Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年3月14日 No.3123  日本経済の競争力強化に向けた通商政策のあり方について論議 -21世紀政策研究所が第97回シンポジウムを開催

21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は1日、東京・大手町の経団連会館で第97回シンポジウム「日本経済の成長に向けて―TPPへの参加と構造改革」を開催した。

シンポジウムではまず、伊藤元重・東京大学大学院経済学研究科教授が基調講演を行った。伊藤氏は、「日本がTPP(環太平洋経済連携協定)に参加した場合、2025年にはGDP比2.2%、年約10兆円、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)とあわせて加盟した場合にはGDP比3.9%、年約18兆円の経済効果が期待でき、TPPは日本の成長戦略に不可欠である。また、経済連携の推進の最大の意義は、国内産業の構造改革にある」と述べるとともに、成長を続けるアジアの活力を取り込みながら、日本が世界のモノづくりを支える分業構造を築いていくことの重要性を指摘した。

続く浦田秀次郎・早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授(21世紀政策研究所研究主幹)による研究報告では、世界経済との緊密化の重要性が増すなかでの、日本経済のグローバル化の遅れに懸念が示された。日本経済が長引く低迷から脱却し、再び成長軌道に回帰していくためには、(1)財貿易(2)サービス貿易(3)対日直接投資(4)外国人高度人材――の四つの視点から、国内市場を開放するとともに、そのために必要な構造改革を推進していくことが重要と強調した。

パネルディスカッションでは、同研究所の研究会の委員が加わり、TPP参加にあたり必要とされる日本の構造改革について討議した。

石川幸一・亜細亜大学アジア研究所教授は、物品貿易について、高関税によって保護されてきた農産物の自由化の推進が必要であり、農業構造改革による競争力強化が不可欠であると述べた。

石戸光・千葉大学法経学部教授は、サービス貿易では国内規制の実態把握が不十分であると指摘、早急に実態を整理したうえで、「線から面へ」のシームレスな産業連関の構築を求めた。

浦田氏は、直接投資を対内・対外で一体としてとらえ、日本企業が海外で求める権利については、国内でも外資系企業に認めていく必要性を説明した。

三浦秀之・杏林大学総合政策学部専任講師は、日本が外国人高度人材の獲得と活用を積極的に進めていくためには、制度面をはじめとする環境整備が必要であるとした。

伊藤氏は、過去の構造改革が国民の生活の質を向上させてきたことを強調し、政府がオープンな議論を行って、国民のコンセンサスによって政策が判断されていくべきだと訴えた。

討議を通じて、わが国が主導的な役割を担いながら、TPPとRCEPを同時に推進していくことが期待されていることが確認された。

シンポジウムの詳細については、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】