Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年12月20日 No.3113  今後のエネルギー政策のあり方について聞く -地球環境産業技術研究機構(RITE)の茅理事長に

政府のエネルギー・環境会議は今年9月、「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするようあらゆる政策資源を投入する」とする「革新的エネルギー・環境戦略」を策定した。同戦略は、企業の競争力を奪うことで雇用の維持を困難とし、経済成長を支えるものとなっていないなど、極めて多くの問題を抱えている。

こうしたなか、経団連は5日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会(井手明彦委員長)を開催し、地球環境産業技術研究機構(RITE)の茅陽一理事長から、今後のエネルギー政策のあり方について説明を聞くとともに意見交換を行った。茅理事長の説明概要は次のとおり。

■ 「革新的エネルギー・環境戦略」の問題点

  1. (1)省エネルギー
    「革新的エネルギー・環境戦略」は、2030年までに総発電電力量で10%削減、最終エネルギー消費で19%削減(いずれも2010年比)を目指すとしている。しかし、経済が成長すれば電力需要は増えるものであり、政府は成長を見込む一方で、どのように省エネを実現するのか具体策を示していない。

  2. (2)再生可能エネルギー
    再生可能エネルギーについて同戦略は、2030年までに発電電力量で2010年比3倍の導入を目指すとしている。
    太陽光発電の大規模導入のためには、積載可能なほとんどすべての戸建て住宅の屋根に太陽光パネルを設置することが前提となる。しかし、居住者に対して設置を促すための方策が明示されていない。
    風力発電については、適地が北海道・東北に集中しており、電力需要の大きい関東・関西への送電線を増設するためのコストおよび住民の説得が課題となる。
    また、再生可能エネルギーを大幅に導入するためには、系統対策が必要となる。その額は、経済産業省の試算によれば、1キロワットアワー当たり5~7円程度とされ、これに蓄電池整備費用を加えると、コストはさらに上昇する。

  3. (3)地球温暖化対策
    同戦略は、温室効果ガスの削減目標について、2050年に80%削減、2030年に概ね20%削減、2020年に5~9%削減(いずれも1990年比)としている。
    しかし、2020年に1990年比で25%削減を目指すとする鳩山政権時代の中期目標は、依然として取り下げられておらず、同戦略と整合性がとれていない。

■ 今後のエネルギー政策への提言

原子力は、経済性のみならず、地球温暖化防止の観点からも重要であり、今後も維持すべきである。

再生可能エネルギーの拡大は、ゆっくりかつ着実に取り組む必要がある。

また、化石燃料は、長期的に見て、ある程度利用すべきと考える。その場合、石炭火力はCCS(注)設備を設置する必要がある。

(注)CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage)=炭素の回収・貯蔵技術。火力発電所等において排出される二酸化炭素を回収し、地中等で貯蔵する技術

【環境本部】