳しい経営状況に鑑み、賃金についてはベースアップや賃金改善要求を見送って「定期昇給の実施」あるいは「賃金体系維持」を求め、賞与・一時金については昨年と同額・同月数あるいは下回る水準を掲げて交渉を行った。

その結果として経営側が示した回答は、賃金については非常に厳しい経営状況のなか、労働組合の要求どおりの「定期昇給の実施」あるいは「賃金体系維持」がほとんどであった。経団連が集計した大手企業の平均賃上げ妥結額は5752円・賃上げ率1.81%となり、昨年(5842円、1.85%)と額・率とも同水準となった。近年は「定期昇給の実施」あるいは「賃金体系維持」との回答がほとんどであることから、経年的に見ても額・率ともほぼ横ばいで推移している。一方、中小企業は、昨年以上に厳しい経営状況下での交渉であったうえ、賃金制度が未整備な企業が多いことから、平均賃上げ妥結額は3880円・賃上げ率1.55%となり、昨年(4262円、1.64%)より額・率ともマイナスとなった。

賞与・一時金については、昨年実績以上や要求どおりの満額での妥結が少ないながらあったものの、東日本大震災やタイの洪水被害、急激な円高による企業業績の悪化などを受けて、昨年実績を下回る妥結が大勢を占めた。経団連が集計した大手企業の夏季賞与・一時金の妥結額平均は77万1040円で、3年ぶりに前年(79万1106円)を下回った。

近年の春季労使交渉は、賃金や賞与・一時金だけでなく、労働条件全般に関わる幅広いテーマを議論する流れが定着している。今次労使交渉では、「60歳以降の雇用延長」について今後も継続協議することで労使合意した企業が多かったほか、東日本大震災からの復旧・復興へのボランティア参加が増加したこと等を受けて「ボランティアに関する制度の拡充等」を行うとした企業も複数みられた。

非常に厳しい経営状況が続くなかで行われた今次春季労使交渉は、自社の存続・発展と従業員の雇用維持を最優先としながら、東日本大震災からの復旧・復興に懸命に取り組んだ従業員の貢献にも配慮した結果となり、危機を乗り越え、新たな成長の道を労使で切り拓く契機となったといえよう。

【労働政策本部】