Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年1月10日 No.3115  「マクロ経済情勢と今後の政策課題」で説明を聞く -大和総研の熊谷チーフエコノミストから/経済政策委員会

講演する熊谷氏

経団連の経済政策委員会(岡本圀衞委員長)は12月18日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストから「マクロ経済情勢と今後の政策課題」をテーマに説明を聞いた。

1.マクロ経済情勢の見通し

日本経済は3月をピークに景気後退局面入りし、年内いっぱいは低迷が続くとみている。1980年代までは、財政・金融政策によって景気が立ち上がったが、90年代以降は輸出の増加が景気回復のドライバー(牽引役)となっている。したがって、まずは日銀の金融緩和などを通じて、円高に対する防波堤を築き、輸出増を図る必要がある。

韓国はウォン安を背景に薄利多売を進めている一方、日本は円高によって輸出シェアを落とすとともに、輸出収益力も悪化している。そこで、日銀の強力な金融緩和に加え、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加や、法人税減税といったサプライサイドに働きかける政策を中核に据えた成長戦略を推進すべきである。

2013年は、(1)米国・中国経済の持ち直し(2)復興需要(3)日銀の金融緩和のサポート――により、景気は回復に向かうと考えられる。日銀には、ETF(上場投資信託)等のリスク性資産の購入や、2%のインフレターゲットの導入など、政策発動の余地が残されている。

一方、短期的なリスク要因としては、(1)欧州ソブリン危機の深刻化(2)日中関係の悪化(3)米国の財政の崖(4)原油価格の高騰(5)円高の進行――の五つが挙げられる。

2.今後の政策課題

民主党政権の失策や東日本大震災を要因として空洞化が加速している。空洞化がこのまま進行すると、2015~20年ごろには経常赤字に転落し、それに伴い円安、スタグフレーション、長期金利上昇を招く可能性がある。国債暴落を防ぐためにも、強固なビジョンに基づく、体系的な政策を行っていくことが求められる。

財政運営では、中長期的な財政規律を維持しなければならない。日本は現在90兆円超の支出をしているが、税収は40兆円程度にすぎない。財政悪化の主因は、少子高齢化による社会保障費の増大であり、財政再建を達成するためには、経済成長だけでなく、確実な消費増税と社会保障費の削減が必要だ。

経済政策では、内需やディマンドサイドを過度に重視するのでなく、外需やサプライサイドにも目配りし、バランスを取ることが重要だ。日本では、雇用者報酬が物価に半年先行し、さらに企業の売上高が雇用者報酬に半年先行して動く関係がみられる。したがって、デフレ脱却のためには、しっかりとした成長戦略を実行し、企業の売上高を伸ばさなければならない。政府は、アンチビジネスの「追い出し5点セット」(円高、EPA等経済連携の遅れ、環境規制、労働規制、高い法人税率)をやめ、プロビジネスの政策に転換していくことが求められる。同時に日銀が追加的な金融緩和策を講じ、側面支援を行うことも極めて重要な課題である。(談)

【経済政策本部】