Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年1月1日 No.3114  インドネシアの最近のビジネス環境と労務問題の動向を聞く -雇用委員会国際労働部会

経団連は12月12日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会国際労働部会(谷川和生部会長)を開催した。当日は、日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部アジア大洋州課の塚田学氏から、インドネシアの最近のビジネス環境と労務問題の動向について聞き、意見交換を行った。
講演の概要は次のとおり。

■ 存在感を増す大国

インドネシアはASEAN唯一のG20加盟国として、民主政治の定着、内需を中心とする安定した経済成長の持続(年率6%超)等を背景に、近年その存在感を増している。2億4千万人の人口規模と中間層の拡大により、豊富な労働力を背景とした生産基地、消費市場としての魅力も高まっているからである。

また、人口の35%が20歳未満、5割超が30歳未満で、同国の人口ボーナス(注)は2010年から40年ごろまで続くと言われている。

(注)人口ボーナス=生産年齢人口の比率が高く、高度経済成長が可能とされる状態

■ 投資環境上の課題

日系企業から見た投資環境は、近年厳しさを増しており、解決すべき課題は多い。構造的な問題として、道路整備遅延等による交通渋滞の深刻化、港湾キャパシティー不足による貨物の滞留、電力・ガスの安定供給への不安など、インフラ不足を抱えている。また、税制、通関、労働などの分野における場当たり的なルール変更や曖昧な法律・規定に起因する広範な解釈、恣意的な制度運用などにより法的不確実性が高い。

これらに加え近年、最低賃金の急激な上昇、大幅な賃上げや労働条件改善要求が激化し、大規模なデモやストライキが頻発している。

■ 最近の労務問題

ストライキは、労使協議が不調に終わったことにより起こったものではなく、しかも経営者側や関係当局への事前通告もなされない合法的なものでないことが多い。

昨年10月の70万人を超えるゼネストの発端ともなった業務請負・派遣労働に関する新規定が11月14日付で施行された。

業務請負は基幹業務以外に限定される。事業分野ごとに業界団体が基幹業務と基幹以外の業務を決定する。しかしそうした業界団体が指定されていないという問題がある。

派遣労働については、これまで例示列挙であった5業務(清掃サービス、労働者向けケータリングおよび輸送サービス、警備員、炭鉱・油田での補助業務)が限定列挙の取り扱いになった。

また、昨年の産業別最低賃金の引き上げ幅は3割を超える地域もあった。なかでも1月から適用されるジャカルタ特別州の最低賃金引き上げ幅は44%増となり、その他の地域でも2年連続大幅な引き上げが行われている。

業務請負と派遣労働の取り扱いの変更、大幅な最低賃金の引き上げに対して経営者団体は強く反発している。低賃金を前提とした労働集約型企業は見直しが急務となっている。

【国際協力本部】